膝が笑う 辻田浩志(月刊トレーニング・ジャーナル2011年4月号、連載 身体言葉(からだことば)に学ぶ知恵 第17回)


辻田浩志
腰痛館代表

連載目次
https://note.com/asano_masashi/n/n9fbc8ed2885a

さほど信仰心があるわけでもない私が神様におすがりするのが初詣。普段は知らん顔でもお正月だけわずかのお賽銭であれやこれやとお願いをするのですから神様も迷惑な話です。そんな私が毎年お参りをするのは奈良県桜井市の大神神社。なんでも日本最古の神社だそうですが、病気やケガに御利益があるということを教えてもらい、それ以来ずっと大神神社に初詣にでかけます。苦しいときの神頼みといいますが、本音は藁にもすがる気持ちなのかもしれません。大神神社のご神体は三輪山と呼ばれる山そのもの。日本書紀には日本の国をつくった大国主神(大物主神)が三輪山に眠るという記述があるのだとか。

せっかくきたのだからご神体のお山に登らない手はないということで、一時間弱の登山をするのが習慣になりました。しかし普段の運動不足は隠せません。半分くらいで息が切れ始めます。次第に疲労がたまり足取りが重くなります。それでもようやく頂上にたどりついたときの爽快感は実際に経験したものでないとわからないでしょうね。頂上に建てられたお社に手を合わせるときには疲労困憊で意外に欲もなく、無心でいられるのだから不思議なもの。まんまと神様の計略に引っかかったのかもしれません。願いごとも「欲」のうち。これを捨てることが御利益の第一歩なのかなと考えさせられます。

すっきり爽やかな気分で下山。しかし疲労は情け容赦なしに襲いかかってきます。気がつけば膝を曲げるのが嫌になってきました。足を地面に踏み込んだときに膝の踏ん張りがききません。次第に変化が出たのは降り方で、身体を半身にして膝を曲げずに足を開き気味にして股関節を使って降りようとします。大腿四頭筋が使いものにならなくなって膝の曲げ伸ばしが満足にできません。内側広筋の膝に近い部分が固くなってきて、次には殿部がつらくなってきました。殿筋群と梨状筋の感覚がおかしいのがわかります。最後に鼠径部が痛みだし大腿四頭筋全体が自分の意思通りに動かなくなりました。

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