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思いドのお弁当箱
ミスタードーナツと聞くと、ドーナツを連想される人が大半だと思うが、わたしの場合はちょっと違う。
お弁当箱
わたしは、真っ先にお弁当箱が浮かぶ。
小学生だった90年代、ミスドのグッズはお弁当箱や食器、タオルなどの日用品が多かった。
ドーナツを買い、それでポイントをためたらグッズがもらえる。企業のよくある戦略である。
ただ、子どもながらもおもちゃではなく日用品を、中でもお弁当箱をありがたいな~と思いながらゲットしていたのには、それなりの理由がある。
当時、わたしは甲子園球場の近くに住んでいた。最寄りのミスドは、その前にあるショッピングモールの中。
そこへ通うということは、阪神淡路大震災で見事に横倒しとなった、名神高速道路とも対面することになる。
やはり、あの映像は誰が見ても衝撃的だったように、わたしたち住人も相当にショックであった。
壊れるはずのないものが壊れたという、無念さと恐怖。中には、高速が復旧してからも近づけない知り合いもいた。
もちろん震災直後は、ミスドはおろか高速の近くに入ることすらできなかった。
次第に、のしのしと重機が入り、瓦礫や砂が取り除かれ、工事が進んでいき、そのうち向かいにあるショッピングモールも再開になりミスドも…!という展開だったと記憶している。
持ち帰りからスタートして、店内での飲食、汁そばや点心も提供再開という流れ。
もちろん、ミスタードーナツはドーナツありきなのだが、汁そばや点心のセットを頼むと客単価が上がる。そして、わたしたち消費者にはよりポイントがつく。グッズをゲットできるチャンスが増えるのだ。
あのお弁当箱が欲しいから来週もミスドね!
うちのミスドスタイルは、家族それぞれが店内で汁そばセットや点心セットを頼んだあと、持ち帰りで15個前後買う、というもの。
これを毎週繰り返せば、かなりポイントがたまる。
そうして、グッズをゲットしていたのだ。
中でも、わたしの中でお弁当箱がヒットしていたのは割れないから。
食器だってかわいいけれど、落ちたら割れてしまう。床に落ちて割れたお皿を拾うときの虚無感。
タオルだってかわいいけれど、非常時にはなんでもかんでも拭かなきゃいけない。このタオル、調味料が飛び散った床じゃなくて、まずは身体を拭くやつとして使いたかったのに…
その点、お弁当箱はプラスチック製なので簡単には割れない。そして、用途も限られているから、お弁当箱をお弁当箱のまま保存しておける。
だから、お弁当箱だった。給食が再開しても、遠足に行けないとわかっていても、それでも何個も集めた。
失われた生活を取り戻すかのように。
わたしたちは、大丈夫と言い聞かせるように。
中でもお気に入りだったものがある。
原田治さんのイラスト入りの2段重ねのやつ。
同じ色味でポーチもついていた。
あの女の子たちの、ちょっと憂いを帯びたような笑顔が、当時のわたしたちの心情を表しているかのようにも見えて
これも、お弁当箱を集めていた理由かもしれない。
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