おもちつめ放題 袋やぶき泣き放題
四月が始まって 四月一日でわたぬきって読むらしいなとか思い出した
思いがけない想像力とかではなく ひどく単調な反応だけで生きている
わたぬきって名字でまっさきに思い出したのは妖狐×僕SSだった
けどそっちは渡狸だった ほらもう違うじゃんね 反省しなさい はい
よく考えたらこっちだな 響きだけで生きてるから記憶がこうなる
四月一日 嘘をつくでもなく桜を見に出かけた
行き先は山梨県は実相寺 山高神代桜とのこと
八十五になる祖母のたっての希望で 出かけた
寒い日が続くので桜は咲いていないかなと思っていた ぜんぜん咲いてた
前の日がめちゃあったたかかったからかもしれない というかほぼそう
ガイドさんも道中
「寒いですからねぇ……咲いてないかもですけどねぇ……咲いてたらいいですねぇ……ほんとにねぇ……」とお昼のほうとうくらい太い予防線をはっていた
ちなみにお昼ごはんで出たほうとうは大嫌いなしいたけがいっぱい入ってた
だから撮ってない しいたけとこの身は同じ天を戴かない
ガイドさんは実相寺が近づくにつれ増えていく緑の中の桜色に
「咲いてますよぉ、これぇ! 絶対咲いてますぅ!」
といちばんテンション上がってた よかったね 本当によかったよ
バスツアーに参加するのはそこにいない変わり者の話が好きな人たちだから
全方位から知らない家族の知らない親戚の陰口が聞こえておかしくなりそう
知らない家の知らない親戚のその人 むしろ好きよぉと思った
遠くはなれたものや過ぎ去ったものにばかり こころひかれる
もしその人に会えたならきっと すごく嫌われるか親友になる
なんか日本三大桜とか宇宙から帰ってきた桜とかいろんな桜があったけれどいわれのある桜よりも顔の近くで揺れていた桜とか お寺のなかの家の畑の向こうに咲いてた桜とか そういう名もない桜がすごくよかった
そのあとは 信玄餅工場で信玄餅のつめ放題へ
信玄餅という名称には歴史的な確執があるらしいけれど ほぼ聞き逃した
山梨のツアーはとりあえず信玄餅工場に連れていけばいいと思っている
そしてそれは実際正しい
信玄餅 つめ放題 コツ などと調べれば無限にコツが出てくる
ざっと見たところ袋を限界まで伸ばして縦に詰めるのが定石らしく
12個は余裕 16はまぁまぁ 20個ならすごいですよ的な感じだったので
「まぁ20は無理でも16くらいは余裕ですわな……」と自信満々で挑んだ
結果:惨敗
5回くらい袋をやぶき
「大丈夫ですよ~なん↑かい↓でも挑戦してくださいね~♪」
とやたらと声のハリと愛想のいい 明らかにツアー客の相手を生業としているお姉さんに応援されているうち 他のツアー客はどんどん出ていって置いてけぼりになった 怒られるために残された放課後みたいで泣きそうだった
「最初は8個から挑戦してくださいね~」の8個を詰めるのも限界で
そこから袋を結ぶのすらうまくできなかった 頼んで結んでもらった
祖母は「8個もはいっちゃうなんてねぇ」とよろこんだ
20個だっていけるんだよ ほんとだよ 言えなかった
下手に知らないほうがいいこともある
知っていることとできることの間には はるかな距離があるから
帰りのバスで「いちばん多い方ですと12個も入ったらしいですよ~!」
とみんなはしゃいでいた すごいじゃん12個 ほんとうにすごいよ
このピカチュウが持っていた信玄餅は つめ放題で得たものです
みごとに8個しかはいってない とはいえそもそも16個でも多い
工場の人は「明日までに召し上がってくださいね~」と言っていた
いや明日までに8個食べないでしょと思ったけどみんな
「ま、余裕ですわな……」みたいな顔をしていた かっこよすぎる
またまたインターネットで調べたら冷凍しても味落ちないよと書いてあったのちのち解凍して食べてみたけどちょっと冷たいだけでほぼ変わらなかった
知らないほうがいいこともあるけれど 調べてみるのも大事
知っているだけで役に立つことも生きてるといっぱいあるから
ボツ写真も見せてあげます
信玄餅のいれものが最中になってる最新のやつ 一回も買えたことない
いれものがたべものになってるやつ大好きなので いつかは食べてみたい
これずっと好き
最中って毎回さいちゅうだと思っちゃう
さいちゅう ぴかちゅう おもっちゃう