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雪明かり【ショートショート】

電気を消した部屋の青さに気づいた。障子に映る世界は青い。夜って真っ暗じゃないんだなと雪見を上げてみると、雪が降っていた。月明かりかと思ったら雪明りか。こんなにも明るいのか。

私の住む地域はそんなに雪深いところではないので、雪にまつわる記憶は特別感がある。
大学生の頃女友達数人とバスでスキーツアーへ行ったこと。スキー自体より夜のお土産屋さんの散策が楽しかった。クリスマス時期だったので、たまたま手作りケーキを買えるお店があり、ワインを買ってペンションでホールケーキを囲んだこと。たしかチョコレートケーキだったと思う。
子供の頃、ビールケースを土台に雪を固めて、父が滑り台を作ってくれたこと。大人になった今思い返すと泣けてくる。あれだけ作るの大変だったろうなあ、と。今の父にはもう作れないんだろうなあとも。
家族でスキー場へ行った時、スキー板を担いで歩いて登ったこと。リフトを横目に見ながら、あれは私たちは乗れないんだなあと、疑うことも無く父について登った。スキー場のお昼ご飯はカップ麺だった。父は外でカップ麺を食べるのが好きだった。湯を魔法瓶に入れて持っていき、ゲレンデの片隅で食べた。最高に美味しいカップ麺だった。

しんしんと降る雪の中、猫の声がした気がした。窓を開けて呼びかけても、しんとしている。気のせいだといいが。この寒い夜に凍えている猫がいなければいいと思った。


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