貪婪(どんらん)の灯

 夜の光りが増して声を上げると昼間の街は静まり込む。
 服や靴やアクセサリーや小物。
 欲しいものばかりで時間切れにとホッとする。
 それでも三百万ほど。今日は抑えるつもりだったのに。
 3社目の会社が売れて入金のあった次の日、今度こそ我慢しようという決意は何処へ。
 買収された過去2社はもう10年のうちに潰れている。
 今度の会社は残ってくれるかな。
 飽き性でいけない。わかっているからいいのかも。
 逆境が好きなだけで大きくなってしまったら手に余ってしまうのかも。
 身を焼くような毎日に慣れてしまって、平穏を忘れた。
 刺激的なことを求めてしまい男の名前を忘れるくらいに抱いてきた。
 自慢げに私のことを吹聴する人がいたけれど、みんないなくなった。
 当たり前。元々自分で生きる力がないのだから。
 生きる力のないものは皆死んでいく。
 体の中に異変を感じたのは40過ぎになってから。
 初めて「自分の力で生きていけないもの」と「自分が育てなければいけないもの」を同時に目にした。
 6社目の会社に愛着を持つようになった。
 貴女が成人したころには、もうおばあちゃん。
 貴女にもしも孫ができた頃には、生きているのかな。
 娘には何故か「生きていけないものは滅びるしかない」なんて言えなかった。
 思い通りのものを与えたけれど思い通りには育たないことが面白かった。
 高齢出産で周りのお母さんたちより年上すぎて少し娘に申し訳なく感じたこともあった。
 でも海外の大学を卒業して2年後、貴女は主席卒業の人を連れて結婚の許しを得に来た。
 私は笑みを浮かべ、産まれてくる孫に対して金を用意しようと手配した。

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光野朝風
あたたかなお気持ちに、いつも痛み入ります。本当にありがとうございます。