うなずくはまゆう
一度覚えてしまった悦びは、消えることなく。
足りず求めてしまう衝動を、唇を噛んで耐え切って。
心配がないにもかかわらず、最後に会った日から初めての生理に、少し残念になったり、ほっとしたり。
夏も感じられる熱の中、はまゆうの花が咲いていて、彼岸花に似たその花は、白く吹き出たように花びらを垂らしていて、あなたの熱を思い出す。
どこか遠くへ行ってしまいたい。あなたと。
潮風に揺れる花を見ながら、視線は輝く水平線へ。
海の音が聞こえてくる。
夏はすぐそこに。
白い肌が溶けていきそうな、熱に心も焼かれてしまうような、あの夏。
桜の咲く季節から、何度となく薄い皮膚は重ねられて、私は型に入れられたホワイトチョコレートのよう。すっかり別の形へと。
濃い化粧はナチュラルに。
腰まであった髪は肩まで短く。
服装の色も原色や暗い色がおおかったのに、今は白に近い淡い色がほとんど。
はまゆうの花は広がっていく。
ゆらりと熱中症のように目の前がぼやけて、海も花も遠くへ伸びていく。
花畑を横切って、海の中へと飛び込んで、あなたを抱いたまま泡になりたい。
幾つもの、嘘のように降り注がれた沢山の言葉も、今は信じたい気持ちになっていて、少しだけ想い続ける強さが欲しくて、太陽を見上げ眩しくて目を細める。
いつしか心は変えられていて、いつしかあなたしか見ていなくて、いつしか、待つようになって。
本当はね、夏だもの。
履いてるパンプス脱ぎ去って、海にはしゃぎながら飛び込みたい。
あなたと夏暑いまま夜を過ごして熱冷めやらぬままに朝を迎えたい。
たとえ遠い夢であっても、誰の手も届かない場所で、貫く日差しのような眩しさに包まれて。
素直に出せない自分に勇気を与えて、汚れのない気持ちで。
気持ちを伝えられずに抑え付けているのが馬鹿馬鹿しくなってくるほどの、横にいるカップル。
ギラギラと動き出す季節に冷めているなんて、恋を捨ててしまうようだから。
いずれその恋は終わるだなんて、友達の言葉。叱られもしたけれど、終わるまでの想い出を詰めるのもいいと思う。
今見えている季節や景色が私の全て。
人を好きになること。理屈尽くめで好きは生まれてくるものじゃないから。
長く続いた梅雨ももうすぐ明ける。
今日は雨が降ると思って外に出たら思いの外の天気。
また明日から少し雨が続くみたい。
梅雨が明けたら晴れの日が続いて、今塞ぎこんでいるような気持ちも明るくなる。
指先で花びらをなぞり、一つだけ誓う。
花は咲いてこそ華。
華々しい夏の花火のような恋だとしても。
潮風に白い帽子が吹き飛ばされそうになり、私は頭を押さえる。
その時はまゆうの花が一同に頷いた気がした。
私の気持ちを知ってか知らずか。
参考写真:GMTfoto @KitaQ
http://kitaq-gmtfoto.blogspot.jp/2016/07/blog-post_72.html