なぜ、その専攻なの?-"Think Outside The Box!"を身に着けよう
前回は、私が学んだコース「New Media Management」の授業をご紹介した。
そもそも、なぜ、このコースなのか?
今回は、留学をした理由でもある、このテーマを選んだ経緯についてお話します。
留学を決めるまで、私は大手メディアで記者として働いていた。とても忙しいが、やりがいもある仕事だ。特に、自分で興味のあるテーマを自分なりの切り口で掘り下げて取材したり記事を書いたりすることができる仕事をするようになってからは、裁量の大きさも含めて本当にやりがいを感じていた。
その当時、私が最も力を注いでいたのは、起業家やイノベーションなどの取材だ。既存の枠組みを壊し、新たな仕組みを生み出して課題を解決する。彼らの想いや手法に触れ、その着眼点に感嘆し、世の中をどんどんアップデートしていくエネルギーにわくわくしていた。取材し記事を出した後にもどんどん進化していく彼らのスピード感にも圧倒され、憧れていた。
そしてある時。ふと、我が身を振り返る。
あれ…?
私自身はずっと同じ場所にいる。
人に話を聞き、記事を書く。その動作はずっと変わらず、取材対象に応じて新しい分野をどんどん学んできた。
それはそれで、成長している(と信じたい)と思うし、楽しい。
しかし、これからもずっとそれでいいのだろうか…?
世の中はどんどん、革新が進む。IT技術の発達で、メディア業界も大きく変化している。それはこれから、もっと大きく変わるはず。それがわかっているのに、自分は何もアップデートできていない。
話を聞き、質問をし、記事を書く。その基本動作は変わらないにせよ、新しいテクノロジーを使いこなしたり、それに応じて表現方法も変えたり、していくはず。
なのに私は、何も変わってないな…?
大型の記事を書くことが増え、読者からの反響を知る機会も増えた。自分の記事に対して反響があるのは、とても嬉しい。読者のニーズを知り、考え方を知り、さらに取材を進める上での基盤を強くすることができる。
でも、今の働き方では、読者の声を知る機会も少ない。重要なことなのに。
そもそも、世の中では情報を取得する手法も大きく変化している。「タイムパフォーマンス(タイパ)」が重視され、見出しだけ見て済ませる人が増える中、どうしたらもっと記事を読んでもらえるのか?どうしたら、もっと読んでほしい人に記事を届けることができるのか?
…いつしか、働きながらこんなことを考えるようになっていた。
その時点で、自分に足りないものは「デジタル時代に対応するための技術」、「顧客のニーズを把握し、顧客とつながるためのテクニックや知識」だな、と感じていた。私は経済系の取材経験が長い。民間企業では当然のように求められるこういった視点や知識が、そもそも自分にはない。と気づいた。
ジャーナリズムから離れたい訳ではない。
取材して記事を書く(伝える)、という作業は好きだし、できれば今後も続けたい。
でも、今のままでは頭打ちになってしまう気がする。ジャーナリストとしての自分を、もっと強化したい。
もっと効率的に、本来届けたい人のところに届けるようにしたい。読者とのやり取りもできるようにしたい。
そして「課題を洗い出し、解決策を見つけ、自らその手段を生み出す」ということが自らできるように、起業家のマインドや手法を身に着けたい、と強く感じた。
ジャーナリズム、ビジネス、デジタル。この3つの分野を結んでできる三角形が、これからの私、ひいてはメディア業界には必要なスキルや知識ではないか、と思った。
これらが一度に学べる場所はないだろうか??
こんな視点で、学校探しを始めた。実際に留学する2-3年前だ。
メディア(ジャーナリズム)に強い学校を洗い出し、それぞれが提供するコースやプログラムの内容を確認し、自分が求めるものに近いか判断する。こんな作業を繰り返した。
その中で、「ここで学びたい!」と強く思った学校の1つが、Syracuse UniversityのNewhouse大学院だった。
提供するプログラムや授業のタイトルは、「これを学びたい!」と、読んでいても胸が躍るようなものばかり。
メディア関連だけではなく、ビジネス系、デジタル系とバランスよく配置されている。
また、起業系の授業もあり、「これぞ私がやりたいこと!」と思えるものだった。
さらに、Newhouseの魅力は、hands-on(実践的)な授業が多いことだ。理論を教室で学ぶだけではなく、codingを学んで自分でウエブサイトを作ったり、現実の企業に対しコンサルティングをして「課題の発見・解決策の提案」を実行したり。
類似のコースを提供している大学院は、少ないものの他にもいくつかあった(当時はまだ新しい概念だったので。今はもっと多いと思います)。ただ、ジャーナリズムを理論で学ぶことに偏り過ぎていたり、逆にビジネス系の授業ばかりだったりと、微妙に私の興味とは合致していなかった。
もう、Newhouseしかない…!
そう思うまでになっていた。
大学の学科案内などを読んでいて疑問にぶつかると、大学にメールした。すると、すぐに回答が返ってくる。入試要項、授業料、授業の内容や大学の雰囲気等々、心配なことはすぐにメールしたが、回答もその都度、即戻ってくる。しかも内容によって、事務局スタッフから学長まで、さまざまな人が直接、答えてくれるのだ笑
この対応の早さや柔軟さも、Syracuseへの好感度が高まる要因だった。
当時は、周囲にNewhouseに行った人はいなかった(実際はいるのですが、知り合うことができませんでした)。経験者から話が聞けた訳ではない。それでも、大学に直接何でも聞けるので、不安が解消できたのも事実だ。
New Media Managementの学習期間は1年間。これだけの内容を学ぶのに、十分ではないかもしれない。漠然としているコースだけに学んだ後、どんな仕事をするのか?どんな道に進むのか?そんな不安もなかった訳ではない。
でも、そもそも今までになかった知識や視点を身に着けたくて、このコースに行くのだ。
これまで20年以上、同じ会社で同じ職種で働いてきた。
同じような思考回路、動作の人たちと一緒にいるのは居心地は良いが、今の自分を外から見て何が不足しているか、何が強みか知りたい。
そして、凝り固まった「常識」や「前提」を取っ払い、全く新しい視点で世の中を見られるようになりたい。
このnoteのテーマ、ひいては私自身の座右の銘でもある「Think Outside The Box(常識を疑え)」をやりたい、身に着けたい。
この世の中、この先どう変化するかなんて誰にもわからない。どんな変化だろうが、乗り越えられる知見を身に着けたい。
そんなことを考えて、New Media Managementに行く!と決めました。