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車椅子の視点 ヘッド・スティックで伝える私の言葉

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事故で脳幹部中枢神経挫傷という障害を負い、四肢の運動機能を失った著者。リハビリや友人とのやりとり、社会に対する思いなどを綴る。1998年7月初版
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#脳幹部中枢神経挫傷

ヘッド・スティックで伝える私の言葉

メヂカルフレンド社 1998年発行

このテキストは現在準備中です。
noteのマガジンとして発表するため仕組み上、一部表示されています。
準備が終わりましたら、あらためて公開させていただきます。

はじめに 私は、一九八〇年十月、中学校の登校途中に、居眠り運転をしていたトラックにはねられ、脳幹部中枢神経挫傷という致命的な傷害を負った。脳幹部というのは、体の運動神経や知覚神経の通り道であり、顔面や

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1.  再 生

1.  再 生

純白の空間の中で
 気がつくと、目の前が真っ白だった。ワッ、一体何をボーッとしていたんだろう……。

 今にも、白い壁にぶつかりそうな気がしたので、あわてて後ろに下がろうとした。でもなぜか、足の感覚がない。足を見ようとしたが、首はおろか、目さえも動かない。どうしたんだろう……。

 私は、自分に何が起こり、どういう状態になっているのか思い出そうとしたが、記憶がまったくない。わかるのはただ、自分が物

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2.  現 実

私は異星人? このつらさは、「私が正常だ」という証拠なのだ。
 全介助の身になっても、なにもできなくなったわけではなく、体に大きな不自由をもたない人にはわからないことを、自らの生き方や体験を通じて理解してもらうという、この身でなくてはできない大切な役目があるのだ。私には視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、記憶力、思考力などの残存能力があるじゃないか——。

 「生まれ変わったつもりで、障害とともに、一か

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