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不動産の明渡し訴訟について

# 賃貸人に有利な和解条項の解説

## 目次
1. はじめに
2. 和解条項の概要
3. 和解条項の詳細と解説
  - 第1条 未払賃料の支払
  - 第2条 将来の賃料の支払
  - 第3条 賃貸借契約の解除および明渡義務
  - 第4条 契約更新後の適用
  - 第5条 強制執行受諾文言
  - 第6条 その他
4. まとめ

## 1. はじめに
賃貸借契約において、賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は契約解除や建物明渡しを求める必要があります。しかし、通常の法的手続きを踏むと、解除のための催告や訴訟、強制執行に時間とコストがかかります。本記事では、賃貸人が迅速かつ確実に建物明渡しを実現するための和解条項について解説します。

## 2. 和解条項の概要
本和解条項では、賃貸借契約において**賃借人(乙)の支払遅延が発生した場合に、賃貸人(甲)が即時に契約解除や建物明渡しを実現できる仕組み**を設けています。特に以下の点で賃貸人に有利な内容となっています。

- 賃料滞納が1日でも発生した場合、即時解除・明渡し可能
- 違約金として賃料の2倍を請求可能
- 強制執行を迅速に実施できる(公正証書作成義務)
- 契約更新後も同じルールを適用
- 裁判なしでの執行受諾を明記

## 3. 和解条項の詳細と解説

### 第1条 未払賃料の支払
#### 分割弁済と期限の利益喪失
乙が未払賃料を分割して支払う義務を負い、一度でも支払を怠った場合、**期限の利益を喪失**し、未払分全額が直ちに支払期日を迎えます(民法136条)。

#### 当然解除条項
民法541条では「催告後の履行遅滞」が契約解除の要件ですが、本条項では賃料滞納が1日でも発生した時点で**自動的に契約解除される**旨を明記。

#### 強制執行の迅速化
「賃貸人は通知・催告を要せず、直ちに強制執行手続きを実施できる」とし、執行手続きをスピーディに行えるようにしています。

#### 遅延損害金の加算
未払賃料について、**年14.6%の遅延損害金**を課すことで、賃借人に対して支払遅延を防ぐ圧力を強化しています(民法419条1項)。

### 第2条 将来の賃料の支払
#### 1日でも遅れたら解除
賃料が1日でも遅延した場合、**自動的に契約が解除**されることを明記。

#### 違約金として賃料の2倍を請求
乙が明渡しを遅延した場合、**賃料の2倍の違約金**を支払う義務を負う(民法420条)。

#### 敷金の充当
「賃貸人は敷金を充当できるが、それによって支払義務が免除されることはない」と規定し、敷金の活用を認めつつ、賃借人の支払義務を解除しないことを明確に。

### 第3条 賃貸借契約の解除および明渡義務
#### 契約解除の遡及効
「契約解除は本和解成立時に遡る」とすることで、解除の効果を過去にさかのぼらせ、賃貸人が解除後に発生する賃料請求を免れることが可能。

#### 明渡し期限と遅延損害金
乙が明渡しを怠った場合、通常の賃料の**2倍の違約金**を支払うことを規定。

#### 強制執行のスムーズ化
「明渡期限を過ぎたら即時に強制執行可」とし、賃貸人がすぐに法的措置を取れることを保証。

### 第4条 契約更新後の適用
契約更新後も、本和解条項が引き続き**適用される**ことを明記。

### 第5条 強制執行受諾文言
#### 判決なしでの強制執行
通常、強制執行には裁判が必要ですが、本条項では**乙が判決なしで強制執行を受け入れる**ことを明記。

#### 公正証書作成の義務
公正証書に執行認諾条項を含めることを義務付け、これにより**即時強制執行**が可能に。

### 第6条 その他
#### 違約金条項
乙が本和解内容に違反した場合、**違約金**を支払うことが求められ、契約履行を確実に。

#### 原状回復費用の全額負担
退去時に乙が**原状回復費用を全額負担**することを明記(民法621条)。

#### 転貸・譲渡の禁止
「賃貸人の承諾なしに転貸・譲渡不可」として、無断転貸を防止(民法612条)。

#### 管轄裁判所の指定
「賃貸人所在地の裁判所を専属的合意管轄裁判所とする」ことで、賃貸人に有利な裁判環境を確保。

## 4. まとめ
本和解条項は、賃貸人が迅速かつ確実に**契約解除**や**建物明渡し**を実現できるように設計されています。特に、**自動解除**、**即時強制執行**、**違約金**といった点で賃貸人の利益を守る内容となっており、実務において賃貸人が不利にならないための重要な参考となる条項です。

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