俺とボーカロイド。前編
何で今こんな時にこの記事を書こうと思ったのか、いや常々おれはこの記事を書かなければいけないと思っていたのかもしれない。登山家が山を目指すように、おれもこの大きい山に登らなければいけない。そういう感情がいつも頭の隅にあった訳だ。ついでにいうとこないだが3月9日(ミクの日)だったこともあって久々にボカロを聴いてみたら、書くべき時は今だなと、そう思った。
前置きは短くすませたいがこれだけは言いたい。おれをこんなにもオタク街道に迷い込ませたのは間違いなくボカロとニコニコ動画だし、暗黒の中学時代に差し込んだ光もまた、ボカロとニコニコ動画だった。今年で21になるが今でも日々を楽しませてくれる大切な友達だし、おれという人間を構成する要素でもある。それくらい、ボカロはおれの中で大きな存在なのだ。と、前置きはこれくらいにして、おれは懐古厨になりますか…
メルト/ryo feat.初音ミク
ボカロを語るうえでこの曲はまず外せないだろう。いや、ホントは他にも語るべき曲はたくさんあるし、したいんだけどそれをすると途方もなくなってしまうからとりあえずこの曲を挙げさせてくれ。
ボカロというコンテンツが発展していった過程にはいくつかの革新的な変化というか世代の移り変わりがあると(おれは)考えているんだけど、メルトはボカロ第二世代の始まりの曲だと言える。第一世代、ボカロ黎明期とも言える時代においては、まだ初音ミクはキャラ付けもされていなければそれぞれの曲に合った世界観がある訳でもなく、”プレーン”な初音ミクとして使われていたような気がする。「みくみくにしてあげる」や「Ievan pollka」、「初音ミクの暴走」とか完全に初音ミクを初音ミクとして扱った楽曲がニコニコ動画にアップされていた時代。これをおれはボカロ第一世代としている。年代で言うと大体2006年下半期から2007年上半期くらい。
で、この「メルト」とかいう神曲から初音ミクの方向性は大きく変わり始めた。シンプルな楽曲の良さ、そこに詰め込まれたボカロPのそれぞれの世界観、良く言えば圧倒的なポピュラーさ、あえて悪く言うならば初音ミクでなくてもいいという代替性があった。当時のおれはまだ小学生でもちろんパソコンなんて触らせてもらえなかったからリアルタイムな反響を知ることは出来なかったから、残っている情報を元に推測で語るが、やはり今までの初音ミクのイメージとは違った楽曲を歌わせることに一定の反発や懐疑があったらしく、始めはあまり再生数は伸びなかったという。そう、最初は。ある程度ボカロに詳しい人なら”メルトショック”という言葉で当時何が起こっていたのかを推察できると思うが簡単に説明すると、halyosyという歌い手(まだ歌い手という言葉は無かったが)がこのメルトの歌ってみた動画をアップしたところ、爆発的な人気を得、歌ってみた、踊ってみた、描いてみた等々多数の派生動画が作られ、一時はニコ動のランキングを独占した、という事件だ。それに伴いメルトの存在が広く知られるようになり、それに応じて初音ミクの知名度もグングン上がり、メルトのようなボカロPの世界観が歌詞に、メロディに、アレンジに存分に表現された楽曲が作られるようになった…というのがおれの中ではボカロ第二世代の楽曲の大きな特徴だと考えている。簡単に言うと、以前までは一部の人達が生のまま頂いていた初音ミクが、色々な腕利きのシェフによって独自の味付けや調理法でより多くの人に提供されるようになった…みたいな。ごめん、ちょっとキモイ例えをしてしまったのは自覚してる。
ここにもっと詳しく書いてあるから気になったら見て…
こっからさっき言ったボカロ第二世代について語っていきます。年代で言うとメルトショック以降から2010年くらいまで。かな…すんません、この辺曖昧です。マジでこの世代は名曲が連発されすぎてて、ボーカロイド全盛期に向けての地盤が着実に作られていったのがわかると思います。個人的にはこの世代の曲はどこかカオスな雰囲気があってめちゃくちゃ好きです。一番好きかも。
炉心融解/iroha(sasaki) feat.鏡音リン
いや、初音ミクの曲じゃないんかい…というツッコミは置いといて、この曲ヤバくないですか?人間には到底歌えそうもない、完全にボーカロイドありきで作られた曲。モラトリアムで退廃的な歌詞、ひたすらに内向的で人間の内側をダウナーに歌っている。曲調もマイナーコードがふんだんに使われ、ダークな雰囲気を漂わせている。いやマジでかっこいいなこの曲…
間違いなくメルトショック以前には見られなかった楽曲だし、炉心融解がボカロ第二世代において大きな影響を与えたとおれは考えている。以前はイラスト一枚だけだったのが、MVが作りこまれ、映像としてもクオリティが高くなってきたのもこの辺りからだし。もちろん楽曲や世界観についても。
ワールドイズマイン/ryo feat.初音ミク
せっか~いで いち~ばん おっひっめっさっま~!! みんな大好きワールドイズマイン。マジでこの時期のryoの勢いすごいな。この曲が投稿された2008年だけで”ブラック★ロックシュータ”ーや”恋は戦争”、”初めての恋が終わるとき”という現在でも大きな人気を博している名曲たちが投稿されている。ちなみにさっきの炉心融解も2008年。2008年は革命の年ですね間違いなく。ほかにも”よっこらせっくす”とか”ぽっぴっぽー”とか、かわいい名曲たちが生まれた年でもあるし、halyosyが桜ノ雨をリリースしたりと、とにかく話題に事欠かない年だなぁと、私はそう思います。だがしかし、ボカロ第二世代の一番の盛り上がりはこっからなのだ…2009、2010年はこの5億倍怒涛です。まとめて語っていこう。
ハチ、DECO*27、wowaka、sasakure.UK…ボカロの”歴史”を作った男たち
ボカロ聞いたことがある奴でこれらの名前を聞いたことが無い人がいるだろうか。いや、いない(反語)。とてつもない才能とセンスを持ったボカロPたちが洪水のように生まれたボカロ第二世代。その筆頭格と言っても過言ではないのがこの人たちだろう。今でも第一線で活躍しているし。惜しむらくは、その才能の一つはこの世から亡くなってしまった、ということだろうか。じゃあまずはその曲から、いこうか…
裏表ラバーズ/wowaka(現実逃避P)feat.初音ミク
おれ、もっとwowakaが作る曲が聴きたかったよ… 誰にも追いつけない爆速BPM、早口でまくしたてる歌詞、それなのにどこか心地よささえ感じさせる印象的なピアノのリフ。全てが、革新的だった。wowakaの曲には特にコアなファンがいた印象だし、圧倒的な中毒性があった。なんかもう凄すぎて凄い位の感想しか出てこない。頭空っぽにして流し込まれたい。wowakaサウンドを。この曲の他にも”ローリンガール”や、”ワールズエンド・ダンスホール”など数えきれない程の名曲を作り、ボカロ第二世代はもちろん、現代に渡るまでボカロ文化を支え、象徴したボカロP。みんな、ヒトリエも聴こうな…
結ンデ開イテ羅刹ト骸/ハチ feat.初音ミク
はいクソかっこいい~~~~ 初めてMV見たとき、当時中学生だったおれはこの和装で妖艶な雰囲気を漂わせるミクにえげつないくらいドキドキしていたのを覚えています。まぁ今もなんですけど。おれの記憶が正しければ、初めてボカロにハマったのはハチの曲からだったし、初めて聞いた曲もコレだったんじゃないかな… 口ずさみたくなるような軽快なメロディに反して、かなりえげつない事を歌っているというギャップが良い。それとMVが最高。全部ハチの手描きってとこが凄いし、版画のような良い粗さがさらに妖しい雰囲気を醸し出している。あとこの時代のハチ楽曲だとおれは”WORLD'S END UMBRELLA”が好き。ハチが大きな影響を受けたと公言しているBUMP OF CHICKEN らしさが曲全体にあって、やっぱバンプ好きなんすね~ってなる。
モザイクロール/DECO*27 feat.GUMI
おれはボーカロイドの中でもGUMIが一番好きなんだけど、GUMI曲の中でもトップクラスに好きなのがこれ。イントロからマジで挑発されてる。お?どうした?ノらんのか?って。こんなん誰でも体動いてしまうやろ!!氏の曲の中でもトップクラスの再生数と知名度を誇り、この第二世代を代表する曲だ。DECO*27が表現する世界観としては、男女のグズグズした微妙な距離感だとか退廃的な関係がこれでもかと歌詞に表れている。それとこれまで挙げてきたボカロ曲の中では限りなくポップソングに近い。親しみやすいメロディー、まぁ歌詞はアレだがキーが特段高いわけでもBPMが早い訳でもなく、歌いやすい曲が多いと思う。そしてこのボカロ第二世代を代表するボカロPの中では一足早く商業分野に進出したり、人間のボーカリストとコラボしたりなど、ニコ動外での活動を成功させた。そういった意味でもこれから先のボカロ全盛期の礎を築いた、名実共にボーカロイドを代表するプロデューサーであることは間違いない。
ぼくらの16bit戦争/sasakure.UK feat.GUMI
マジで曲が良すぎる。この心地いい変拍子がたまらんのよ… sasakure氏の手掛ける曲の特徴として、打ち込み系、特にチップチューンのようなピコピコ音があるんだけど、こういう音を使った曲ってボーカルが入ってしまうとどちらかが邪魔してしまうというか、そのバランスを取るのが難しいんだけど、ボーカロイドという機械の声を使うことで見事に両立させている。あと氏の代表曲に”*ハロー、プラネット”という曲があるんだけど、その曲の温かみが凄くて… 例えるならば、MOTHER2の世界観のような、優しいんだけど、どこか儚い、けど前に進まなければいかない使命持っている…みたいな。インストだけで聞いても充分満足できるような完成度の高い楽曲が盛りだくさんでホントに聞いてて飽きが来ない。好きや…
2009、2010年のボーカロイドの発展はほんとに目覚しかった。この他にも挙げるべき曲は死ぬほどある。”ロミオとシンデレラ”、”1925”、今は亡きsamfreeさんの”ルカルカ”、”メグメグ”シリーズ、”ダブルラリアット”、”右肩の蝶”etc… ボカロリスナーであれば必ず一度は聞いたことのある楽曲がこの世代に作られているし、何度も言うけどこの先のボーカロイドの有り様を形成したのが前述した楽曲群とボカロPだ。巡音ルカ、GUMIなど新しいボーカロイドが登場し、メディアにも取り上げれられ始め、一部のオタクだけで楽しまれていたものがさらに多くの人に聞かれるようになり、それに応じてボーカロイドはその世界観や性質を千差万別に変化させていった。ボーカロイドがここまで発展した理由の一つとして、プロデューサーやクリエイターが、いい意味でキャラクターを”いじれる”という要素があったという点がある。どこまでも作り手の希望に応えてくれる圧倒的な自由度がこの先爆発的な人気を博した”カゲロウプロジェクト”シリーズや、”kemu"の楽曲群、"悪の娘”シリーズなどこれまでとはまた違った表現方法を生んだ要因になったと考える。
ホントはこの続きで書きたいんだけど思った以上に書いた量が多いので、ボカロ第三世代以降については後編という形で違う記事にまとめようと思います。おれがリアルタイムでボカロを追ってた時期に突入するから思い出補正で書く量が爆増しそうな予感がするので… ではまた~ノシ
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