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窓辺は退屈について
注:これは作者の制作段階での構想であり、『答え』ではありません。
また、『答え』はありません。
あなたなりの「窓辺は退屈」であってください。
穏やかな窓辺。
暖かく心地の良い部屋。
いつまでも可憐を見せる花。
変わらない日常と平和。
…。
そんな素晴らしいほどの退屈を背に、見知らぬ街へ。
そして見知らぬ日々を__。
制作にあたって
動機は単純でした。
「AsaMoの曲として、ポップで聴き心地の良いものを作りたい」
他の楽曲の聞き心地が悪いか、と言ったらそうではありませんが、どうにも世界観が尖っている気は微かにしました。
なので「海を目指す旅」という希望や夢の見える心持ちをテーマに制作を開始いたしました。
イントロやAメロのコードは2種類、と至ってシンプル且つ下り音階をテーマにおいt…。という制作秘話よりもお伝えしたかった制作中の思い。
それは、この作中の主じん公は自殺志願をしている、ということ。
実は主人公は「陋巷」という作品のアフターストーリーであること。
タイトルの意味
今作の顔である「窓辺」と「退屈」とはどういう意味として存在しているのか。
これは私が穏やかで変わりのない退屈な日々を営むことを「窓辺に飾られた花みたい」と比喩したことから始まりました。
只々、可憐に咲き続ける花瓶の花。
外界の花とは違い(家庭によりますが)、天候に左右されることなく飢えることなく外をガラス越しに生きています。
ですが花の本当の気持ちは?一体、花の本質は「人間が見て楽しむもの」ではないのではないか?外で生きる花々の行先は?
そんな疑念から作品制作は始まりました。
陋巷とのつながり
陋巷とは、「薄汚く、暗く湿った路地裏のこと」を意味します。
何を持って汚い街なのか、場所なのか。果たしてゴミが散らかっているから?それとも社会的に?
個々の意見や考えが通らず、出る杭打つ街を私は「陋巷」と称しました。
その街を窓辺は退屈では「錯乱と酷さに騙されながら、枯れゆく森」と表現しています。またその後は「__枯れゆく森を背に、この歩みは続いてゆけ」と、陋巷からの逃走が考えられます。
周りに合わせ、リスクの多い『個性を信じること』が抑圧される世界は恐らく平和的でまた楽である、とされていることでしょう。
それを「隙間雲から覗く昼月」と比喩した、と考えます。
月は「夜空」の主役と言っても過言ではありません。他の星々たちも暗闇に負けず光り輝きますが、それを輝かしい社会(ここでいう陋巷とは反対の場所)。
つまり「夜空」を誰もが輝ける世界として見た時、全ての光を抑圧する「昼空」は一体。そしてそこで何かを訴えるように、私たちを見ている昼の月__。
なぜ自殺志願を
「川に飛んでも、泳げてしまう」という表現は「それを試みたが、あいにく泳げてしまい失敗に終わった」とも読み取れます。
「浮腫んでいく度」「癒えない傷」「孤独と身紛わないように」など本作では不穏さや障壁が見え隠れします。
もしかしたら海へは辿り着けないのではないか?
私の傷では海を綺麗と思えないのではないか?
など、様々な不安を主じん公は抱えていたのではないのでしょうか。
ですが、自分が「泳いだ」つまり「生きようとした」ことで、夏の暑さを塗り替えるほど心地よく、そして澄んだ川と底に住む命の美しさに気づけたのだ、とも思います。
窓辺は退屈
2番Bメロ後半からは以前とは別の、確実に気持ちが変わっているような歌詞が見えます。「心押されて笑って見せた。」「あの日の後悔にさよならしたら」きっと自分は海に辿り着ける。
あの日、「できなかった」「しなかった」そんな後悔とさよならする旅。
海 は私たちの住む大地よりも広く深く果てしなく美しい。それはきっと、誰もが胸に秘める『夢』のような__。
制作秘話と最後に…。
カチャンというボタンを押す音や、セミの鳴く環境音は実際に自分で撮ったものです。真夏の酷暑の中、ラップトップとマイクを抱えて外へ出て録音しました。曲に彩りがでて、本当に撮ってよかったなと心から思っています。
編曲も私の中ではどの曲よりも難航しました。
ポップであるからこそ、単調でありきたりになってしまいやすいので沢山の意見や助けがあってこの曲は生まれました。
最後に2番サビの後はラジオのような間奏が流れますが、これが「始まりに似合う歌」としてここで登場します。私にとって、どこか一人旅するときなどは「良い音楽」が大事です。「好きな音楽と見知らぬ場所」これが旅だな、と感じます。
この曲が、あなたにとっての『始まりに似合う歌』でもありますように。
作詞・作曲・編曲:AsaMo
歌唱:AsaMo
Guitar,Piano:AsaMo
Bass:米粒元気
Drum:DruYAMA & RiM
1st Album "見知らぬ日は旅" 第11節目『窓辺は退屈』