3.貧血治療を受けて感じた変化(月刊スポーツメディスン No. 246 特集/スポーツ選手の貧血)
宇賀神素子
TRX Training Japan株式会社、MS, ATC
自覚症状がなかった
──宇賀神さんご自身が貧血になり、改善に向けて治療をした経緯についてお聞きします。まず、ご自身で貧血ではないかと思ったきっかけはありますか?
宇賀神:とくにありませんでした。最初は健康診断の数値で知りました。
──治療が必要なレベルの貧血になっていたにもかかわらず、深刻さは全くないわけですね。
宇賀神:日常生活での不便さはとくに感じていませんでした。走るのが遅くなったとは感じていましたが、私は選手ではないので、マラソンが速く走れないからといってそんなに困るわけではありませんし、貧血時でも一般的には速いタイムで走れていたので「そんなものなのかな」と思っていました。もし私が選手だったなら、なんとかしなければと思ったと思います。ただ私の場合は趣味の範囲なので、深刻には考えていませんでした。
──自覚症状はありませんでしたか?
宇賀神:なかったです。当時を振り返って考えれば、多少あったと思いますが、そのときは自覚していませんでした。
走ることは苦しいもの
──そうすると、受診したきっかけを教えてください。
宇賀神:健康診断ではずっと貧血という診断が出ていて、登山をしていたときに、薬剤師の友人とその話をしていたら「その数値はちょっと低すぎる、治療した方がいいよ」と言われまして、受診しようと思いました。貧血であることをそんなに大事だと思っていませんでした。
──不便は感じていなかったということでしょうか。
宇賀神:そうです。
──そんなに困っていなかったということでしょうか。
宇賀神:速く走れなくなった、走るのが苦しいとは思っていました。それでも平均よりは速く、あまりそこに思い至らなかったというか、貧血のせいでそうなっているという自覚がありませんでした。
──走れていたので、困っていなかったということですね。
宇賀神:苦しいのは苦しかったのですが、走ればある程度苦しいのは当然と思っていたので、それが貧血のせいでそこまで苦しいとは思っていなかったのです。
図1 以前の血液検査結果の推移
治療開始
──治療方針は診断されてからでしょうか。その時点で鉄などのサプリメントは飲んでおられましたか?
宇賀神:そうです。健康診断ではそこまで詳しい数値は出ませんが、受診するとヘモグロビンの値などだけでなく、もっと貧血に特化して細かくみていきます。フェリチンとかTIBC(鉄結合能)、血清鉄の値などを詳しくみていきます。その検査の結果、「これは治療が必要なレベルの貧血ですね」ということになりました。
鉄のサプリメントはたまにしか飲んでいませんでした。私くらいの月間走行距離(月間160km程度)では、ランニングのしすぎで貧血になるほどではないと思っていたので。
──治療は鉄剤の投与以外に何かありましたか? 期間はどのくらいかかりましたか?
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