ノルウェー政治のメロドラマ なぜ、それでも支持される?
冒頭写真は、お気に入りの1枚。なぜでしょう?
【概要】
●スキャンダルが止まらないノルウェー政府
●支持率が落ちない首相と保守党の不思議
●伝説の元首相
●新たな伝説となる現首相
●女3人で政権を支える、スーパーチーム
●石油を掘り続けたい党が、「環境党」と認められる?
●ノルウェーの矛盾を象徴する、有名な姉妹
●アジア人移民が増えると、ノルウェーの未来と福祉制度は長くは続かない
●赤ちゃんと一緒に政策議論
●え?MeToo? なんのこと?
●首相の後ろ姿
●「ノルウェーのノーマル」を変え続ける首相
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#MeToo 、政権解体危機でも、支持率が下落しない首相と保守党
●青年部の未成年を泥酔させ、性行為をした保守党の国会議員(別の言葉でいえば、レイプ)
●国会の改修工事で大赤字を出し、与野党からの反対で、王様の次に権力があるとされる国会議長(保守党)が辞任
●リストハウグ元法務大臣(進歩党)によるFacebook投稿が原因で、テロ生存者を傷つけ、あわや政権解体すれすれに
この3大事件は、全て2018年に起きたばかり。
ほかにも、現石油大臣(進歩党)と、かつて性行為をした女性が、#MeToo運動に後押しされて、当時のことを初めて公に語る騒動も起きた(別の言葉で表現すると、お酒で泥酔していた未成年をレイプしても、この国では大臣になれる)。
昨年の国政選挙で勝利した、アーナ・ソールバルグ首相が率いる右派陣営。
まるで、スキャンダルが日常茶飯事かのように、次々と国会から火が出ている。
写真:保守党のロゴマーク
それなのに、保守党と進歩党の世論調査での支持率は、上昇している。
反対に、国政選挙で大敗し、現政権を批判する立場にいる、左派最大政党の労働党は、支持率が低迷したまま。
「世論調査での1位は、労働党」というのがこれまでの常識だった。今は、保守党にその座を奪われた。
首相の顔に、不安の文字はみられない。
自分の庭で起きている騒動に、「あらあら」と、冷静に水をかけていく。
「何が起きているんですか?」、「家主のあなたに、責任は?」と問うご近所(メディア)が押しかけてきても、「大丈夫、大丈夫」となだめる。
「私たちにも悪いところがあった」と、謝るところは、さっさと謝ってしまう(※ノルウェーの政治家は、めったに自分たちの責任を認めない)。
今、もし国政選挙があったとしても、現連立政権は、また勝利するだろう。恐らく、さらなる票を集めて。
4月前半、オスロ郊外では、保守党にとって最も大事な総会が開催された。
党首である首相、保守党の全大臣、全国各地の議員たちが集結する。これから1年の党の政策を多数決で決定する場だ。
政権に座る首相と大臣らが反対している政策でも、全国各地の議員たちはより先進的・もしくは後進的で、多数決で可決となることもある。首相らは、渋々とその決定に従って、国会で推し進めていかなければいけない。
各党の政策が、多数決で決定される。ノルウェーの民主主義の仕組みと、政策が生まれる「工場」での過程をみることができるのが、総会だ。
各党の個性とエネルギー、人間ドラマ、党内での勢力争いの構図が、じわじわっと浮き出る、一大イベント。
そのため、各党の総会は、毎年地元メディアに大きく報道される。
写真:総会の開催中におこなわれた記者会見。右側はノルウェーの報道陣、左側には首相
保守党と、ノルウェーという国の構図が浮き上がる総会。今年の総会の様子をまとめた。
※冒頭写真は、首相の後ろ姿だ。今回、最も気に入っている1枚でもある。その理由は、記事の後半にて。
Text&Photo: Asaki Abumi
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