眠れぬ夜の【ファンタジー ショートショート】
明日は朝から会議だっていうのに眠れない。
別に眠れないのに理由はない。
睡眠薬をのんで、トイレへ行くといっちょ前にふらつくのに、全く眠れはしない。
導入剤は切れてしまい、2回目を飲んだ。
ここ最近急に熱くなってから、どうにもうまく眠れない。
酒でも飲んでこようかと階段を降りると、途中ポワンとした不思議な光がある。
妖精?そんな童話じみたことをふと思いつく。
驚かさないようにそっと近づく。
なんと美しい。
花びらのようなピンクのドレスを身にまとった‥本当に妖精だった。とんぼのような透き通る羽を持っている。
鈴の音のような声で何か話しかけてくるが、言葉がわからない。
コップでは大きすぎる。しかし一番小さいのは‥おちょこか。
おちょこにミルクを入れて、渡し、重いので飲むのを手伝う。
妖精はのどが渇いていたようだった。
クッキーを小さくちぎって渡すとそれも食べた。小さな手小さな唇、とても可愛らしい。
私は、タオルをふかふかになるようにたたみ、ベッドを作り、タオルハンカチを枕代わりにした。
妖精は寝床と理解してくれたらしい。
翌朝は時間がなくて、妖精に出かけてくると言いおき、慌てて出かけたのだが、会社にいる間中彼女がきになっていた。
ドアを開けて「ただいま」と声をかけてみる。こんなの久しぶりだ。独り暮らししてからただいまなんて言ったことがない。
妖精は、飛んでやってきた。
また鈴の音のような声で話している。
昼にはクッキーを食べるよう置いていったが、夜はパンを買って帰った。奮発したのだ。いつもと違う、高いパン屋さんで買った。
今日は紅茶も入れてみた。
あ、アマゾンから届いた。バービーの家具セット。ベッドにソファに使えないけれどトイレやお風呂、パソコンモニターまでついている。
パジャマもバービーのを買ったら喜んでいた。ドレスがシワになるからということだろうか。
茶器は、磁器のミニチュアがあったので、別にポチしておいた。
バービーのテーブルで、パンと紅茶を楽しんでくれている。
タオルハンカチを小さく切って彼女のタオルにし、小さなバスタブに水を張って、お風呂場で入ってもらった。金色の髪がより一層ツヤツヤになっていた。
次の日には簡単だけどドールハウスも買ってきた。
お家ができて楽しそうだった。
未だに彼女の言葉はわからない。だけど彼女の表情なんかで少しずつ、楽しいのか困っているのかわかってきた。
そして、一段と彼女が悲しそうな顔をした日があった。彼女は帰るんだなと思った。
通じているかはわからなかったけれど、また遊びに来ればいいよと努めて明るく言った。
次の晩、彼女によく似た、けれど少しだけ年上に見える妖精が現れた。水色だけど、彼女とおそろいのドレスを着ていた。
彼女はもともと着ていたピンクのドレスに着替えていて、小さな体で私にハグした。
私はそれで満足だった。寂しいけれど。
またおいで、と言うと、二人は、2つの光は飛んでいった。
またそのうち遊びに来てくれるだろう、そう思った。