コンビニはじめました(ショートショート)
家の一角を使ってコンビニエンスストアをはじめてみることにした。
玄関で靴を脱いでもらって、左手の畳の部屋へ入ってもらう。
8畳の和室をコンビニにしているので、通常のコンビニよりは狭い。ミニコンビニだ。
仏間なので仏壇が置いてある。月命日や法事の日
、盆と正月は休む。幸い今は月命日をやっている先祖はいない。
重いものはおけないので、飲み物を置くのは諦めて、外に自販機を据えた。
縁側のほうに書籍を置き、あとはカップ麺やパンなど常温で置いておけるものが主だ。というか、冷蔵庫は大きいし重いので置けなかった。
代わりに畑で取れた野菜を少しおいてみた。
どちらかというと昔ながらのスーパー?だろうか。
こんなコンビニ誰が来るのかというと‥
隣の奥さん。
「朝のパンを切らしちゃって」
うちは七時から営業しているから。
それから、バス停への通り道なので、飲み物はよく売れる。行きしな雑誌や新聞を買っていくサラリーマンなども。
コーヒーの機械は置いてあるので、それを買いに来る人もいる。
うちも某珈琲店のように、トッピングなどもしてみようかしら。
モーニングメニューなんか出して、パンにバターをつけて焼いてみたら、みんなコーヒー片手にパンをくわえていくのだろうか。残念ながらイートインスペースはないので。
あとは意外に野菜が売れる。近所は畑だらけでおすそ分けする先もないのだが、ここを通り過ぎたところの新興住宅地の人が買いに来てくれる。
あとは、夜開けていると近所の中高生がカップ麺を買いに来たりする。
育ち盛りは夕飯だけでは足りないらしい。パンなんかも売れる。常温で売れるフィナンシェやまんじゅうなんかも売れる。食後ににちょっと食べたいのだろうか。
時折変わったものを面白がって仕入れてみることもある。私はやらないのだけどカードゲームなんかは、意外と好評だった。
これは面白そうだし売れるかもと洒落で仕入れた味噌コーンバターキャラメルは売れなかった。大した数仕入れなかったので、自分で食べてみると意外と美味しい。みんな食べればいいのにもったいないなあなんて思いながら。
慣れてきて、店内調理品(要するにうちのキッチンで作ったもの。食品衛生法はとってある)もだしてみたが、好評である。オリジナル商品のサーターアンダギーなんかは、コーヒーの友にいいらしい。
そうこうしているうちにお盆になったので、お店をかたさなくてはならない。親戚がお参りに来るからだ。
簡易な棚だが、面白がっていろんな商品を仕入れたので、整理がなかなか大変だった。
そして今は無事お盆休みを迎えている。
たまに常連さんが来るが、表の立て看板にお盆休みと書いてあるのを見て帰っていくのを窓から見ていると、ちょっと申し訳ないなあと思う。けれど仏間なんだから仕方ないのだ。お客さんごめんなさい。
それにしても、急に休みを与えられると、はてどうしたものかと思う。親戚は来るもののそれほど頻回でもないし。
お盆休み一日目にして、コンビニ生活が恋しい。ご先祖様ごめんなさい。