これからの正義の話をしよう
①功利主義の否定
人の効用を共通の価値基準ではかることには無理がある。幸福の中には質の悪い悪徳がある。
(アリストテレス)
②リバタリアンの否定
その人の家庭環境や国籍、才能はその人が選んだものではない、故に人は最初から不公平な状態でスタートする。よって政府が介入する必要がある。
(ジョン・ロールズ)
③リベラルへの疑問
道徳的宗教的な考えと正義を分離し個人の自由と選択を推進する(政府の介入を容認する点でリバタリアンとは違う)リベラルだが、同性婚論争などで同性婚擁護の論拠に結婚の目的論(テロス)的側面に触れざるを得ない時点で個人の自由と選択を超えてしまっている。
④コミュニタリアンの推奨
我々は先祖や共同体が延々と紡いできた物語りの中に自己のアイデンティティーを獲得する。故に共同体としての恩恵を受ける権利があるし、共同体としての負債を背負う義務もある。自分の利益に関係なく自分の身内を社会的責任より優先させることを道徳的に否定できない。
⑤道徳的責任
Ⅰ自然的義務:普遍的。合意を必要としない。(公正さなど)
Ⅱ自発的責務:個別的。合意を必要とする。(契約など)
Ⅲ連帯の責務:個別的。合意を必要としない。
⑥サンデル結論
正義については普遍性を保つため道徳的宗教的な考えを差し挟まないという主張に反対。より善き生のためについて道徳的見地からケーススタディで議論していくことが必要。善き生と正義は切り離せない。
宗教に含まれる道徳的側面やその他の倫理観を無視して原理主義的な正義を押し進めれば道徳的に歪んだ正義が生まれてしまう。逆にコミュニタリアンなどの道徳的な考えから共同体維持のための経済格差是正のインセンティブがつくれる。