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ラムネ菓子【ショートショート ファンタジー】

街角で座っている占い師のおばあさんがいた。

真っ黒なマントを頭から被り、鷲鼻で。

ここってほんとに日本だよね?そんな風情だった。

なに占いかと思ったら、易者さんみたい。なんかあのおみくじみたいな棒がいっぱい入った入れ物が置いてあった。

ちょっと、と呼び止められて、平日の帰りでさっさと帰りたいのに足を止める俺もお人好しだなあ。

占いなんて信じたこと一度もないのにさ。

大体呼び止められると、水難のそうがでておる、とか言われるんでしょ。

と思いきや、小瓶を取り出した。

5センチくらいの瓶。ギンガムチェックの蓋がついてかわいい。中には水色の星型のものが。

ラムネだって言ってくれた。拍子抜けだ。

まぁ、置いとくぶんには害もなさそうだし、可愛いから飾って、今度妹にでも見せようか。

夕飯食べて、シャワー浴びて、そろそろ寝るかと思った時に、不意に瓶に手が伸びた。

半ば無意識で開けてしまった。ラムネだ。懐かしい甘い香り。本当についうっかりくらいの感じで、口に入れちゃったよ。

甘い。シュワッと溶けていくのが小気味いい。

すると不意に眠くなって、俺はベッドへやっとの思いで潜り込んだ。

目覚ましかけ忘れた!とがばっと起きるとまだ6時。優雅に朝食を済ませた。

昨日は、藍色の天鵞絨の夢を見た。夢なんて普段見ないのに。美しい帳だった。そこにスパンコールが縫い付けられたように星が輝いていた。


帰り道、あのおばあさんを探したけれど、見つからない。お礼を言いたかったのに。

まあいいや、またそのうち会えるだろう。

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