
コンビニ【ショートショート】
俺は祐一。コンビニでバイトしている26歳だ。新卒で3年続けた会社を昨年辞め、それからはここのバイト代で命を繋いでいる。
なので、わりと頻繁にシフトに入っている。深夜が主だ。
そんな中、最近気になるお客さんが現れるようになった。
コンビニというのは、大体みな、何かしら用事があって入ってくる。買い物、電気代などの支払い、ATMの利用、そしてトイレの利用。色々あるが、みんな何かしら用を足して帰っていく。
ところがそのお客さんは何もせずに帰る。なんというか、店内を一周して帰るだけなのだ。
そのお客さんが来るのは決まって日曜の夜だったことも、俺の記憶に残りやすかった。
服装やメイクは少し派手な印象で、時間も時間だし、水商売の帰りなのかなぁと思っていた。でも、きれいな人だったから俺に下心がなかったかと言われれば嘘になる。
そんな日々が三月ほど続いた頃だったろうか、その女性がレジの前に立ったのだ。俺は今までのこととひっくるめて、反射的に緊張した。
しかし、女性は何も品物も持たず収納用紙も持っていない。心なしかもじもじしている。これはもしや漫画などであるシチュエーションじゃないか?俺はちょっと期待した。
期待しながらもそれはおくびにも出さず「タバコですか?」と聞くもお客さんはかろうじて小さな声で「違います」と言う。
ホットスナックだろうかなどと考えながら、お客さんの反応を待っていると、なにか思い切った様子で話し始めた、
「あの‥!」
「はい?」
「ゆう君、私‥」
え?ゆう君?俺のこと知ってるのか?
俺が目をパチクリさせていると、突然彼女は声音を低くして言った。
「俺だよ、俺、小学校の時よく遊んだ正俊」
「え?」
俺は呆然としていた。
「‥あの、正俊?‥引っ越していった?」
俺は頭がぼんやりとしたまま、口だけが動いていた。
「そう!そう!」
目の前の女性は高い声に戻り、キャピキャピとはしゃいでいた。
「私、今ぁ、マドレーヌっていう名前で近くのお店に勤めててぇ、月曜がお店が休みなのぉ」
はあ、そうですか‥。ぼんやりとした頭で彼女?彼?を見つめる。正直そう言われてもなんと答えたものかわからない。
「それでね、私‥」
正俊もといマドレーヌがまたもじもじし始めた。
「ずっと好きだったんです!つきあってください!」
マドレーヌはかわいいので付き合うことにした。