【愛知】司法書士 野崎史生(のざき・ふみお) 逮捕。日本司法書士会連合会副会長が暴力団とともに逮捕された事件【登記簿公開】
みなさま、こんにちは
司法書士の加陽麻里布(かよう・まりの)です。
先日、元タレントの羽賀研二(本名:當眞 美喜男)ら7人が愛知県警に強制執行妨害などの疑いで逮捕されました。
逮捕された7人の中には、暴力団幹部と日本司法書士会連合会副会長の野﨑史生(のざき・ふみお)容疑者(57)が含まれており、わたしたち司法書士の中でも大きな波紋が広がっています。今回の事件、何があったのか、わかりやすくまとめたいと思います。
事件の概要
元タレントの羽賀研二は、過去に未公開株の売買をめぐる詐欺事件で逮捕・起訴され、実刑判決を受けています。この事件に関連し被害者から提訴され、約4億円の支払いを命じる民事裁判の判決が確定しています。この支払いをめぐる強制執行から免れる目的で、羽賀研二が所有するビル2棟と土地を羽賀研二が代表取締役を務める株式会社「K’sクリエート」に移転したようにウソの登記をし、強制執行を妨害するなどした疑いがあるとされています。
暴力団幹部と日本司法書士会連合会の副会長
元タレントの羽賀研二と逮捕されたのは、六代目山口組弘道会の幹部と日本司法書士会連合会副会長の野﨑史生(のざき・ふみお)ら7名です。
日本司法書士会連合会は、全国に50ある司法書士会を会員とする会員数23,156人(24年4月1日時点)の組織で、司法書士法により、司法書士は司法書士会に入会しないと司法書士業務を行う事ができず、実質的な強制加入団体です。このように公的な司法書士団体のトップが暴力団とつながっていたことや共謀して犯罪を行ったとして逮捕されたこと、この報道がもしも事実であれば、到底許されるものではありません。司法書士業界全体の信頼を損ねる問題です。
何が起きているのか、司法書士は利用されただけなのか?様々な憶測が飛び交っておりますが、私はこの時系列や登記簿をみて、事実無根(冤罪)とは思えませんでした。
※なお、報道によれば、野﨑史生容疑者は容疑を否認しているとのこと
憶測の根拠「司法書士は仕事の依頼に応ずる義務がある」
この事件、なぜ司法書士は事件に巻き込まれた(利用された)のではないか?という憶測が飛び交うのか、それは、司法書士は法律で依頼に応ずる義務があることなどが挙げられていました。
これを根拠に、逮捕当初は様々な憶測が飛び交っていましたが、報道や事件となった土地・建物の全部事項証明書を取得し確認すると、日本司法書士会連合会副会長の野﨑史生容疑者は、事件に巻き込まれたのではなく、暴力団幹部と共謀し犯罪行為を行ったのではないかと思われても仕方のない状況が見えてきました。
逮捕された司法書士は暴力団幹部と旧知の仲だった可能性
まず、日本司法書士会連合会副会長の野﨑史生容疑者に元タレントの羽賀研二を紹介したのは、暴力団幹部であることが朝日新聞により報道されています。また、野﨑史生容疑者と暴力団幹部は旧知の仲であった可能性もNEWSポストセブンにより報道されています。
しかしながら野崎史生副会長と今回の事件で逮捕された暴力団関係者は全く面識がなく冤罪の可能性もあるという情報も入ってきています。そのため断定は出来ませんので、報道と登記簿(真実)とともに何がおきたのかみていきたいと思います。
司法書士 野﨑史生容疑者は、一連の仕事を引き受けていた
羽賀研二は、強制執行(差押)から免れる目的で、自身が代表取締役を務める株式会社(ペーパーカンパニー)に虚偽の所有権移転登記をしたのですが、司法書士の野﨑史生容疑者は、この株式会社の設立登記も担当していたことが報道されています。
また、このペーパーカンパニーに移転するまでも、様々な登記手続きが行われていましたので、事件となった不動産の全部事項証明書を確認しながら解説をしたいと思います。
事件となった不動産の全部事項証明書
事件となった沖縄県北谷町の登記事項証明書の甲区の一部です。
司法書士有資格者であれば、ぱっとみただけで違和感を覚えるはずです。
事件の時系列
時系列のまとめ
時系列は次のとおりである。
令和5年5月12日 株式会社K’sクリエート 法人設立
令和5年5月30日 元妻から羽賀研二に売買を原因として所有権移転
同日 抵当権設定 債権額4.3億円(抵当権者は暴力団関係者)
令和5年5月31日~6月20日 国税担保が完納を原因として次々と抹消
令和5年6月22日 羽賀研二から株式会社K’sクリエートへ「民法第646条2項による移転(※)」を原因として所有権移転
同日 株式会社K’sクリエートが免責的債務引受
平成29年1月4日
平成29年1月4日、羽賀研二は、財産分与の形で妻に不動産を譲渡しました。本件は偽装離婚し財産隠しをしたとして夫婦ともに強制執行妨害容疑で逮捕、起訴されています。
令和5年5月12日
株式会社K’sクリエート(ペーパーカンパニー)を設立
令和5年5月30日
元妻から羽賀研二に売買を原因として所有権移転
※羽賀研二は、株式会社K’sクリエートから委任を受けて不動産を取得したという建付けにした。羽賀研二は、当該ビルと土地を元嫁から購入するために、暴力団幹部が関係する不動産会社2社から4億3000万円を借り入れたことが確認できています。
元嫁から羽賀研二への所有権移転登記と抵当権設定(設定者は暴力団幹部が関係する不動産会社である)が連件で入る。
同日抵当権設定
令和5年5月31日~6月20日
所有権移転及び抵当権設定をした翌日以降に国税担保等が次々と抹消される。
令和5年6月22日
国税担保が抹消された後、令和5年6月22日にあらかじめ野﨑史生容疑者が設立登記手続をしていたK’sクリエート社へ民法第646条第2項による所有権移転登記が行われている。
同日、免責的債務引受を原因として、債務者を羽賀研二からK’sクリエート社へ変更する抵当権変更登記がされる。
羽賀研二は、株式会社K’sクリエートから委任を受けて、不動産を取得しその名義において担保権を設定した。ここで委任契約は終了したとして、実態に合わせるということで、株式会社K’sクリエートへ名義を変更し、債務者の変更も行ったという建付けなのでしょう。
事件のスキームを組み立てたのは 司法書士 野﨑史生容疑者である可能性
報道によれば、日本司法書士会連合会の副会長である司法書士の野﨑史生容疑者がこれら一連の登記手続を担当したと考えられています。また野﨑史生容疑者は、登記手続きだけでなく、このストラクチャーを関係者と協議し決定したとも報道されています。
このような状況に置いて、みなさんは、野﨑史生容疑者は、事件に巻き込まれて騙されと思いますでしょうか。火のないところに煙は立ちませんし、無罪と無実は違います。私には、報道されているように野﨑史生容疑者が、暴力団関係者らとこの一連の事件のストラクチャーを組み立てたとしか思えませんでしたが、容疑を否認していますので、続く情報を待ちたいと思います。
事件の背景は公益的活動の報酬の低さ?
逮捕された日本司法書士会連合会副会長の野﨑史生容疑者は、日本司法書士会連合会の次期会長候補でもあったといれています。以下、ENCOUNTより引用
地に足ついた司法書士以外は、多忙な会務をするべきでない
私は、東京司法書士会の理事を以前していました。報酬は月6万円程度だったと記憶しています。しかし活動量は上記記事のとおり、6万円に到底見合わない程会務が山積み、1日中時間を使うようなイベントも数多くありました。事務所経営が安定し、地に足付いた司法書士以外は、多忙な会務をやるべきでないと思いました。
そしてどんなに仕事が欲しくても、あきらかに怪しい登記簿、依頼者の過去の逮捕歴、これをみてる以上は仕事を断る勇気をもつ必要があったと思います。はなしが逸れてしまいましたが、今回の記事をまとめたいと思います。
まとめと関連リンク
過去に同様の事件を起こしていること等から考えても司法書士は虚偽登記の指南をしたと世間から見られてもおかしくない
羽賀研二は、上述の通り、過去に同様の事件を起こしていて、妻と離婚を装い所有不動産などを財産分与の形で譲渡し、夫婦ともに強制執行妨害容疑で逮捕、起訴されています。このような過去があることを司法書士(野﨑史生容疑者)は知らなかったのでしょうか?
野﨑史生容疑者が、手続きを指南したと報道がありますが、株式会社の設立から始まり、所有権移転・抵当権設定・抵当権変更と一連の手続きを行っている以上は、過去の犯罪を知って、今回強制執行を免れる方法を指南したのではないかと世間から思われてもおかしくありません。報道は、憶測やウソもあると思いますが、本当にすべてを知らず疑わず登記をしたのならば重過失でしょう。
しかしながら否認事件ですので、また続報がございましたら更新をしたいと思います。
それでは、皆様、また別の記事でお会いしましょう。
参考サイトリンク
今回記事を掲載するにあたり、参考とさせていただきましたニュース記事のリンクを掲載いたします。
最後に、日本司法書士会連合会副会長の野﨑史生容疑者のFacebookの写真と逮捕された当時の写真が全く別人で驚きました。
それでは、また記事を更新します。
令和6年10月15日 追記
名古屋地検は、逮捕した元タレントの羽賀研二(本名・当真美喜男)氏(63)や暴力団組長、日本司法書士連合会副会長の野崎史生ら7人を処分保留で釈放したと発表しました。今後は任意で捜査を続けると発表
捜査は継続するということですのでまた何か続報があり、取り上げるべきと判断した場合はここに追記していきます。
一連の報道について私の感想を述べると、火のないところに煙は立たず無罪と無実は違うでしょうということです。資格者であれば見ただけで警戒レベルマックスの登記事項証明書
事件の関係者らとなんら接触がないと主張されているようですが、それは不動産登記実務を扱う立場として、いかがなのでしょうか?当事者に一切の接触なくして登記手続きすることは許されませんよね。
日頃会員に当事者の意思確認を徹底すべきと指導するような立場ですから。今回の一連の事件は、国民の司法書士への信頼を失墜させるような出来事で、この混乱の責任はどうとるのでしょうか。
いずれにしても、このような混乱を引き起こした司法書士が司法書士団体のトップに居続けるのは、一会員として大変不快にかんじます。
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