『スポーツビジョン医科学教本 改訂版』第5章 年齢と眼の機能
第5章 年齢と眼の機能
園児、児童、生徒の視力
2018年3月に公表された文部科学省 平成29年度学校保健統計(学校保健統計調査報告書) 39)健康状態調査で、裸眼視力が1.0未満の者は小学校および中学校で増加傾向にあり、過去最高を示した(図39)。
図39 「裸眼視力1.0未満の者」の割合の推移(文献39より)
裸眼視力
①平成29年度の「裸眼視力1.0未満の者」の割合は、幼稚園24.48%、小学校 32.46%、中学校56.33%、高等学校62.30%となっている。前年度と比較すると幼稚園及び高等学校では減少しているが、小学校及び中学校では増加しており過去最高となった。
②視力非矯正者(眼鏡やコンタクトレンズを使用していない者)のうち「裸眼視力0.7未満の者」の割合は、幼稚園5.65%、小学校13.56%、中学校19.44%、高等学校18.77%となっており、前年度と比較すると幼稚園及び高等学校では減少しているが、小学校及び中学校では増加している。
園児、児童、生徒の視力
裸眼視力1.0未満の者の子世代・親世代の比較
裸眼視力1.0未満の者は、親の世代(30年前)に比べて子世代では多くなっている(図40)。
子世代:平成29年度調査
親の世代(30年前):昭和62年度調査
図40 「裸眼視力1.0未満の者」の子世代・親世代の比較(文献39より)
年間発育量の世代間比較(身長・体重)
年間発育量を世代間で比較すると男子、女子ともに身長、体重のいずれも現在に近い世代ほど早期に増加している。発育量は、身長で男子11歳前後、女子9歳前後、体重で男女ともに11歳前後に大きくなっている(図41)。
発育には、第一次成長期(0〜4歳くらい)と第二次成長期(男子11〜14歳くらい、女子9〜12歳くらい)がある。第一次成長期には、身長や体重などの身体の発育がみられるが、第二次成長期は身体だけでなく運動神経、自立神経などの神経系の器官も発達する。
人の成長とは、質的な発達と量的な発育があり、遺伝子やホルモン、栄養素や運動などの個人の生活環境などの相互作用によって決定される。
発育は、細胞の数が増加する増殖、細胞のサイズが大きくなる肥大がみられる。
発達は、身体の機能の働きの向上、機能の相互関係の向上がある。
成熟とは、生物学的な機能の発育状況を意味する。性的な成熟は、生殖可能な状態を意味する。また骨の成熟とは、成人の骨格のように骨化した状態である。
※「平成11年度生まれ」は平成29年現在17歳(高校3年生)、「昭和44年度生まれ」は親の世代の17歳、「昭和19年度生まれ」は祖父母世代の17歳の数値。
図41 男子女子別 年間発育量(身長・体重)(文献39より)
発育曲線とスポーツビジョンの誤解
スキャモンの発育曲線(図42)は、人の身体諸属性を一般型、神経型、生殖型、リンパ型の4つのタイプに分類している。
▷一般型:身長や体重、筋量や骨格、呼吸器系や心臓血管系、肝臓、腎臓などの胸腹部臓器の発育を示す。
▷神経型:脳の重量や眼、上部顔面、頭骨などの構造的な発育を示す。
▷生殖型:男児の陰茎・睾丸、女児の卵巣・子宮などの発育を示す。
これは本質的には間違っていないが、4つの発育曲線のタイプが本当に独立しているのか(相違性を示すのか、類似性を示すのか)検証する方法が確立されていない 40)。
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