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ぴょんぴょんババア【ショートショート】
僕はあのトンネルが嫌いだ。ほんのちっちゃなトンネルなんだけど。前にコウタ君が「ここはぴょんぴょんババアっていうキョンシーのおばあさんが出るんだぞ」と言っていたのを聞いてからだ。
けど、学校へ行くにはどうしても通らないといけない。いつもは怖いので、絶対にコウタ君やタカヒロ君と一緒に通ることにしている。
だけど今日は僕一人だ。登校日に出す宿題を忘れてしまって、出しに行かないといけなくなったからだ。
トンネルの手前で立ちすくむ。
どうしよう。宿題出さないと先生に怒られるかな。でもトンネル怖いしな。どうしようどうしよう。
でもやっぱり先生に怒られるの嫌だし、目をつむって走り抜けることにした。
トンネルに入ってすぐぐらいのところで、「ゆういちー」と僕を呼ぶ声が遠くから聞こえてきた。
やばい。ぴょんぴょんばばあだ。
僕は泣きそうになりながら走った。
「ゆういちー」呼び声はどんどん近づいてくる。やっぱりぴょんぴょんばばあだ。僕が走るスピードなんて、あっという間に追いついてくる。
「ゆういち」
真後ろで声がしたので、僕はもう動けなくなって止まった。そして恐る恐る振り返った。
そこには、自転車に乗ったお母さんがいた。
「もう、聞こえんかったのー?あんた、これ出しに行くんやろ?」
お母さんが差し出したのは、出しに行くつもりだった宿題だった。
「あんた戻ってくるのかわいそうやで、お母さん一生懸命こいできたのに」
僕はなんだかほっとして泣きだしてしまった。
「なにー、トンネル怖かったの?お母さん一緒に行ってあげるわ」
お母さんは自転車を降りて手を繋いで歩いてくれた。
お母さんの手はあったかくてほっとした。
けど、やっぱりぴょんぴょんババアは怖いから、これからもやっぱりコウタ君やタカヒロ君と一緒に絶対通ろうと思った。
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大学時代、結構まじめに友達が「あのトンネル、ぴょんぴょんババアが出る」と言っていたのを思い出して書いてみました。
小学生でなく、大学生の彼が真剣に言っていたのが、今から思い出すと微笑ましいです(笑)
今は立派?に経営者なんかしてるけど、今も信じてるのかなあ‥‥今度聞いてみよう(笑)
そういえば、六甲山には百キロばばあが出るらしいですね?この作品読む人の中には、神戸方面の人おらんかなあ。
この作中の母の喋り方は岐阜弁です。なんかしっくりきたので、つい。
読みにくかったらごめんなさいm(_ _)m