#SF
ブランコ【ショートショート SF】
「ごめーん、今日も迎えに来てくれるー?」
酒に酔って上機嫌なタケルの声と、もう帰っちゃうのー、という女の子の声が聞こえる。もう、これで何度目だろうか。これまでの私は、電話の前でも笑顔を装っていそいそと迎えに出ていた。けれど前回でそれも終わりだ。
「いや」
私の一言に、一瞬沈黙が訪れた後、タケルの怒声が聞こえてきた。私はそれを無視して電話を切ると、スーツケース1つ引いて玄関を出た。すでにグッバイ愛の
かけ違ったボタンの世界【ショートショート SF】
アラームで目が覚める。
ん!?たしかに8時にかけたはずなのに8時15分を指している。これは急がないと間に合わないぞ。
慌てて着替え駅へ走る。
「いたっ 」
歩行者信号が点滅していたので止まったら後ろから押された。みんなどどっと渡っていく。え、誰も止まらないのか。私も訝しみながらも合わせた。
改札が開いたままになっている。壊れているのかと別の所へ行こうとしたらまた押され、そのまま進むと入れた。
いつ
お風呂嫌い向けの機械?【ショートショート】
ほぉー、ゴールデンウイークでもやるんだねえ。
ゴールデンウイーク初日の夜、何もすることがなくぼんやりとテレビを眺めていたら、深夜にテレビショッピングが始まった。
アナウンサーが「このバスフレッシュナーすごいんです!お風呂に入らなくてもこの機械に入ってボタンひとつでピッカピカになるんです」と言っている。「香りも風景もボタンひとつでお好み次第。フローラルの薫りから、森林浴の香りまで!露天風呂の景色
その砂漠は一体どこだったのか【SF ショートショート】
気づいたら私は砂漠に立っていた。高校の制服らしいセーラー服を着ている。ああ、私は女子高生なのね。
砂漠の端には広大な滝が流れていた。堀のようにこの砂漠を丸く囲んでいる。滝壺は深く幅は広く、とてもじゃないけど向こう側へ渡ることなどできない。巨大で丸いクレバスのようだ。
私は砂漠に閉じ込められている?どこから来たのかもわからない。
とりあえず歩いてみることにした。しばらく歩いていくと、向こうから
氷の星へ【ショートショート SF】
その時代、人々はすでに地球を模した宇宙船に乗っていた。都市1つ単位くらいの大きさのそれには、空も投影されており、朝が来れば日が昇り夜が来れば暗くなり星や月が映される。
草木を潤すために時折雨を模したものがスプリンクラー代わりに空から降る。雨は川となり濾過され循環している。マジックファウンテンみたいなものだ。
食糧は作れるだけは船内で作り、足りない分や飲水は地球から補給していた。
そう、地球は
私の存在しない世界【ショートショート SF】
リサイクルショップへ楽器を見に行った。するとなぜかエフェクターの隣にこんなものが置いてあった。「リセットスイッチ」。自分の存在しなかった世界を体験できるらしい。なぜ楽器コーナーに?と思ったが、エフェクターとほぼ同じくらいの大きさだったし、店員が間違えておいたのだろう。値段は千円。買ってみた。
店を出て早速押してみた。周りを見渡してみる。なんだ、何も変わらないじゃないか。
歩いてアパートへ帰る。
魔法のホウキ【SF ショートショート】
23XX年。街には自動車は一台も走っていない。
2200年代の終わりに流行りだした魔法の影響だ。
初めはちょっと進化した手品ぐらいだった。
それが、ある少女が昔の童話のようにホウキに乗ってみると言い出した。
最初はみんな、そんなの無理だと言いバカにした。
しかし少女は諦めなかった。
寝る時以外片時もホウキを離さず、機会あるごとに跨がってみた。
朝、鏡の前で髪を整えながら、昼、サンドイッチを頬張りな
真夏のエイリアン【SF ショートショート】
塩素の匂いがした。公園のプールかな。
蝉しぐれが煩い。汗が額から流れる。手の甲で拭った。
なぜこんな強い日差しの日に、ワンピース一枚で外へ出てしまったのか。日傘は刺しているけど、日焼け止めは塗ってきたけど、焼きたくないのに、真っ黒になってしまいそうだ。
暑い。白いワンピースは、白い日傘は、焦げてしまいそうだった。
午後2時。一番日差しの強い時間。本当になぜこんな時間に出てきてしまったのか。
「や