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ぬいぐるみを投げている

「計測の結果、左手の筋肉のほうが大きいですね。左利きですか?」
「いいえ、右利きだと思います」
「お仕事とかトレーニングとか、なにか心当たりありますか?」
「特にないですね。あっ」
「おっ、なにかありましたか」
「ぬいぐるみを投げたりしています」
「ぬいぐるみを、投げたり」
「はい。ぬいぐるみを、投げたり」
「では、相当投げられている」
「恥ずかしながら、一度に二、三時間ほど」
「それは、フォームにもよりますが相当ですね」

通い始めたジムにて トレーナーとの会話

ぬいぐるみを投げている
まんまるく ふかふかで 小ぶりなスイカくらいの大きさのぬいぐるみ 

そんなぬいぐるみを投げている 

最近 日曜日のルーティンとして ぬいぐるみを投げている写真や動画を投稿している 実際は別の曜日も投げている 頻繁に投げている

日曜日に限って投稿しているのは単なる好みでしかない
意味も意義もなにもない 飽きればやめる 飽きてないから続けている
個人的な習慣が儀式めいていく過程を ただ晒しているだけのこと

真上に放り投げたものは そう遠からず落ちてくる 
上昇と下降 浮上と潜水 飛翔と落下 単純な軌道の動きが好きっぽい
予測可能性の高い動きを愛している 偶然性を愛するのと同じ程度に

ふと振りかえってみると ただ呼吸をひとつするだけのことにも垂直方向のイメージを持っていることに気づく 息を吸うのは上昇で 吐くのは下降
わかる? わかんなくても別にいいよ わかられたいとも思ってない

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