恋愛【ショートショート】

久々にスタジオ入った。暗くて狭くてヒヤッとしてて良い。
電気つけてキーボードの準備してたら、マキオがラリラリになって入ってきた。
「うっすー、カヨコひとり?」
「あんた、目やばいんだけど」
「んーん、ちょっと気持ちいいの飲んできただけだよー、別に悪いことはしてないよー」
合法かもしれないが、この状態でクルマ乗ってきたのはアウトだろ。
「カヨコもやる?すうーっとするよ!気持ちよーく演れるよ」
「あたしはやんない」
「ふつーの眠剤だからやればいいのにー」
マキオはブツブツ言いながらタバコに火をつけた。
「はー、タバコおいしー!決まっってると、すっごいウマー」
一人で騒いでる。
「はいはい、じゃま。準備してよねー」
「へいへい、タバコ吸ったらねー、へへへー気持ちいー」
マキオは一向に準備しないので、キーボードにシールドさし終わって、今度はマイクのセットもすることにしたら、イケポンがきた。
「おいっすー」
「遅いよイケポン。こいつどーにかしてよ」
「ん?おおー、きまってんのか、こいつ」
「んあ!」
イケポンがマキオを羽交い締めにする。
「んだよー、いま気分いーのにー」
「さ、練習すっぞ」
「ええー、もっと飛んでたいよー」
「ばーか!カヨコに蹴り入れられんぞ、早くしろ」
「マジかー、カヨコ怖いよなー、やるわー」
もうなんでもいいから早く準備しろ、とあたしは思った。
「イケポンどうー?何曲できたー?」
「俺?よゆーよゆー、5曲いけた」
イケポンはドラムの準備しながら答えた。
「マジでー?あたし二曲しか拾えてないよ!」
「ええー、二曲~?すくなー」
マキオが突っ込んでくる。
「うるさい、ジャンキーはひっこんどけ!てかタクミくるんだよね?遅くない?」
「もう来るんじゃね?どうせ女に送ってもらってんだろ」
はーやれやれ、うちの王子は女にだらしない。
「よーし、あたしマイクでーきた。タクミのもやっといたよ」
「サンキュ!マキオはできたのかよ?」
「んー、できたと、思う!」
「なにそれ、思うって」
「だってやってみねーとディストーションとかわかんねーもん」
「お前、あたしにエラソーなこと言うなら、お家でやっとけー」
「アハハハ、まーいーじゃーん、楽しくやろうよー」
ほんと、ジャンキーはどうしようもない。
がちゃ。
「あ、タクミおそーい」
「ああ、わりいわりい、ちょいそこで…」
「オンナと別れ話でもしてたんか?」
「へへへー」
へへへーじゃない。へへへーは肯定ってことか?全く、とっかえひっかえ。
「だあって、スタジオのが大事っつったら、怒って帰っちゃったもん」
全く王子様は。
「はいはい、マイク準備しといたよ、早くベース準備してよねー」
「おーさんきゅー」
まずマイクではっはっとか言ってテストしてる。ベースは手際よく、ちゃちゃっとシールド繋いでチューニング合わせてる。何気ないことなのに、ついつい見てしまう。
「みんなーお待たせー。何から行くー?」
「あ、あたしごめん、二曲しか拾えてなくて」
「なんだなんだー、ちゃんとコード覚えとけよー」
「うっさい、わかっとるわい」
「んじゃ、姫、何から行く?」
急に姫とかドキッとするわー!
「え…とじゃあ二曲目の」
「オッケー、deep blueからいこ、カヨコ、鍵盤からだから、俺カウントするね」
最初は弾き流しだから、トチらない。よし、うまく歌につながった。
「…みーてたー、いくつものとーきをー」
タクミいい声だ。聞き惚れて鍵盤忘れそうになる。
次ハモリきんちょーする。
「deep blue magic さっき出会ったばかり
どうして 恋に落ちる
midnight magic 闇に沈んでくよ
君の瞳が」
サビ終わった。最初とコード一緒。間違えない。
「あ!」
「あ!かよ」
「イケポン笑わないでー!ごめん、間違えたあ」
「せめてギターソロまでいかせてよーカヨちゃんー」
「うーごめん」
「まーまー今日一発目だし、ここまでつっかえなかったの奇跡じゃん、な、姫」
また姫かよ。照れるだろばか。
「う、うん、ごめん」
「じゃあ今度ツーコーラス目からいくか、カウントとるぞ」

「ふうーーー」
みんなタバコ吸いに行って、一人になって、ちょっと一息。
「どしたん、姫?」
…ついてたのに。なんであんただけ戻ってくるかな。ふたりきり気まずい。
「いや別に…ちょっと疲れたなーと思って」
「なんで、よく弾けてたじゃん、コーラスもよかったし」
「うー」
「第一あれお前作ったんだから、もっと誇りに思えよ、いい曲じゃん。俺の声に合ってるし」
ドキッ。わざと言ってんのかな、この人。
「…お前さ、なんか最近俺だけに冷たくない?」
「…へ?なんで?そんなこと…ないよ」
「だってさ、イケポンとかふつーにしゃべるのに、俺としゃべるのぎこちないじゃん」
な、なんてことを。
「そ、そんなこと気のせいだよ!あたしトイレ行ってくる!」
に、逃げてきてしまった。

休憩後はもう一曲もやれて、もうみんなバッチリで、なんかあっとゆーまに練習終わった。
はー終わった。無事終わったー。終わったら終わったでほっとするけど、淋しいんだけど。
荷物まとめて帰ろうとしたら。
「よう、飲みいかね?」
「のののの飲み?」
油断してたから、キョドってしまった。ちょっと冷静さを取り戻して。
「みんなは?」
「え?わかんね。帰ったんじゃない?」
ということは、二人でいくってこと!?
「じゃ、いくか」
え?行くって言ってないのに、そうゆう話になってる?
あたしは流されるままに、タクミについていった。

「カンパーイ」
タクミのいきつけの居酒屋で、とりあえず生中飲むことになった。飲んだら喋れるかな。
「お前さ、あと三曲どうしたの?めずらしーじゃん」
「ああー、ちょっと課題忙しくってー。てゆかあんまり馴染みない感じの曲で、拾うの苦労してて」
「そっかー。まあ、遊びなんだから、あんま無理すんなよ、できなくたって堂々としてろよ」
なんだかだ言って、いつも仕上げてくるタクミに言われると、ありがたいとしか言いようがなかった。
「ありがとう…お?」
「はははは、それだよ、その笑顔」
なぜかタクミに頭ポンポンされている。赤面。ばれたかな。
「お前飲みすぎたか?だいじょぶか?まだ一杯目だろ?これ飲んだら出るか」
ばれなかったけど優しい。どこまでも優しくて気がつく。だからモテるんだろうなあ。

「おうっと、お前だいじょぶか?足ふらついてない?」
ぐいっと腕を持ち上げられた。腕が熱いよ。あーもうこのまま…なんて、ダメ、絶対笑われて終わる。タクミみたいなモテるやつに。てかあたし、オンナと思われてないし。
「ダイジョブだから」
でも顔見れない。だから見抜かれる。
「ダイジョブじゃないだろー」
て、顔をのぞき込まれる。ちょちょっと、きびしい。むりむり。も、だめ。
あたしはタクミをぎゅっと抱きしめてしまった。
「え?」
ああー、やってしまったー。え?て言われた。
「ごめん、帰るね」
と突き放そうとしたら。
「だーめ」
と羽交い締めされた。
ななななんで、なんでしょう。
「ちょっと俺の話きーて」
え?なにを??
「お前俺のこと避けてるだろー」
なんだと?あたしさっき抱きしめたでしょーが。
「さーけーてーない!」
タクミを突き放す。
「お前、俺の女癖許せねーんだろー」
「わかってんじゃん」
あ、独り言が口に出てた。
そしたらタクミがキレた。
「んだよ!わかってねーのおまえのほーなんだよ!なんでわかってくんねーの!ちくしょー」
「ちょ、タクミ、お店の前、静かに…」
「も、いーや、どーせ嫌われてんなら」
タクミはあたしを抱き寄せ、キスした。
え?
「俺、お前の事好きだけど、お前俺のこと嫌ってるし、こんなことしたらどーせ怒るんだろーけど、もーいーや、これで最後、バイバイ」
え?なにこれ?
「ま、待って!あたし、言いたいことある!」
タクミが少し止まった。あたしはタクミに駆け寄って言った。
「あたし、ずっと好きだったんだよ」
「……え?」
「だから、タクミを好きなんだってば」
「だってお前避けてばっかで」
「だーかーらー、照れ隠しだっての!そんなこと恥ずかしいから言わせないで!」
「ははは…はは」
タクミは笑いだした。何笑ってるんだーと思ったら、今度は泣き出した。
「よかったー、俺ほんとカヨコのこと好きで、でも嫌われてると思って傷ついて、逃げてて」
「なくな!よーしよーし」
なぜか今度はあたしが頭ぽんぽんしてる。
なんか思ってたほどクールで強い男でもなかったけど、でもいい。タクミだから。
「大好き」
「…え?なに?聞こえねーよ」
「なんでもない」
二人でラリったように笑いながら、楽器持って走る。
恋なんてそうゆうもんかもしれないなー。
今度あったらマキオに、薬なんかやってないで恋しなよって言ってみようと思った。


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バンドやってましたが、ちょっと分からないところがあって、曖昧、な知識で書いてます(^_^;)
下調べもせず、ゴメンナサイ…というか、調べようもないところもあったりして…。
せっかく読んでくださったのに、いい加減な内容で申し訳ありませんm(_ _)m

ちょっと今回は、我ながら、試作という感じになっちゃいました…UPしてすみません(;_;)

※ちなみにバンドマンでラリってる人は見たことありません(^_^;)というか、ラリってる人に会ったことないです(^_^;)

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