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冬季北海道サイクリング:稚内→釧路

日本最北端の街、稚内。

人口3万人。
この過酷な僻地で小村だったら心細いだろうけど、数万人で一緒に住めば安心感あるかもしれない。
しかしここも人口減少が著しく、過疎化の一途をたどっている。

稚内中心地より南稚内の方が商業的に栄えており、マクドナルドやすき家やダイソーもある。

ホステルに滞在。

サービス充実しすぎ。
何から何まできめ細かく至れり尽くせり。
これぞ日本のお家芸。

僕の他に数人の客がおり、ドミトリーだがそれぞれ個室になるようにうまいこと振り分けてくれた。

宗谷岬へ。

稚内と宗谷岬はワンセットのようなイメージだが、30kmほど離れている。

もう少し、あの先端が岬かな。

日本最北端、宗谷岬。

旅人たちがめざし集結する最果ての地。
ローシーズンとはいえ、少数ながらも記念撮影する人が絶えない。
ほとんど外国人だったけど。

これにひきかえ、本土最南端の佐多岬はなんと人気ないことか。
北半球だったら北の果てをめざし、南半球だったら南の果てをめざす方がロマンがあるのかもしれない。

↓2001年。

24年前にここに来た時は、たまたまちょうどペルセウス座流星群で、星の降りそそぐもと、宗谷の原っぱで寝た(当時はテントを持っておらずマットとシュラフだけで寝転がっていた)。

当時はフィルムカメラで、もちろんスマホは存在していなかった。
人類の長い歴史の中で24年なんてほんの一瞬だが、この一瞬でどれだけテクノロジーが飛躍したことか。
縄文人が1万年かけてどれだけ進化したのかを考えると、たまたま自分がこの爆発的進化の一瞬に生まれ落ちたことが奇妙にも思える。

でもこの岬は、変わってないな。

オホーツク海。

降ったり晴れたりの繰り返し。

北海道の面積は、アイルランド島とほぼ同じ。
スリランカよりは大きく、アイスランドよりは小さい。
人口は522万人。
都道府県では最も人口密度が低く、中でも道北から道東にかけては特に希薄。

とはいえここは過密なアジア、この小さな島に500万人もいれば、スーパーもコンビニも自販機もそこらにあり、水と食料を切らす心配はない。
どんな田舎でも、コンビニのクオリティは全国均質、すごいことだ。

日本特有の、ルール至上主義で神経質、常に監視されているかのような息苦しさを感じていた時期もあったけど、今はむしろ、テントを張っても誰にも咎められないし(咎められないような場所を選んではいる)、その寛大さゆえにうまく旅ができていることをありがたく思っている。

ああ、美しい。

オホーツク海沿岸は国道にしては交通量少ない。
フラット。
圧雪。
そして追い風。
パーフェクト。

ああ、冬の北海道。

今さらだが、自分の国を旅するって、ほんっと楽チン。
ビザとか滞在期限とかないし、言葉通じるし、常識やマナーを容易に共有できる。
しかもここは、世界でもトップクラスの超絶優秀な、よくできた国。

旅はイージーになるほど刺激が失われるものだが、111ヶ国を見てきたこの目で改めてこの国を見つめると、他国にはないユニークさに目を奪われる。

晴れたり降ったり。

歩いて旅しているカップルに遭遇。

11月末頃に出発、新千歳空港から海岸沿いを時計回りに、この冬まるまるかけて北海道を一周するそうだ。
これは壮大。
自転車のスピードなら食料や物資の補給には困らないが、徒歩は次元が違う。
スピードが変われば見える世界も変わってくる。
これはリスペクト。
路上で立ち話しただけでお別れしてしまったが、御縁があればいつかゆっくり話を聞かせてもらいたい。

サロマ湖。

海とつながった汽水湖。
日本最大の汽水湖。
湖としては、琵琶湖、霞ヶ浦に次ぐ3位の大きさ。

2本の虹が水面で接し、湖面に反射してX状に交差している。

原理的にありえなくないすか?
しかもそばにうっすらもう1本、計3本の虹。

網走の街はずれの宿。

あいにく、流氷の季節にはまだまだ早いようだ。
少し内陸へ。

時々、遠くからイヌが吠えてくる。
いつの頃からか、ほとんどの家庭でペットは屋内で飼うようになったようだが、田舎の農家なんかではまだ外で飼われている。

しかしさすがここは日本、外で飼われていてもしっかりつながれており、道路まで出てきて襲いかかってくるようなことはない。
イヌストレスから解放されるというだけでも、ここは安心してサイクリングできる国。

標高420m、阿寒湖。

凍結している。
氷上にテントを張って釣りをしている。
スノーモービルも走っている。
マリモは見えない。

Warmshowers泊。
日本で利用するのは初。

ホストは日本人女性で、サイクリストではなくハイカー。
アメリカ西海岸の山岳をメキシコ国境からカナダ国境まで3ヶ月かけて単独で歩いたこともあるという、見た目の印象からは想像つかないバイタリティの持ち主。
自分が旅するのも好きだし、旅人をもてなすのも好きで、今はゲストハウスを立ち上げることを目標にしているそうだ。
なんとも誠実そうで邪気を感じさせない、それでいて強い芯がある、そんな人柄。
ふつうに生活していてもこういう人にはなかなかお目にかかれない、Warmshowersならではの出会い、日本でも試してみて良かった。
食事も朝夕つくってくれて、おいしくいただいた。

標高355m、摩周湖。

見えんっ!

バイカル湖に次ぐ世界2位の透明度。
流入河川も流出河川もない閉鎖湖。
水深の浅いサロマ湖や阿寒湖と比べてやや深いため、凍りにくい。
切り立った崖に囲まれており、湖面まで降りることはできない。
3つの展望台があるが、冬季にアクセスできるのは第1展望台のみ。

札弦(さっつる)という小さな街のライダーハウス。

事前にオーナーに電話する。
1000円。

ストーブ故障。
僕はそれでもかまいませんということで泊めさせてもらった。
暖房費引いて500円にしてくれよと思ったが、しっかり1000円とられた。

外は氷点下、室内は暖房なしでも2℃ある。
水が凍る心配をしなくてすむ。

ライダーハウスから700mほどにある道の駅で、食事、風呂、トイレなどを利用できる。

知床を越えるのを楽しみにしていたのだが、知床峠は冬季閉鎖ということを直前になって知った。
やむなく、半島の付け根を突っ切るルートで。

再びオホーツク海。
超追い風。

根室。

 よく晴れて、海の向こうにかすかに国後島らしき陸地が見える。

巨大な湾のような形状をしたオホーツク海には、大陸弾道ミサイルを搭載した原子力潜水艦がひそんでいる。
北方四島を含む千島列島は、このオホーツク海を囲う防波堤であり、ロシアにとって重要な軍事拠点となっている。

北方領土返還とは、その防波堤に風穴を開けるかのように、アメリカの同盟国である日本にみすみす明け渡すというもの。
ロシアとしては、ハナから返還する気などあるわけがない。

日本としては、戦時下におけるソ連軍による不法占拠ということで、立場上は今後も返還を要求しなければならないのかもしれない。しかし北方領土返還はもはや外交カードにすらならないほど、現実味を欠いた空論となっている。

氷上で羽を休めるオオワシ。

日本最大のワシ。

西高東低で北西から吹き付ける風は、日本海の水分をたっぷり吸い上げてから山にぶつかり、西側で膨大な雪を降らせ、山を越えた東側では水分を失って空っ風となる。

北海道も東側は、信じがたいほど雪が少ない。
路面は乾き、スパイクがアスファルトを無意味にバチバチと弾く。

おまけに、気温上昇。
1月の道東で日中2℃?

暑くてやってらんねえ。
汗かきすぎて服が濡れる。

雪ないので森で寝る。

夜。
シカが僕の存在に気づいて、怖がって甲高い声を上げて鳴き続けた。

星は満天キラキラ。

朝。
-8℃ぐらいまで下がってくれた。
まだまだ冬を楽しませておくれ。

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