引き売り【ショートショート】

「ちゅーるー、ちゅーるはいらんかねー」
昨日はにゃーにゃーにゃーの日だったから、特別に引き売があった。

「トラ猫のおじさん、僕まぐろ味の一本くださいな」
「はいよ、まぐろ」
白黒の猫が現れて、お財布からお金を出す。この日のために貯めたおこづかいだ。
白黒猫は大事そうにちゅーるを抱えて帰っていった。

「おじさーん、おれはカニ味２本！」
近所のガキ大将の黒猫がやってきた。
「こづかいせびってきたのかい？」
「ちがうよ、今日のために皿洗いの手伝いして‥」
ガキ大将はごにょごにょと気まずそうである。
やるときはちゃんとやるこなのである。

次に来た女の子はちっちゃなちっちゃなスコティッシュフォールドだった。
ピンクのワンピースがふりふりひらひらして、とってもかわいかった。
「ママー、ちゅーる食べたいー」
ねだられてママは財布を出す。
「一本だけよ」
「やったー！あたち、イチゴ味がいいー」
「ほんとにもう、いちごちゃんたら」
言いながらママはイチゴちゃんに甘い。
いちごちゃんとママは嬉しそうに手を繋いで帰っていった。

「ふう、この時期とはいえ引き売は」
おじさんは汗を手ぬぐいで拭う。
でも、おじさん、嬉しそうだった。
みんな嬉しそうに帰ってったからね。

みんなお家で幸せな時間過ごしてるといいなあ。