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研究方法の検討-その2-

はじめに

新しい研究を始める際、どの研究方法を選ぶべきかを考えるのは、研究の基盤を作るうえで非常に重要なプロセスです。特に、今回取り組む予定の研究テーマは、子どもたちの主体性や創造性を育むプログラムに関するものであり、現場の実践から得られるデータをどのように収集し、分析するかが成果を左右します。

現在、いくつかの研究方法を検討中です。今回はその中でも、M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)エスノグラフィー(民族誌的研究)という2つの方法について整理し、それぞれの特徴や可能性を考えています。


研究テーマと課題

研究では、幼児期における「主体性」や「創造性」がどのように発揮されるかを探ることを目指しています。特定のプログラムを通じて、子どもたちが遊びや活動を通じて何を学び、どのように成長するのかを明らかにすることが大きなテーマです。

このテーマに対し、以下の課題を抱えています:

  • 子どもたちの行動をどう記録し、どの視点から分析するか?

  • 保育者や保護者の視点をどのようにデータ化するか?

  • 実践の価値を現場に還元できる成果としてどう整理するか?

これらの課題に取り組むために、どの研究方法が最適なのかを慎重に検討しています。


検討中の研究方法

1. M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)

M-GTAは、質的データをもとに理論を構築する手法です。具体的な行動や発言から「概念」を抽出し、それらを統合して実践的なモデルや理論を形成します。

この方法の強み

  • データに基づいて具体的なプロセスモデルを作成できる。

    • 例: 「子どもが主体性を発揮するための行動パターン」や「保育者の関与の最適なタイミング」。

  • 実践的な指針や成果を導きやすく、現場への応用が期待できる。

  • 観察やインタビューなどで得られるデータを、効率的に整理・分析できる。

課題

  • 分析にあたって、観察記録やインタビュー内容から「概念化」を行うための時間とスキルが必要。

  • データの収集範囲が明確でないと、重要な情報が抜け落ちる可能性がある。


2. エスノグラフィー(民族誌的研究)

エスノグラフィーは、研究者自身が現場に長期間入り込み、現場の文化や文脈、関係性を深く理解し記述する手法です。

この方法の強み

  • 現場全体の文脈を包括的に記録し、実践の背景や複雑な関係性を浮き彫りにできる。

  • 新しい視点や予期しない発見が得られる可能性が高い。

  • 長期的な関与を通じて、子どもや保育者との信頼関係を構築しながらデータ収集ができる。

課題

  • データ量が膨大になるため、分析に時間がかかる。

  • 現場での参与に多くの時間とリソースが必要。

  • 得られる成果が具体的な指針ではなく、包括的な記述にとどまる可能性がある。


どちらを選ぶべきか?

研究の目的に照らし合わせた比較

  1. M-GTAを選ぶ場合

  • 目的: 実践現場で活用できる具体的な指針やモデルを作成する。

  • 適用範囲: データが明確に整理されており、分析の焦点が絞られている場合に有効。

  • 研究成果: 子どもの行動プロセスや保育者の支援方法を理論的に明示できる。

  1. エスノグラフィーを選ぶ場合

  • 目的: プログラムが現場にどう受け入れられ、影響を与えるかを包括的に理解する。

  • 適用範囲: 現場全体の文脈を記録し、幅広い知見を得たい場合に適している。

  • 研究成果: 現場の文化や背景を詳細に記述し、新たな課題や視点を提示できる。

現時点での検討結果

現段階では、M-GTAを中心に据えつつ、必要に応じてエスノグラフィーの要素を取り入れることが有効ではないかと考えています。具体的には、M-GTAで行動や発言のプロセスをモデル化しつつ、エスノグラフィーを補完的に用いて背景や文脈を理解する形を検討中です。


次のステップ

研究方法の選択においては、以下のポイントを引き続き検討します:

  • 予備調査の実施
     まずは短期間で予備調査を行い、M-GTAやエスノグラフィーの適用可能性を検証します。

  • データ収集方法の試行
     観察記録やインタビューの仕方を工夫し、どちらの手法にも対応できる基盤を作ります。

  • 研究計画の微調整
     予備調査の結果を基に、最終的な研究方法を決定します。


おわりに

研究方法の検討は、研究そのものの方向性を決める非常に重要なプロセスです。今回はM-GTAとエスノグラフィーのどちらを選ぶべきかを考えながら、研究テーマや目的に最適な方法を模索しています。

研究はまだ準備段階ですが、予備調査を通じて少しずつ計画を形にしていきたいと思います。この過程が、最終的に実りある成果へとつながることを目指しています。

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