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小学校の窓清掃

年明けから無休で72連勤、からの10連休。
久々に仕事じゃないことをやりに行く。

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フル装備の自転車は2年ぶり。

長野の山中へ。
よりによってこのタイミングで雨とは。

雨に濡れながらも順調なペースで進んでいたのだが、国道299号が通行止め。

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代替ルートの林道矢弓沢線で行こうとしたら、これまた通行止め。

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ゲートを突破して進んでみたのだが、工事で完全にふさがれており、断念。
やむをえず、来た道を少し戻って国道254号で大きく迂回することに。
1日半で着く予定が、もう1泊して2日半の行程になってしまった。

テントを張るのも2年ぶり。

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長野県佐久市にある大日向小学校に到着。
この小学校の窓ガラス清掃にやってきた。

時系列で説明すると、事の始まりは2013年にプロジェクト結主催による被災地のボランティアに参加したこと。
翌2014年、アイスランド走行中にプロジェクト結のリーダーである彰さん&綾さんもたまたま同時期にアイスランドを旅行していて再会。
そして昨年2021年の暮れ、仕事の出張で長野の山奥へ行き、たまたま立ち寄ったドーナツ屋さんがプロジェクト結のメンバーが経営するお店だった。
この近辺には、プロジェクト結で出会った知人が何人か住んでおり、近くにある小学校を見学させてもらった。
それがこの大日向小学校で、プロジェクト結のリーダーである中川綾さんを中心として2019年に設立された私立小学校。
綾さんは、「あたらしいしょうがっこうのつくりかた」という著書も出版している。
この4月から中学校も開校するそうだ。
廃校となった校舎がリフォームされておりまだ新しいのだが、まったく清掃されていない窓ガラスを見て、僭越ながら僕が窓ガラス清掃を名乗り出た、といういきさつである。

僕の職業は高所作業。
東京にいる時は主にビルのガラス清掃をしている、一応プロである。

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この2年間の自粛生活でたまりにたまったうっぷん。

・自転車でどこかに行きたい!
・キャンプしたい!
・仕事じゃない仕事をしたい!

この個人的な欲求が、「自転車で大日向小学校まで行ってキャンプ滞在しながら窓清掃をする!」と頭の中でバチッとつながった。

もちろん、お代はいただかない。
僕は世界中を旅して世界中の人からお世話になり、与えられてばかりで自分からは何も与えてこなかった。
アイスランドでお世話になったことも、何かお返ししなければとずっと引っかかっていた。
仕事じゃない仕事をしたい、というのはこういうことだ。

偶然のめぐり合わせで再びつながったこの縁、活かさないわけにはいかない。

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雪。

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長野は雪のイメージが強いが、この地域はそれほど降らないそうだ。
とはいえ長野、ここは標高860m。
東京では桜が開花したらしいが、この日は一日降り積もった。

体育館の裏でキャンプ。

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こういう自炊も2年ぶり。

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翌日は美しく晴れ上がった。

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朝、-9℃。
道具が凍ってしまった。

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この小学校、なんと「自転車サバイバル部」があるらしい。
6年生(すでに卒業して来春から中学生)の子が立ち上げたそうで、綾さんが僕と彼を引き合わせてくれた。
今は春休み中なのだが、わざわざ僕のところに会いに来てくれた。

どんな子なのかと興味津津で待っていたら、金髪の子がやって来た。
彼は不登校、というのかあまり学校に来ないらしいが、さわやかなルックスで言葉遣いもしっかりしており、「自転車が好きで、キャンプしながら旅してみたいんです」となんとも素直そうな子。
ルックスも中身も小学生とは思えず、高校生ぐらいの子と話しているような感覚だった。
お父さんの影響があるようだが、少なくとも僕はこの年頃にこんなことは考えていなかった。

彼に何を話すべきか。
実践的な知識以外のことは、僕は何も話さなかった。
自転車で旅をするというのは徹頭徹尾自由であるべきだから、周囲の人間があれこれ言うべきではないのだ。
彼は時々、大人と一緒にグループでツーリングに行くそうだ。
さすがにソロで長期の自転車旅をするにはまだ早すぎる。
いつの日か、自力で単独で旅をするようになったら、また彼に会って話をしてみたい。

ガラス清掃は、日の出から日没までフル稼働して、3日半かかった。

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学校のガラスをまるまる全部ひとりで清掃するというのは僕にとっても初めてのことで、かなりのボリュームであった。
この2年間の帰国生活で一番の「やった」感。

教職員の皆さんからも大好評で、一人一人からお礼を言われた。
お代はいただかないと言っておきながら、個人的なチップは何人かからいただいてしまった。

同じ窓清掃でも、ふだんの仕事は誰を相手に仕事しているのか、よくわからない。
ビルのオーナー? オフィスで働いている人?
もしかしたらどこかで誰かから感謝されているのかもしれないが、そんな実感はない。

今回は、顔のわかる人たちから直接的に返ってくるから、金のためではなく「喜ばれるための仕事」ができた。
この方が本気になれるということがわかった。
春休み中で生徒は来ていなかったが、自転車サバイバル部の彼からも「窓めっちゃきれいになってました!」と言ってもらえた。

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毎晩キャンプしていたわけではない。
教員の方のお宅に泊めてもらったり、ごちそうになったりして、楽しい時をすごした。

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手作り餃子パーティ。
お店の餃子よりはるかにおいしかった。

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スケジュールをタイトにしすぎてゆっくりとはできなかったが、教職員の方々との出会いも貴重だった。

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大日向小学校は、ふつうとは違うちょっと特殊な学校。
ここの先生たちも、いわゆる模範的な教師になろうとはしていない。
服装もカジュアルだし、言動も変に肩を張ったりしない。
子どもたちのことを何よりも第一に考えている。
この人たちは、いつも顔の見える相手と向き合って仕事してるんだな。

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別れ際に言われた、「またどこかで会いそうな気がする」という言葉が胸に刻まれた。

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無事ミッションを終え、2日かけての帰路。

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ナーバスでデプレッシブな都市生活から離れて、束の間のセルフリカバリーであった。

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