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スーパーマーケットにレイヤーがあるように

OKストアを溺愛しているんですが


他にも、オオゼキ、成城石井、伊勢丹三越、マルエツ、コストコ…
買いたいものによってスーパーを使い分けています。

たとえば、国産和牛もも肉のかたまりが欲しいと思ったとき
お休みの日ならば、迷わずOKストアに自転車を走らせます。

でも、これが仕事おわりだったら

帰り道に寄れるオオゼキに行くでしょうし
そこで、いい感じのお肉に出会えなかったら
国産和牛もも肉を買うという選択肢そのものを諦めるかもしれない。
もうマックのハンバーガーでいいやってなるかもしれない。

このように

その日の体力
お財布事情
求めているもののレベル
量と質のバランス

こういったもので
向かうスーパーが変わるんですよね。

いろんな因子が絡まって
意思決定が大きく変わる。



これと似たようなことが、病院選びでも起こっている、と考えています。

ちょっと風邪をこじらせたなと思ったら近所のかかりつけ医へ
レントゲンやCTなど大きな医療機器が必要な検査には中規模病院へ
血管カテーテル検査や手術などは手術室やICUのある大病院へ

と、いった具合です。

普段は自覚しないことかもしれませんが、日本の医療にはフリーアクセス権というものがあります。

紹介状のあるなしで費用が変わったりもしますが、どの医療機関にも自分の意思で受診できるんです。

ちなみに、海外ではフリーアクセス権のないところがほとんど。

たとえヤブ医者であっても、住んでいる地域によってかかりつけ医がすでに決められている

とか

どんなに具合が悪くても、まずはかかりつけ医を受診しなければならないし
その紹介状が発行されないと次の大きな医療機関を受診できない

とか

入っている保険によっては救急車に乗れない

とか

そもそもお金がないので、医療にアクセスするという選択肢がない

という人も大勢います。


そして、レセプト(医療算定)によって全国的に同じような医療が受けられます。

これも、実はすごいことなんです…!

たとえば、同じような手術をする場合

A大学病院B教授の手術 20万円
C病院町医者の手術    10万円

大きな病院で手術してほしい!という欲求そのものは否定しませんが、こういうことは算定上、絶対に起こりません。

同じような手術をしたら
同じような算定となります。

認知度やスキルに応じたインセンティブが医療機関や医師に還元されたりしないんです。これ、しまむらの黒いトートバッグとCHANELの黒いトートバッグだとしたら、あり得ない話ですよね。



このような点でみると、日本の国民皆保険制度はよくできているなという印象を受けますが、今回のメインは保険制度ではありません。

病院にもレイヤーがあること、言い換えるとフリーアクセス権はあれど、それぞれの機能と役割に応じてお世話になる医療機関は変わるよ

という話をしていきます。

さきのスーパーマーケットの話でいうところの

・どういう商品をおくか
・どういった客層にきてもらいたいか

ですね。

1個30円の玉ねぎを求めるときは伊勢丹三越に行かないし、国産の牛タンブロックを求めるときはマルエツに行かない感覚、とおきかえてもらえると嬉しいです。



病院のレイヤーとは?を説明するまえに、まずはこちらをごらんください。

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みなさんが思い浮かべるであろう「病院」
分解してみると、4つのステージと1つの介護領域があります。

テレビでよくみるのは、超急性期(ICUとか救命)や急性期(一般病棟の急性期)あたり。

ですが、他にも超急性期に比べたら看護師の配置が手薄な亜急性期や慢性期の病棟、看護よりも介護がメインとなる老人保健施設や介護医療院なんてのもあります。

(余談ですが、療養病床よりも精神病床のほうが多いってことをさっき知りました…それだけ精神疾患の治療には時間がかかるということ)


それぞれ、どんなところなのか一緒にみていきましょう。


超急性期

救命病棟24時やコードブルーなどの救命センターやICUを想像してもらえるとバッチリですね。

看護師の配置数がもっとも高く、人工呼吸器はもちろん、流行りのECMOや人工心肺、CHDF(血液透析をやりっぱなしにするような機器)など、わたしも使ったことがないような医療機器ばかりが並んでいます。

基本的に、話せてごはんが食べれてという人は、ほぼいません。
全身管理が必要な患者ばかりが入院しています。

そのため、外来患者が

入院させてくれよ〜

といって入院できるような場所ではありません。

特定の要件や病状を満たさないと入院できないようになっています。

仮に入院したとしてもものすごくリソースの高い場所です。当然、医療費も1泊で東京の1Kの家賃を超えてくるような金額がかかります。

(高額な医療費に関しては高額療養費制度などがあるため、気になる人は調べてみてください)

端的にいうと、伊勢丹三越の地下食品売り場って感じです。日本屈指の名品とスタッフが揃っております。


急性期

一般病棟と呼ばれるところです。

以前、大学病院の急性期病棟に勤めていたんですが、あれはここに当たります。

看護師の配置は標準程度

日勤で6〜8人
夜勤で10〜14人

くらいの患者を受け持ちます。

大々的な医療機器は外れており、点滴や尿道カテーテル、ドレーンと呼ばれる、雑に言えば持って歩けるものが身体に繋がっている状態の患者が多く入院しています。

手術や内視鏡検査、心臓カテーテル検査で入院する人の多くがここに入院すると思っていただけると。

特定機能病院などの大規模な病院になると、大部屋でも差額ベッド代(公的制度では補償のきかない費用)のかかる部屋もあるので注意が必要ですね。

医療機関からすると、この差額ベッド代は病院の純利益になるので特別個室病棟に入院してくれる患者さんは神様にみえるかもしれません。

さしずめ、紀伊國屋とか成城石井あたりかな。
ハズレ少なめ、あるけど少なめ。


亜急性期

ここはふたつあるので、それぞれ紹介します。

・地域包括ケア病棟

急性期を脱したものの、体力を回復したりADLをあげるためにもう少し療養が必要、と判断された人が入院することの多い病棟です。

いま、わたしはこの病棟に勤めています。

このご時世下では珍しくなくなってしまいましたが、救急できた患者さんが直接入院することは基本的に少ないです。

この病棟ではできない処置、使えない薬があるから。

そして、緊急入院した患者がそのまま自宅退院するかどうか、読めないからです。自宅退院してくれないと困る理由は、後ほど説明します。

くわえてこの病棟、病気によって入院できる期間があらかじめ決められています。

入院した初日に患者家族に書いてもらう書類にも、これに同意してね、期日よりも早く退院になることもありますよ、と書いてあります。

地域包括ケア病棟、この名称

わかりやすさ重視で申しますと、医療機関と地域は協力して包括的なケアを提供して、なるはやで患者さんをおうちに帰してね、という意味になります。

そのため、病棟単位で理学療法士や作業療法士など、リハビリを進めていく職種の配置が義務付けられていますし、地域との連携を促すために社会福祉士(メディカルソーシャルワーカー)の配置も義務付けられています。

自宅退院を叶えた症例のぶんだけ、国から算定が貰えます。言い換えると、病院の儲けになるんです。反対に、施設入所や他の医療機関に転院となると、この算定は貰えません。

患者を自宅に帰せなかったでしょ?
それは、医療機関と地域がうまく連携しなかったからでしょ?

という評価になるのです。


スーパーでいうと、ヨーカドーとかOKストアとかかな。だいたい満遍なく、でもプライベート商品やなんだこれ?みたいな商品がある。


・回復期リハビリテーション病棟

こちらも地域包括ケア病棟と同様、入院期間が決められています。

くわえて、入院できる病気の種類も決められています。
入院するためのハードルが高い…!

簡単に言うと、リハビリで回復する病気ということですね。そのためのリハビリ、そしてリハビリに関わるスタッフの配置の厚さですから。

そのため、心不全や腎不全、精神疾患系の病気など、リハビリでどうにかなる可能性の低い疾患は対象外となります。

そして、こちらもいかに患者を自宅へ帰すか、が算定要件の大事なポイントとなります。

いかに自宅へ帰すかを難しい言葉でいうと「在宅復帰率」と言うのですが、70%を超えることが条件。

病気も入院期間も満たしているけれど、本人にリハビリの意欲がまったくないとなると、ここへの入院は大変厳しいものになります。


マニアックな職種がいるから、ここはスーパーでいうとオオゼキかな。
あそこ、土のついたフェンネル(ハーブの1種、わたしの身長くらいある)とか売ってますしね。意味わからん。


療養病棟

治療ほどの積極性はなく、生活と病気が共存しているような状態の人が多く入院しているのがこちら。

もちろん例外はありますが、急変が起こりにくいかわりに、劇的に改善して自宅退院を目指すという人も少ない印象を受けます。

日本には、約32万床あります。一般病床が90万床近くあるので、これが多いか少ないかは人によるのかしら。

最初に示した図を振り返ってほしいのですが

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ご覧の通り、入院期間が長くても良いのが特徴のひとつです。乱暴な言い方をすれば、亡くなるまで入院し続けることができます。

わたしの知ってる例だと、2000日超えの猛者がいますね。
え、5年超え…?

その理由は、リソースが低いから。
ここに入院している患者は、医療依存度が高いのではなく、介護依存度が高いんですね。

健康な新生児みたいなイメージです。
非常に手がかかり、常に見守っていないと心配ですが、それは資格のない母親で十分という。医師が何人もいなくていい。

医師も看護師も、医療機関の配置人数としては一番低い空間となります。

点滴もドレーンも入っていないかわりに

寝たきりでご飯を食べさせないといけない
定時でオムツ交換をしないといけない
乾燥予防や水虫の治療のために塗り薬を塗らないといけない

という人が多く入院しています。

言い方が大変難しいですが、在宅療養の厳しい患者が入院したい病棟No.1だとして、常に満床に近い状態なんですね。週末のフードコート状態。

うっかり誰かが元気になって退院しないと、もしくは誰かが亡くならないと、ベッドに空きが出ないんです。

空きベッドは争奪戦、運良くタイミングの合った患者が入れるくらいのマインドがちょうどいいかなと思います。


スーパーでいうと、まいばすけっとみたいな感じかな。店員さん少なめ、仮に商品が売り切れになったたしても、次の入荷があるまでそのまま。お客さんからその件でクレームがくることも少なめ。

まいばすけっとを非難するつもりはないですが、お客さんの期待値低めってイメージです。まいばすけっと目掛けて東北から来ました!って人はさすがにいないと思うんだ。

コストコやオオゼキならあり得るけど。


介護の領域(介護医療院や老人保健施設など)

上の療養病棟とほぼ変わらないですが、管轄してる法律や制度が介護保険法となっています。

そのため、介護保険法でサポートできない年齢層の人たち、疾患や障害の人たちはここに入所することが難しいです。

30代の筋ジストロフィー患者さん、とか
うつ状態がひどくて寝たきりの20代患者さん、とかね。

ここは、もはやスーパーではなくてちょっと大きめのコンビニ、だと思ってもらえるとわかりやすいかもしれません。

大多数の人は満たされるだろうけど、生のホタテやパクチーが欲しいって人には不向きというか。コンビニじゃなくてスーパー行ってねという気持ち。


患者を生活の場に帰したい理由

みなさんもなんとなく想像がつくと思いますが、医療機関や福祉のお世話になることなく、自宅で生活してもらうほうが患者本人のQOLは維持出来ますし

なにより

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