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冬季北海道サイクリング:札幌→稚内

12月31日早朝、走行開始。

広々とした北海道の道路も、冬は積雪によって幅が狭まる。
年末の渋滞も相まって、札幌都市圏を脱するまでは非常に走りづらい状況。

今回買ったスパイクタイヤ。

以前の北欧走行と同じく、Schwalbeウインターシリーズの最低グレード。
26×1.75。
スタッド増設可。
タイヤのチョイスはこれで申し分ない。

元旦。
-12℃。

都市圏を抜けた。
昨日の渋滞がウソのよう。
道幅広く、除雪も行き届いている。
スパイクが雪を咬むジャリジャリ音が心地良い。

街は、雪で埋もれている。

北海道の人口減少幅は、全国1位。
出生率はワースト2位。
自宅の雪かきもできなくなったり、車の運転もできなくなる、超高齢化はまだ始まりにすぎない。

山道へ入ると、さらに交通量減少。

静か。
サイクリングの快適度は、車の交通量と如実に相関する。

キャンプ地の定番は、例によって道の駅。
17時で店は閉まり、人気がなくなったらこっそりと軒下にテントを張る。
トイレは24時間利用可、暖房も効いている。

公園や河原や森でキャンプしようったって、雪に埋もれて立ち入ることさえできない。
除雪されているのは、道路や私有地だけ。
雪が降らない日はないので、何らかの屋根や壁がないと、一晩でテントがつぶされかねない。
道の駅のような施設が網羅されているというのは、本当に助かる。

しかし例によって、、、

この風潮は日に日に強化されている。
道の駅だけでなく、コンビニでもゴミ箱を撤去する店舗が続出している。
いよいよ本格的にゴミが捨てられない。

自販機はあっても、缶もペットボトルも捨てられない。

ゴミ箱がないなら買わなければいい。
消費意欲を抑圧してさらに景気を悪化させるつもりなのかな。

憎悪の感情を込めて「ゴミ持ち込み厳禁!」と神経を尖らせるのは逆に疲れないかね。
ふつうにゴミ箱を設置した上でうまくコントロールした方が、最大多数の幸福が得られそうなものだが。

外国人旅行者が日本に対して抱く不満のダントツ1位が、「ゴミ箱がない」。
観光地等でゴミが散乱するのも、かれらとしてはゴミ箱がないのでどこに捨てればいいのかもわからないし、持ち帰る家もない、結果やむをえずその場に置き去る人が出てくる、というのは当然予測できたこと。
解決策も不明確なままで「外国人はマナーが悪い」と糾弾するのは少々酷ではないだろうか。

立派なトイレ小屋付きのパーキングも、国道沿いに時々現れる。

公園のトイレなんかは水道が凍結してしまうので閉鎖されているが、こういうところのトイレは24時間暖房が効いて水道も使える。

ここも、キャンプ地の定番となる。

今回、計5つのモバイルバッテリーを用意した。
周知のように、バッテリー、電子機器は低温に弱い。
スマホは基本的に電源を落として、常にポケットに入れて体温で温めておき、必要な時だけ電源を入れて、用が済んだらすみやかに電源を落とす。
頻繁に使用したい状況であれば、電源は落とさず機内モードにしておく。
キャンプ中は、電子機器もモバイルバッテリーもシュラフの中に入れておいて、保温状態で使用すれば調子良く保てる。

朝。
-14℃。

寒くはない。
着込んでいるからというのもあるし、札幌である程度氷点下生活をしていたので慣れたというのもある。
暑さには適応できなくとも寒さなら慣れる、というのは僕個人の特性か。

やっかいなのは、寒さよりも、雪道よりも、水が凍ってしまうこと。
保冷バッグを二重三重にして入れておけばなんとか大丈夫だが、うっかり外に出しっぱなしにしておくと完全凍結してしまう。

こうなるともう容易に解凍なんてできないし、ゴミ箱がないので捨てることもできない。
もはやただのおもりと化す。

暖房の効いたトイレが現れたら、解凍。

短時間で解凍できるわけないんだけどね。

万遍なく雪に覆われた土地では、ろくに休憩もできない。
そんな時、ダイソーで買ったアウトドアチェアが大活躍。
こんな小っこくても座り心地良く、快適に休まる。

ああ、気持ちいい。

いつだってそう。
「楽しそう面白そう」という僕の直感はいつだって当たる。

「冬の北海道を走ってみたい」
そのために半年間、札幌で仕事しながら冬を待っていた。

狩勝峠を越えて、帯広へ。
ライダーハウスに滞在。
事前に電話して予約する。

ライダーハウスはともかくホテルや旅館なんかでも、いまだにネット予約ができない宿が日本には数多く存在する。
電話が苦手であらゆるやり取りを文字送信ですませたい現代っ子の僕だが、安く泊まるために渋々電話予約を余儀なくされる。

1泊1500円(夏季は1000円)。
シャワー1回100円。
洗濯機、乾燥機はコイン投入式。
寝具を使う場合は+300円。
現金のみ。

夏季は混雑して相部屋になる可能性がある。
今は客はほとんどおらず、悠々独占。

トイレ、シャワー、洗面、洗濯、何をするにも水を出す前に止水栓を開けて、用が済んだら必ず閉める。
北国出身でないとピンとこない話だが、これを怠ると水道管が凍結してしまい、修理するにも費用がかかるとのこと。

再び山へ。

「大雪山国立公園」とかいう強キャラのネーミングに期待。

静寂。
なんたって交通量が少ないのが一番助かる。

北米、北欧、シベリア、など北極圏界隈で共通する植生。

ここは、北海道のど真ん中。

三国峠(標高1139m)。

北海道道路最高地点。

ここがハイライトのひとつと期待していたのだが。
どんな極寒かと思いきや、気温-5℃、ぬるいっ。
雪もそこまで多くはない。
勾配も緩く、スイスイ登れた。

北海道の本気を知りたい。

ブレーキはやはりディスクに限る。
雪道の下りでもなんら性能は落ちない。

石狩川。

日本三大河川のひとつ。
長さは信濃川、利根川に次ぐ日本3位。
三国峠のすぐ西にある石狩岳を水源とし、札幌近郊の日本海へと注ぐ。

北海道最高峰、旭岳(2291m)がうっすらと。

山を降りると、雪が増える。

積雪量は標高差ではなく、山の東側か西側かによって大きく異なるようだ。

北海道ならではの立派なバス停。
バスはそうそうめったに来ないので、ここで休憩させてもらう。

比布。

ぴっぷ。
ぱ行が2文字も含まれている地名は日本でここだけ。
北海道の地名の大半がアイヌ語由来で、無理矢理漢字を当てていることは今さら言うまでもないことだが、それにしても「ぴっぷ」とは、なんともユニークで愛らしい。

ここは、かの「ゆめぴりか」の発祥地。
「ぴりか」もまたアイヌ語で、「美しい」という意味。

比布のライダーハウス。

ライダーハウスについて。

北海道には数多くのライダーハウスがあり、一概にこういうものだと言い切るのは難しいが、営利目的よりはホスピタリティによって、ライダーをはじめとする旅人に安価で寝場所を提供するもの。

本業の仕事がある人が片手間にやるものであって、ライダーハウスを本業として営んでいる人はあまりいないと思われる。

寝具なし風呂なしなど、旅館業法や民泊法の規定をあえて満たさず、法的には宿泊施設の形態をとらないことでコストをおさえ、自由度の高い場を提供している。
支払いが現金のみなのは、法的な宿泊施設ではないためか。
自治体が運営しているライダーハウスもあり、地域活性化を目的として旅人を招き入れたりもしている。

ここ比布のライダーハウスは、1階が遊び心あふれるバーになっており、地元民と旅人を交流させる場をつくってくれている。

今は閑散期のため、客は僕ひとりだけ。

旭川。

札幌に次ぐ第2の都市。

街を歩いていると、
「半ズボン!!」
「寒くないの!?」
とたびたび声をかけられる。
寒くないが。

交通量の多い国道を避けるべく、多少遠回りでもローカルな農道で行く。

それでもいずれは国道に出ることになるのだが。

廃墟。

除雪しないと家は潰れていく。

国道とローカルロードの繰り返し。

ローカルロードが気持ち良すぎて、ずっと走っていたい。

エゾシカ。

クマもシカも、寒冷地ほど大型化する。
体温を維持するには、体重を増やした方がより熱を生産でき、体表面積を減らした方がより熱の放散を抑えられる。
大型化した方が体重あたりの体表面積を減らせるため、同じ種でも寒冷地ほど大型に、温暖地ほど小型になる。

人間の体型も、熱帯のアフリカ人は痩せ型で手足を長くすることで体表面積を増やして効率的に熱を発散しているし、極地のエスキモーなんかはズングリしたガッチリ体型で体表面積を減らして熱をキープしている。

2001年に日本一周した時は、北海道でシカを目撃したのはほんの2~3頭だけだった。
今回は何百頭も、日々遭遇する。

北海道開拓後に一時は絶滅の危機に瀕したこともあるエゾシカだが、近年は急増し生息地域も拡大している。
植林や農地の拡大によって餌場が増え、温暖化によって越冬しやすくなっていることなどが増加の原因として挙げられている。
増えすぎてしまったことで、生態系へのダメージ、農業被害、交通事故多発、などの諸問題が深刻。
害獣として駆除の対象となっている。
ハンター不足もあって、捕獲数よりも繁殖力の方が上回っており、今後も増加していくようだ。

日本海。

利尻富士(1721m)。

奇跡的にすっきり晴れ上がり、拝むことができた。
この先はずっと雪予報なので、もう姿を見せてくれることはないかもしれない。

また国道を避けて、マイナーロードで。

しかし、途中で除雪終了。

今宵は屋根なし壁なし。

無風の日が多い。
暴雪だけでなく暴風も覚悟していたのだが、風がないというだけで、サイクリングもキャンプも難易度がぐっと下がる。

キャンプ飯の定番は、ラーメン。

クマやシカが駆除される一方で、キタキツネは害獣指定はされてないのかな。
人間のつくりだした環境によって駆除されたり保護されたり、動物も大変だな。

オロロンライン。

強風地帯。
2001年に日本一周した時のここはすさまじい追い風で、ほとんどこがず座っているだけで北上しきった。
今回も、そこまで強風ではないが幸いの追い風。

最果てへのクライマックス。
スッと伸びる一本道。
広大な大地と海。
やはり、国内走行ではここが一番の盛り上がりどころだ。

たまらんぜよサイクリング日和。

吹雪。
ホワイトアウトの一歩手前ぐらい。

そう都合良く除雪車が来てくれるわけではなく、みるみる積もっていく。
滑る滑らないではなく、埋もれていく。

交通量少ないとはいえ、時々車は通る。
背後からの追突が一番怖いので、やむをえず右側を通行。
遠くに対向車が見えてきたらすぐに止まって降りて、端に寄ってやりすごす。
これでとりあえず交通事故は避けられるだろう。

北の果ては、もうすぐそこだ。

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