シェア
三島朝海
2024年4月22日 03:16
一 雨がやんで、五月の空が晴やかに笑ひ出した。 新鮮な藍色の空。あの寶玉に譬へられる名器、砧形の青磁の肌を思はせるやうな淡藍の空の潤ひ。その潤ひは私の心を動かして、素足の蹠に靑草の柔かい感觸を樂しませるべく、靜かな郊外へと引張り出さうとするが、とかく病氣がちで、この二三年が程は一歩も門を外へ踏み出した事のない私は、どうにもその誘惑に應じかねてゐるので、私はせう事なしに「空想」の翼に乗つて、ほん