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西サハラ、存在しているのに存在しないことになっている空白地帯

モロッコの南方、西サハラへ。

本州+九州ほどの面積で、ほぼ全土が砂漠。
独立を主張するサハラ・アラブ民主共和国が東側の3割を実効支配。
西側の7割をモロッコが実効支配。
そのいずれも国際法上は不法占拠とみなされ、国として認められていない。
ここは国が存在しない空白地帯、「西サハラ地域」と呼ばれる。

東側のサハラ・アラブ民主共和国は、サハラ砂漠の中で幹線道路もなく、行ったことがあるという人に出会ったこともない、どんなところなのかまったく謎。
通常のサハラ縦断ルートが通過するのは西側のモロッコ実効支配エリアのみ。
大西洋沿岸で幹線道路もあり、漁港もある。

モロッコの主張によるとここは自国領土なので、この「国境」にはイミグレーションもなければパスポートチェックもなく、フリーパス。

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「西サハラは我が領土」とでも書いてあるのかな。

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「首都」ラーユーン。

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昨日までの荒野がウソのような、真新しい小ぎれいな街。
噴水があり、高級ホテルがあり、スーパーもある。
中国によるチベットやウイグルへの手口と同じで、モロッコも西サハラに金をつぎ込んで発展させ、既成事実をつくって後戻りできないようにしているのだろう。

実質、ここは今までのモロッコと変わりない。
通貨はモロッコのディルハムだし、SIMもモロッコのものがそのまま使える。

街を歩いていると、広場のベンチに座っていた二人の女子学生から声をかけられた。
「ニイハオー、ジャッキー・チェン、キャー!」
なんとも可愛らしい、といっても目しか出していないのでどんな顔なのかもわからないが、キャーキャー騒ぎたい年頃というのは全世界の女性に共通のようだ。
イスラム圏でもまれにこういうノリの女の子に遭遇する。

一緒に写真を撮りたいと言うので、彼女たちのスマホで撮った。
僕に体をピッタリ寄せ、手を握られた。
周囲のおじさんたちがすっごいガン見してきた。
「じゃあ、僕のカメラでも。」
と言ったらとたんに、
「NO!」
「なんで? 今撮ったのと同じようなのを僕のカメラで撮りたいだけだよ。」
理由を聞きたかったが、彼女たちの英語はごくベーシックで、そこまで話せないようだった。
怒らせてしまったわけではなくケラケラ笑っていたけど、結局最後まで撮影は断固として拒否された。
仲良くなれば撮らせてもらえると思ってたんだけどな。
もうけっこう長いことイスラム圏を旅してきたけど、一体どんな理屈が彼女たちをそうさせるのか、ちゃんと説明してくれた人はまだいない。

街を出ると、いよいよ砂世界。

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世界最大の砂漠、サハラ砂漠。
「荒野」を意味するアラビア語が語源。
総面積はアフリカ大陸の3分の1を占め、アメリカ合衆国の面積に相当する(スーダンやエジプトの砂漠も広義のサハラ砂漠に含まれる)。
そのうち、一般的にイメージされるような一面の砂世界は一部にすぎず、大部分は礫砂漠や岩石砂漠。

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道路が砂没しないよう、砂かき。

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意外に植物が生えているサハラ砂漠。
はちきれんばかりに水分をたっぷり含んだプニプニの植物。

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花も咲く。

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サハラ砂漠のプニプニ化が深刻だ。

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このプニプニ、踏むと大量の水がドバッと噴き出る。
自転車のタイヤも濡れて、そこに砂が付着してみるみる泥まみれになる。

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検問にうんざりする。
街の手前やジャンクションはもちろん、特に何もないところにも検問があり、必ず止められる。
パスポートを見せて1~2分待つだけなのだが、自分の意志に反してペダルを止めるのは気分良くない。
でも、警察や軍の人が良すぎて怒れない。
「Welcome to Morocco! This is your country!」
こんなセリフ、なかなか出てくるもんじゃない。
(てゆーかここモロッコじゃないだろ)
水は足りてるか、とか心配してくれる。
モロッコ人の人柄がよく表れている。

サハラウィ(西サハラ人)のテントに招かれた。

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サハラウィは、モロッコ人とは異なる西サハラの遊牧民族。
同じアラブ人なので僕には見分けがつかない。

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一体ここで何をしているのか。
どうやって生活しているのか。
モロッコ人のことをどう思っているのか。
疑問は尽きないが、言葉の壁で何も聞けない。
ただ、日本人だと答えるといいリアクションをしてくれる。

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ラクダのミルク。

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強い酸味と臭味、いかにも手作りな感じ。
クセの強いヨーグルトみたい。

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西サハラの街はどこも新しい。
モロッコで見た迷路のような旧市街はどこにもなく、歴史を感じさせない。

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こんな僻地でこんなきれいな街。
電気も水道も当たり前に通ってるってすごいことだな。

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歩いているだけで声をかけられることも多い。
日本人だと答えると歓迎してくれる。
「Do you like Morocco?」
あー、モロッコって言っちゃったよ。
国際上どうであろうが、かれらにとってはここはモロッコ。
そして外国人が自分の国をどう思っているのかを気にするのは万国共通。

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街を離れると、また砂。

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旅は心意気ひとつ。
生身で突っ切ってみるサハラ砂漠。

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遠い異国の領土問題。
でも、経済的つながりでいえば日本も無縁ではない。
日本が輸入しているタコの7割以上がモロッコやモーリタニアで水揚げされたものだ。
パッケージに「モロッコ産」と書かれていても、実は西サハラ産だったりする。
ちなみに、現地の人はタコは気持ち悪がって食べない。

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