2.近赤外光と超音波センサーを用いた三次元画像 ──光超音波3Dイメージング(PAI)の原理と可能性(月刊スポーツメディスン No. 245 特集/超音波画像の活用)
八木隆行
株式会社Luxonus(ルクソナス)CTO
相磯貞和
株式会社Luxonus(ルクソナス)代表取締役
光超音波イメージング撮像の原理
──この装置の原理的なところをお聞かせください。
八木:はい。光超音波イメージングの原理を説明します。パルス光を照射し、吸収体がその光エネルギーを吸収することで温度上昇し、体積が膨張し収縮します。そのときに発生する超音波を検出してイメージング方法です。組織の吸収特性の情報を得ることが可能です。光の波長を選択することで、生体の吸収スペクトルに応じた組織を可視化ができます。たとえば手の画像では、赤血球に含まれるヘモグロビンが吸収する光の波長を使っています。
──そうしますと、体内に存在する赤血球を描出していると言い換えることもできるでしょうか。
八木:はい。赤血球が存在している血管を描出しているとも言えます。
──強みとしては、造影剤がいらないところ、3D画像が撮像できる、というところでしょうか。
八木:被ばくがないのが一番の強みと言えます。
──装置のサイズを教えてください。
八木:ベッド型の装置になっています。そこに患者さんが寝られるようなサイズにしています。
──電源は100V電源で使えますか。
八木:200V電源となります。
──撮影時にはどのような音がしますか。
八木:装置ですので、どうしても音は出ます。装置内を空冷する冷却ファンの音が聞こえます。使用時には、レーザ安全規格に準拠するため、レーザが照射していることを知らせる警告音が鳴ります。MRIのような、「ドンドン」というような音はしません。
──現時点での原理的な限界はどういったところになりますか。
相磯:現在私たちが使っているレーザ光のエネルギーは皮膚に当てても問題ないという、安全基準を満たしていて、原理的には4〜5cmくらい、私たちが検出できているのは2〜3cmくらいになります。そこにはまだ技術的なギャップがあります。
八木:光を身体に照射すると、中に入っていくにつれて光が拡散するため、光エネルギーが下がっていきます。皮膚から1cmごとに約1/10ずつ減衰します。その光を吸収して音を出す原理ですから、深くなるほど発生する音も小さくなります。そうすると検出する超音波センサ側の検出感度にも関係するため、深さに限界が生まれます。
──そうしますと人間の頭蓋骨の内側などは難しいでしょうか。
八木:脳の撮影は超音波でも難しい領域です。超音波は骨で跳ね返ってしまいます。光超音波では、光は頭蓋骨の中に入りますが、そこから出てくる超音波はやはり頭蓋骨で反射してしまい、難しくなります。
マウスなどの頭蓋骨が薄い対象であればそこから描出することは可能ですが、人の頭蓋骨の厚みからすると厳しいです。
写真1 光超音波イメージング装置。無侵襲で、解像度の高い3D像が得られる
写真2 手を撮像したもの
安全面について
──レーザ光を見ないようにするといった、撮影時の注意点はありますか。
八木:安全面に対しては、装置安全対策を施しています。身体の撮影をする際には、遮光性の布で撮像部位を覆い、レーザ光が漏れないようにもしています。装置で使用しているレーザは、クラスIVに分類され、レーザ安全規格(JIS 規格:JIS C 6802)から保護メガネを着用します。
──撮像時に患者さんが熱を感じることはありますか?
八木:熱は感じられません。与えるレーザはパルス状になっていて、赤血球が光エネルギーを吸収して膨張したあと、周囲へ熱を伝える前に収縮するためです。計算上、血液の温度上昇は0.015℃くらいになります。
──皮膚にタトゥーをしていたり、体内に金属などが入っている場合はどのようになりますか。
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