(コンテスト応募記事)☆自分で選んでよかったこと☆
「自分で選んでよかったこと」を考えていたら、ある出来事を思い出した。当時を振り返り、この記事を書く気になった。
ある出来事とは、親から相続した集合住宅1棟を売却したことである。相続時で築30年経過、売却時には築40年を超える古い物件だった。売却までの十数年間、私は賃貸経営をした。
建物は老朽化していたが、借金してまで建て替える考えはなかった。私の場合は賃貸経営を続けるか、売却するかの2択だった。最終的に売れたからよかったものの、売却手続が完了するまで終始順調だったわけではない。
賃貸経営は、物件の築年数が浅い間は家賃収入があるので利益が出る。だが、古い物件はそうはいかない。空室が増えるので家賃収入は減る、管理会社が家賃減額を提案してくる、修繕費がかさむ…いずれ赤字に転落するのが目に見えている。
相続後は空室が増える一方だった。まれに新規の入居者が現れても、短期間で退去していった。入居者がいるうちから売却を見据えて複数の業者に相談した。皆、口をそろえて入居者がいる状態では売却できないと言う。
また、立ち退きについて、入居者にとって有利な条件を家主が提示しても交渉が難航することもあると聞いて怖くなった。仕方なく売却は見送った。
私は相続するまで賃貸経営に関与していなかった。入居者がどういう人なのかを知らなかったので、全員が退去に応じてくれるのか未知数だった。したがって、細々と賃貸経営を続け、自ずと退去する人が出るのを待つことにした。
あるとき、家賃滞納者が出た。現地に出向くと居住している様子はない。管理会社から事前に知らされていなかったのだが、事前に申し出はあったそうで既に退去していた。
募集しても空室は埋まらないし、今回の件で空室が1室増えた。一気に売却する方向へ気持ちが傾き、ついに決断した。
いずれは売却したいと家族に意向を伝えていたが、改めて売却すると宣言した。決断するまでに10年を要した。売却に向けて動き出すと大小さまざまな問題と想定外の出来事に直面し、苦労した。
しかし、一番の苦労はやはり「売却」という選択肢を選ぶまでの道のりだ。繰り返しになるが、決断するまで私は約10年も悩んだ。
売却後は物件を所有していた頃の煩わしさから解放され、一仕事終えたような感覚を味わった。自分で売却することを選び、「よかった」経験だったと言いたい。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。