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「月の歌を聴いていた」②遊びたければ自分から電話をかけなさい
ここ2週間はアルバム制作の最後の仕上げをしていた。
音の方は長いミキシングとアレンジ作業を終えてマスタリングに。ジャケットの方は最後まで悩んで(一時は自分でやろうと思っていたのだけれど)、大好きなコラージュ・アーティストの井上陽子さんにお願いすることに決めた。陽子さんはIDÉE自由が丘での個展準備とスケジュールが丸被りの中、忙しい時間をぬってすばらしいジャケットとブックレットを制作してくれた。
最後の最後にアルバムタイトルが決まったことで、デザインの方向性も曲順もレーベル名も芋づる式にスルスルとまとまった。タイトルは友人と出かけたある一日がきっかけになり、今回のリリースのために立ちあげたレーベルのロゴは、これまた大好きな紙雑貨作家のtegamiyaさんにお願いした。
あぁ、一人じゃ創れないんだなと、しみじみ思う。
方々から暖かい手が差し伸べられる。なんてありがたいことなんだろう。
でも。
ただ黙っているだけでは、手を差し伸べてはもらえないのだ。
自分が描きたい世界観をどうすれば表現できるのか。
それを実現するために"助けてほしい"と声を上げる。
小さな勇気をふりしぼって、迷っていると打ち明け話をする。
そしたら誰かが共鳴して、新しい道に通じる地図に光を当ててくれる。
人生はもしかしたら、暗がりの中で地図の上を歩いているようなものなのかもしれない。光が当たったその道を、選ぶのか選ばないかは自分次第。
そんな流れに守られて、無事にアルバムが完成した。
今朝起きたら、ずっと一緒に作業をしていたエンジニアの森さんからメールが届いた。改まって"ありがとう"って言ってくれて、なんかくすぐったいけど、嬉しかったな。
ふと、子どもの頃、母から言われた言葉を思い出す。
「遊びたければ自分から電話をかけなさい」
学校が終わって遊んでくれる友だちがいないことをごねると、母はよくこう言った。そうしてしぶしぶ何人かの友だちに電話をかけたのだ。
大人になっても同じなのかもしれないな。遊んでほしい人には自分から電話をかければいいのだ。それはすごくシンプルでカンタンのようだけど、実はやっぱり難しい。願いを月明かりに何度も当てて輝かせて、遠い遠い星屑みたいに小さく思える勇気をふりしぼって、今日も一歩を踏み出すんだ。
よしひろあさこ20周年記念リリース情報②
先行の配信シングル「Altar Girl」「Kaoru」10/23世界同時リリース!
今回のアルバムでジャケット制作をお願いした井上陽子さんはただいま『IDÉE SHOP Jiyugaoka』で展覧会を開催中。配色やバランス感覚の素晴らしいコラージュ作品が壁一面に並んでいるのを眺めるのは圧巻です。会期は11月3日まで。