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コインチェック現社長から学んだ家庭のふりかえりのフレームワークとその効果

この記事はコインチェック株式会社(以下、コインチェック)のアドベントカレンダー13日目(シリーズ1)の記事です。

会社の経営改善手法を家庭にも転用してみたら夫婦関係を改善出来て、私生活の心理的安全性が増した、というお話をしてみたいと思います。


自己紹介


コインチェックでスクラムマスター兼エンジニアをやっています。菅田です。現在のチームは立ち上がったばかりなので、スクラムマスターとしての割合が多めです。最近、外部の勉強会で登壇する機会を頂きました。

今回は「ふりかえり」に関するエピソードを書こうと思います。スクラムではレトロスペクティブという、過去をふりかえって現在のやり方を改善するためのイベントがあります。

「ふりかえり」は何も仕事に限ったことではなく、家庭の運営においても有効です。差し当たっては「ふりかえり」が必要だった私の家庭の話をしてみようと思います。

妻に冷たい目線を向けられる朝


平日の朝、7時半に目覚めます。妻は幼い娘たちに5時に起こされていて、寝不足と朝ごはんの対応ですでに疲れ切っています。ご飯をゆっくり味わって食べるのが好きな妻ですが、その状態で幼い子供とゆっくり食べれるはずもありません。食卓から無言で私に向けられる視線は、なぜ早く助けに来なかった?という怒りと失望に満ちています。

わざとじゃないんです。前日遅くまで仕事に取り掛かっていたら少し起きるのが遅くなってしまったんです。あるいは、寝る前の息抜きのゲームでやめどきを誤って、寝るのが遅くなってしまったんです。ごめんねと発した言葉は、そのまま朝の光に消えてしまったのか、妻には聞こえていません。

いや〜、助けてほしい。無視されるのを分かっていながら、ごめんねと言うこともつらい。これは私の話であり、あなたの話でもあるかもしれません。きっかけの話をしようとしただけですが、思わず書き振りが生々しくなってしまって私もビックリしました。

そんな悩みを抱えている中、ある日、新しくコインチェックの社長になった井坂さんが、会社の方針を打ち出します。これが、思わぬ形で私の夫婦生活を救うことになります。その方針とは、一体どんなものだったのでしょう。

会社のダブル&ハーフ戦略


「ダブル&ハーフ戦略」とは、非常にシンプルな考えの枠組みです。会社の経営に必要な要素として、何を増やして何を削減するかを決め、それをやり抜きましょうということです。
端的には、収益を増やすためにコストを下げるという戦略です。

会社の全体会のスライドから抜粋

ダブル&ハーフというキャッチーな命名、印象的なハンバーガーとポテトのイラストが目を惹きます。現社長がやりたい戦略のコンセプトに対して何かいい命名がないかマックで考えていたとき、たまたま「ダブルチーズバーガー、ポテトハーフサイズで」という言葉が聞こえて決まったそうです。

このような明快なストーリーも相まって、コインチェックの全社会で共有されると、瞬く間に社内でこの思考のフレームワークが普及していきます。

例えば定例MTGでは、各グループのミッションと紐づけて、ダブル要素とハーフ要素の観点で進捗の報告が行われるようになりました。開発では、以下のような取り組みが例として挙げられます。

  • ダブル:アプリ内でゲーミフィケーションの要素を増やす

  • ハーフ:技術的負債を減らす

このダブル&ハーフのフレームワークの良いところは、シンプルで汎用性が高いところです。何かの問いや課題に対して、何を増やし、何を減らすべきかという二つの観点で考えることを求めます。二つの観点を用いることで、どちらかだけに偏るのを防ぐことができることが期待出来そうです。

家庭でのふりかえりに応用してみた


ある夜、寝かしつけを終えた妻が落ち込んでいるのでその理由を尋ねます。話を聞くと伝えるも、妻も自身の感情や思考がまとまっていない様子です。この状況を解決してほしいとのことだったので、メモ帳を取り出して話を聞きました。

後から見返すと、メモ帳には以下のようなことが書かれていました。

  • 一緒に居ることにイライラを感じる

    • 寂しさを感じている

      • 何を言っても変わってくれないと感じている

        • 同じ過ちを繰り返して学んでいないと感じている

          • 夫婦関係に真剣に向き合っていないと感じている

5WHY分析のフレームワークがありますが、できるだけ理由を深掘りできるように「寂しさを感じているんだね、それはなぜ?」と根本原因を探っていきました。結果、夫婦関係に真剣に向き合っていると感じられていないというペインがあるようでした。

愛情の有無ではなく、それを感じられていないということが問題だということが問いかけから明らかになってきました。ここで、その対策を書き出すのに例のフレームワークを用います。ダブル&ハーフです。

真剣さを感じられるようにするには?


「真剣に向き合っていると感じられるようにするには、何を増やし、何を減らしたら良いかな」と聞きます。妻からは以下のような回答がありました。

  • ダブル:(増やす)

    • 気遣いや楽しませる気持ちの会話

    • やったことに気づいて感謝する言葉

    • 相手の感情を肯定する言葉

    • 相手のそのままを褒め肯定する言葉

  • ハーフ:(減らす)

    • 相槌だけの返事や気のないやり取り

    • 自分の状況を伝えずにスマホやPCに集中すること

    • 元気がないことに気づいてもそれに触れないでいること

もし聞き方が「何をしたら良いかな」なら、箇条書きで残せたとしても、必要なことを網羅的に引き出せなかったかもしれません。あるいは、増やすことと減らすことのどちらかだけが多く出てきたかもしれません。

全てを書き出した後に「これを守っていけばいいんだね」と言うと、妻は安心してくれました。それ以降、すれ違いで起きるいざこざは激減し、家庭内の心理的安全性が改善されたように思います。このメモは冷蔵庫に貼って、いつでも見れる場所においてあります。

前提は本質的な課題を見極めているか


ダブル&ハーフの考えは汎用的ですが、その前により重要なステップがあります。それは本質的な課題の見極めです。

コインチェックが携わる暗号資産市場は不確実性が高く、一つの判断ミスが大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため「何を」倍増させ、「何を」半減させるべきかを決める前に、まず現在の経営の本質的な課題を特定するプロセスがあったのだと思います。

家庭でも同様です。私は最初「朝早く起きればすべて解決する」と考えていました。しかし、5WHYを通じて深掘りしたら、妻が求めていたのは単なる行動の変化ではなく「真剣に向き合っている」という気持ちが実感できることだったのです。

もし妻の気持ちに向き合わずに表面的な課題に捉われたままでいたら、妻にも娘たちにも不安定な環境で過ごさせてしまったかもしれません。いや、ホントに・・・。

書籍『イシューからはじめよ』でも言及されているように、解決すべき本当の課題を見極めることが、あらゆる改善活動の出発点となります。ダブル&ハーフは、その見極めた課題に対する具体的なアクションを整理する際に力を発揮するフレームワークであるように思います。

謝辞


ここまでお読み頂きありがとうございます。家庭のことを仕事の視点で書いてみたら、結構あっちこっちに気を使うことに気づきました。妻にもレビューしてもらい許可を得たので、一旦これで公開したいと思います。

コインチェック現社長の井坂さんにも(酒の場&口約束で)許諾を得ています。ありがたいフレームワークで私の家庭を救ってくれた現社長ですが、せっかくなので、どんな人物かが書かれた入社時のレアなnoteの記事を紹介させて頂きます。

井坂さんの名誉のために余談ですが、本来ダブル&ハーフは本来はハーフを実現するためのコピーに過ぎず、ハーフと決めたことをECRSのフレームワークで考えさせるためのきっかけとしていたようです。ですが、これはこれでワークしているので、この記事では違う解釈を用いて書いています。

最後に


この記事を通じて、コインチェックという会社の一面を少しでもお伝えできていれば幸いです。そして、家庭であれ仕事であれ、本質を見極めることの大切さを皆さまにも感じていただけたら何よりです。

さて、スクラムマスターの私からの記事は以上です。引き続きコインチェックのアドベントカレンダーをお楽しみください。

おっと、働くことにご興味を持った方からのご相談もお待ちしてます!

恥ずかしげもなく言いますけど、最後まで読んだならスキを押してもらっても大丈夫ですよ!THX!

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