私になるまで40
ゴールデンウィーク間近に控えた朝。大荷物をまとめ、リハビリ室の上にある回復期病棟に移る。看護師に「お世話になりました。」と丁寧に挨拶して、さぁいざ出発。長い廊下を通り自動ドアをくぐる。まだ新しい建物らしい。今までと違う景色が広がる。そこは通称「西病棟」と言われていた。西病棟は4階建て1番下はリハビリ室その上の2階からは病室と大きなデイルーム。
私の病室は、西1と呼ばれる、リハビリ室の真上だった。
病室は、障子で仕切られた四人部屋、入院した時は、隣に腰の骨を骨折した70代のおばちゃん。前に脳の病気で身体を悪くしたおばあさん。その横は痴呆のある身体を悪くしたおばあさん。私は1番若かった。隣のおばちゃんと前のおばあさんとはすぐ仲良くなったが、いつまでも「あいちゃん」と呼ばれる。ちかだと言うても中々呼んでくれずにひと月経ってようやく覚えてくれた。まぁ毎晩寝る前にうたを歌うのが、おばちゃん達の習慣になっていて、ベッドに寝ながら聞いていたら、「ちかちゃんも一緒に歌おう。」って誘われ、童謡から懐メロまでかなり覚えた。ほとんど知らん歌ばかりだったが毎晩寝る前の楽しみになった。
ところで西病棟に変わった時から、がらりとスケジュールが変わる。PTは1日2回1回につき1時間みっちり先生と一対一。加えて、OTが1回。これも先生と1対1
PTの先生は26の一児のパパ。OTの先生は30代の一児のママ。
2人とも優しそうに見えた。しかし、優しさの顔の裏に厳しいリハビリが隠されていた。PTの兄ちゃんは初対面の私に「いくつに見える?」って聞く。「うーん30?」というと耳が真っ赤になった。他の人は「20歳とか、高校生」とか言うのに、私だけ年上に言われてちょっとショックだったらしい。が、そんなのどうでもいい。その後から凄いリハビリメニューが待っていた。リハビリという名の筋トレだった。それが病棟に移った昼から始まった。頭に鉄の兜を乗せて!
今はまだ修行中の身ですが、いつの日か本にしたいという夢を持っています。まだまだ未熟な文章ですがサポートして頂けたら嬉しいです。