恵比寿さんと布袋さん
「えべっさん。もしかすると皆、わしらのこと忘れとらんかのう」
「忘れてはおらんじゃろ、布袋さん。なにしろずっとここにおるのじゃから」
「そうかのう。それにしては放っとかれすぎじゃないかのう」
「それは確かにのう。これまで一度も拝まれたこともないしのう」
「まあ、そもそもわしらは七福神じゃし、手を合わせるようなもんでもないがの」
「そうじゃ、縁起担ぎの神としてこうして置かれておるのよ」
「それはありがたくも思うがのう。そもそもわしら、この家に縁起担いだことあったかの?」
「はて? どうじゃったかいのう」
「昔はもそっと景気が良かった気がするがのう」
「そうじゃのう」
「今はそうでもなさそうじゃのう」
「そうかも知れないのう」
「まあ、今は昔の物語ということよの」
「そうかも知れないのう」
「ところで、そろそろ腹がへったのう」
「わしはそろそろ釣りに行きたいのう」
「はて、わしら、いつ頃動けるのかのう」
「そうじゃのう」
「ちょっとだけお出かけできたら、ついでにこの家にも福がまけるのにのう」
「残念じゃのう」
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