情シスクッキング〜ITシステム費用予実表の作り方〜
みなさんこんにちは。料理が趣味の情シスのアサノです。
最近は素麺をいかにに冷やしラーメン風にするかにハマっています。
前回は社内ツールカオスマップの作り方について書きました。
今回はITシステム費用予実表です。
「一体全社でどれだけのシステム費用がかかってるの?」
「やりたいことがあるのにIT予算が足りない」
「今年情シスでジョインしたものの次年度のIT予算はどうやってたてよう」
と思ったことのある方は少なくないのではないでしょうか?
その解決の糸口になるのがITシステム費用予実表です。
意外と情シス共通でぶち当たりそうなネタですが、あまり関連トピックがなかったので書いてみました。
※本noteはモダンな技術ノートではなく、泥臭チカラ技ノートです。
ITシステム費用予実表とは
企業が業務利用するIT資産やツールにかかる年間費用を整理することで
「システム費用の年間合計」
「1人あたりのシステム費用」
「ツール毎の全体に対する費用割合」等
を見えるようにし、コストの最適化や次年度予算策定の根拠に活用する表のこと。IT予算表、IT予実表etc…呼び方はなんでもいいです。
この記事はこんな方におすすめ
目的・得られる効果
ITシステム費用予実表を作り、運用することで以下の効果が得られます。
システム費用が全体でどれくらいかかっているのか把握できる。
1人あたりのシステム費用を把握できる。
ジョブ種別毎に必要なツールと費用を把握できる。
メンテのなかで更新月を認識でき稟議の起票を思い出せる。
キャッシュの発生タイミングをあらかじめ予見できる。
コスト最適化の気づきを得られる。
本年度の成り行きを予見することができ、次年度予算策定のネタになる。
上司から言われる前に作ると結構喜ばれる。
パッと思いつくだけでこれだけあります。
他にも色々良い効果があると思います。
前提
予実管理システムを使用していない。(あるならそっちでやってくださいw)
一般業務で利用する端末・SaaS、IaaS等のコストは極力情シスが把握できること。
社内ツールカオスマップなどを作成し、利用ツールを把握していること。
利用SaaSが極力100未満であること。多すぎると運用できません。
PJ費用となる開発サーバ、検証サーバ他付帯設備は対象外とする。
特定PJでしか使用していないSaaSについてはできるだけ情報はキャッチすること。できれば支払い情報をGetできること(野良SaaSや代替可能なSaaSがあるかもしれないため)
用意するもの
表計算ソフト(Excel/スプレッドシート):予実表を編集するのに使用します。
請求情報・Billng参照権限:自身で実績を入力するために使用します。
経理さんや各部署のツール担当者との良好な関係:自身で入手できない請求情報を教えてもらって実績を入力するのに必要です。
予実表フォーマット:出来上がったのがコチラへ
(SaaS管理SaaS:あるとめちゃくちゃ捗ります)
出来上がったのがコチラ
私が作った予実表フォーマットを上記に配置します。
参考にするなり、そのまま使うなり、「なんだゴミか。」と捨てるもお好きにどうぞ。
今回フォーマット作りがメインではなく、どういった観点で実績を集計するかがミソなのです。
あとで何回も言いますが実績収集と記入が一番地味で大変で大事。
構成要素
予実表の構成要素について説明します。
①要員計画
・従業員の増減を記入します。差分ではなく総数。
・実績は簡単。
・予定(次年度計画)は採用担当もしくは上役に「ざっくりでいいんで!」って言って聞きましょう。
・後のSaaS(ユーザーライセンス)の変数になります。
・従業員の職種はできるだけグルーピングしましょう。職種によって必要不要SaaSがあるので。
②端末
・新規購入予定の業務端末の増減額を記入します。
・実績は簡単。予定は①要員計画での必要数と予備機分を入力しましょう。
・デバイスライセンス課金型のMDM導入企業の場合、その費用の変数になります。
・機種分別はざっくりWin/Mac、ノート/デスクで分類でいいかと。
・購入経費で見るのがシンプルでいいと思います。
・月毎にリース/レンタル/減価償却で入力するもよし。
③SaaS(ユーザーライセンス)
・利用SaaSの費用を記入します。(月払い、年払い)
・実績は支払い情報を元に入力します。
・このときSaaS管理SaaSがあると会計連携で支払実績が1画面内で確認できるので非常に便利です。
・予算策定の際は①要員計画の人数に契約単価をかけます。
④IaaS(クラウドプラットフォーム)
・利用しているIaaS(AWS、GC、ネットワーク等)ユーザライセンス課金でないサービスの費用を記入します。
・実績は支払い情報を元に入力します。
・予算は事業の成長率を仮決めしてざっくり決めます。(例:前年比110%成長とする)
⑤API
・利用している課金の必要のあるAPIの費用を記入します。
・実績は支払い情報を元に入力します。
・予算は昨年並にします。(考慮したところで他に比べて費用インパクトが小ため)
⑥消耗備品
・情シス費用負担の消耗備品(価格10万円未満のLANやAP、各種ケーブル)にかかる費用を記入します。
・実績はAmazonBuissinesや各種請求書から入力します。
・予算は昨年並にします。去年より使いすぎない、去年を超える場合は理由が必要だよね。という無駄使い防止。
⑦設備費
・利用しているオフィスのインターネット関連の費用を記入します。
・勘定科目的には通信費だけど項目名のためだけに設備費としています。
・実績はISPからの請求書から入力します。
・予定は乗り換えや増強の予定があるならば考慮しましょう。
⑧サマリー
・①〜⑦までの合計欄を集約します。(太枠の値を引っ張ってくる)
・集約したものの合計を算出します。
・構成要素①〜⑦の各合計、さらには全体のシステム費用の予定と実績が把握できるようになります。
・サマリーのサマリーの値が売上高の何%を占めているかを把握できます。(根拠は不明ですが、「IT予算は売上高の1%」とかいう話もあるようですので)
⑨社員1人当たりのシステム費用
・構成要素⑧サマリーを構成要素①要員計画の値で割ることで従業員1人のシステム費用が月間、年間で把握できるようになります。
・フォーマットでは全体サマリーの合計値横にあります。
⑨新規投資枠(番外編)
・別途説明資料は必要とは思いますが、予算策定までに各部署や情シスがやりたい、攻めの新規投資枠として「今はこれだけやりたいこと(やれそうなこと)があって、費用はこれだけだよー」というのを載せておきます。
・予算レビューの際に軽く提案でGOがでるかもしれませんし、ジャブ打ちしておいて提案時にビックリさせないようにしましょう。
ちなみに私はGithub Enterpriseをジャブ打ちして「ですよねー。」とビックリさせました。
早速入力していきましょう
では早速次年度の予算策定をつくtt…
はやる気持ちを抑え、まずはじめに昨年度の実績を埋めてしまいましょう。
その次に本年度実績の入力。
それが終わってからの次年度予算の策定です。
ベースが大事です。正直苦しいです。長いです。その先に待っているものがあるはずです。歯を食いしばりながら、ため息をつきながら地道に埋めましょう。
スケジュール
次年度予算整理のスケジュール感は以下画像のイメージです。
決算月をマイルストーンとし、そこから逆算してだいたい半年前から徐々に次年度予算の準備を始める感じです。それまでに前年実績の整理、当年度実績入力を終えておく必要があります。
次年度予算策定の際には他部署の要望や課題解決のネタ集め、チーム内レビュー、役員レビュー、来期予算額の合意とやることはたくさんです。
最後に
どうです?作りたくなくなったでしょ?笑
このnote長いし、作業は地味だし時間はかかるし。
一度作ってしまえば、確実に楽にはなります。話がしやすいです。
まだ作ったことないよという方は是非チャレンジしてみてください。
本noteを見て、「もっとこうした方がいいよ!」、「うちはこうしてるよ!」等感想やご意見あればコメントなり、𝕏で引用コメントなりしていだけると嬉しいです。
以上。長々と最後まで読んでいただきありがとうざいました。
最後の最後にもうひとつ。
私アサノ。絶賛野生の情シスの真っ最中でございます。(2024/8/30執筆時点)
北陸地方からのリモート前提になるとは思いますが、もしご縁があり良いリクルートがありそうでしたらコチラ(https://twitter.com/asano_pony)までDMいただけると幸いです。
ではでは。