【all of the time】手直し中
【透明の楽譜】【出逢い】
むかし、むかしある所に…
本国とを繋ぐ.海沿いを走る。
「今日」と云う名の列車がありました。
機械仕掛けの始発の扉が開く…
人は「今日」と云う名の列車に毎日、飛び乗る…
時計の針の動きの様に、上り…下っていく。
あまつさえ、右へ左へ
乗り物の速度はどんどん上がってゆくが…
この「今日」と云う名の列車の悪い所は、下りのホームと線路に列車は帰ってこない…
線路もホームもあるのに、その列車と乗客を私は見た事が無い…
上りのホームから見える一番近い踏切が降りるのが見えた…
「今日」と云う名の電車が「今」を通りずぎてゆく。
家族には内緒でライターのアルバイトを始めて、半年が過ぎていた。
先天性の脳の病気で、記憶した事を忘れてしまう。
幾つか、病院を渡り歩いたが、何も改善するモノは見つからなかった…
幼いの頃からそうだったから、余り気にした事は正直ない…
それでも、楽しい記憶が消えてしまう事をわかる様になっだ時、無性に寂しかった事も忘れてしまう。
姉が社で新しく出した新製品の小箱を手渡してきた。
社【voice】コンタクトレンズ「ハード」
今度のヤツは過去にも未来にも遡れるらしい。
今、僕が使っているモノでも、とにかくいろんなモノにアクセス出来る…
銀行、学校、インフラ、あらゆるデータにアクセスすることができる。
動力が体内の電気信号と云うのだから、死ぬまで、使えると云う優れものだ…
ただ一週間に一度だけ全ての機能が停止する。
その日は全てがお休みになる…
学校も、銀行も、役所も。全てその機能が停止される。
そんな壊れない永久保証の優れもののおかげで、自分の病気を忘れる事が出来る…
全てが記憶される…
祖母のお父さんにから名前をもらって、僕で四代目になるらしい…日向、男の子でも女の子でも大丈夫な様にと云う意味でそうつけたと母から聞いた。
そんな母はもちろん三代目なのだが…
当時の法律上、同じ名前を継承する事は禁止されていたそうだが、200年も経つと法律もそれなりに変わってゆく。
透明な楽譜と云う物語を書いていたそうだ…
指の感触がわからなくなる時計屋さんの話だったり。
匂いのわからなくなる花屋さんの恋の話だったり。
色がわからなくなる絵描きさんの落書きの様な物語だったり。
音がわからなくなる。指揮者さんの旅の話だったり…
味がわからなくなるコックさん四コマ漫画の様な紙芝居だったり。
とても遠くまで言葉を届ける紙芝居屋さんの話だったり。
この世のいろんな音を貝の中に閉じ込めた魔法使いのお話だったり。
とにかく、変わり者で、カバン一つで何ヶ月も家を開ける…そんな生活スタイルを亡くなるまで変えなかったそうだ。
ある日、家の書庫…母の部屋といってもいいのだけど、個人でコレだけ古い本を所有している家もなかなか無いと思う。
彼女は俗に云う…オタクなのだ…
それもかなりの…
そんな、母の書斎兼書庫の整理を姉としていた時の事だ。
一つのアクリルのケースが目についた。
部屋の雰囲気とは少し異なるformeのその箱は…
ケースの表面に手書きで【TOY BOX】と書かれててある。
僕達は自然と眼が合う…
「なんだろうね?」
「うん」
僕達は…少し奇妙な興味が湧き。
キッチンでいつもの椅子に腰を掛けて、食事の支度をする母を訪ねた…
この人の悪い所は手が抜けない所だと思う。
単純にもっと簡単にしてもイイのじゃあないかと思うぐらい食べる事に手間をかける。
いつだったか、この母の椅子が我が家には来た日に、父が言ったセリフのまま…この椅子は母のお気に入りになっていた。
購入した父の姿はほとんど家には無い…
この人もオタクなのだ…
カバン一つで何ヶ月も家を開ける…
幼い頃、父の仕事が何なのかわからない僕に母が…
まぁ年に決まった日にしかいない…そんな人だ。
詳しい事は家族にも話さない人で、母だけは知っている様だか母も何も教えてはくれない…
なんでも血液検査機関に所属しているのだと云う事を入校手続きの時に【Voice】越しに母とやりとりしているのを聴くて初めて知った…
母の冗談が子供の刻は何故か本当の様に聴こえた…
余りに家に寄り付かない父の事を…
「パパは泥棒なのよ」と僕達を驚かせて笑って見せた…
その話をいつかのクリスマスに帰宅した父に姉ふんが話した時のバツの悪そうな父の表情はなかなか真似できるモノでも無いが…
余り、何かの記録に残る様な事がきっと苦手なのだろう…
映像やフォトの類は殆どない…
そんな事を考えていると、母が話しかけてくる。
「あなた達のフォトがその分たくさんあるのはきっとそう云う事なんじゃあない」
僕には少し意味がわからなかったが、きっと母にとって、父の記録もフォトも無い事が嫌な事でないのだろうと思った…
もしかしたら母の【Voice】の中には僕達には入れないファイルがあるのかもしれないと思ったけど、何も言い返さないでいた。
【Voice】を僕の様に24時間使用している者は残留思念がshareする者のダイレクトに伝わることをメーカーのサプライヤーのメンテナンスサービスの人に教えてもらった…だから大小はあるが気持ちが揺れている時は、家に居る時は極力、僕も外している。
【voice】の普及で物凄くいろんなモノがコンパクトになったと母は云う、何でも作った人が、奥さんとの言葉遊びをヒントに作られたのだと、母が楽しそうに話していた事を思い出した。
湧き、姉と一緒に母の元に向かう。
母はそれが何なのかわからないと云う。でも、お母さんならわかるかもねと云うと、キッチンに行ってしまう。
母は無類の珈琲好きで、時々、気分の良い時は僕達の分も用意してくれる。
キッチンから、いつもの珈琲の香りが流れてきた…
「hinata達は飲むの?」
僕は母がこの箱の事を知っているのだと思った。
でも、おばあちゃんなら知っていると云うのだからそう云う事にしておこう…
箱の中身をテーブルに並べてみる。
手帳、CD、銀の?あと封筒…
誰のモノかわからないから安易に開けれないよねぇと3人でテーブルを囲む…
母が祖母に手紙で尋ねて見ればイイと切り出す…
我が家の倉庫にあるのだから、家の誰かのモノなのだろうから。
僕は余り慣れていない手紙を書く事になる。
コレだけ文明が進んでいるのだが人は特にうちの祖母は機械が苦手なのだ…
だから、母はいつもそんな母の為に手紙を書いて出す…
それでも、周期はだいぶ長くなったのだと教えてくれた。
どれだけいろんなモノが便利になっても、文字を書く事と読むことを忘れてはいけないと母は教わったそうだ。
口数の少ない母と、人の話を余り聞かない姉と、ど近眼で重度の記憶障害の僕の手紙作りが始まった。
私達は母の希望だけで【Voice】が無ければとても過ごしやすいとは言えないであろう小さな島に住んで居る。
島の人はとても優しくて親切だ…
何より眺めだけは、どこの空よりも美しいのだろう…
僕がまだモノ心つく前に国を父と母は僕達を連れて出た…
だから、僕はこの空と海しか知らない…
島には丘の上に教会とあとは観光地が40%しかも景色の良い所を外のモノが買い広げた…
残りの60%は畑と民家割合は当然畑の方が広い…
食べ物は意外と豊富でいろんなモノがあるが、宗教的な干渉が古い人は持っている為か、少しハードルの高いristoranteだと出せないモノもあるそうだ。
それを考えると祖母の営む食堂は自由でイイなぁと思ってしまう。
母には姉がいてその人とは時々【Voice】越しで会話や映像をshareする事がある。
その中には祖母の作る食堂のメニューもある…工程もあるからたぶん見よう見まねでたぶん作れる気がする。
そんな事を部屋ベランダから見える海に浮かぶ、大型通販会社の輸送船とゆっくり沈んでゆく夕日を眺めながら考えていた…きっとあの船が三人で考えた手紙を届けてくれるのだと。
来年、high school studentになる。
ゴーストライターのアルバイトはどうしても欲しいモノを買う為の手段だ。
アイディアが買って貰えると金貨が1枚貰える。
あと、何個集めるとたどり着くのだろうか?
そんな事を考えながら床につく毎日なのだ…
手紙を出してから、1週間後に返事は【Voice】越しに帰ってきた…
母のお姉さんからだった。
詳しい話は手紙に祖母が書いている…
ただ、手紙が届くまでは開けない方が良いという事を先に伝えたかった様だった…
手紙📧が届くまで待ってみる事にする事にした…
でも、不思議と母はお姉さんの話をすんなり受け入れた様だった…
僕にはそんな風に見えた…
少し、ドキドキしながら手紙を待つ事、1週間…
宛名が僕宛てになっていた。
少し、不思議に思ったが…母に伝えると。
あなた宛てに来たのだから、あなたが開けたい時に開ければいいんじゃないと云って、キッチンに姿を消す…
僕は季節の変わり目に、いつも風邪を引く…
少し熱っぽくて、そのまま自室に行こうと思うと、母が暖かいミルクを淹れてくれていた。
「ありがとう」
僕はマグカップと祖母からの手紙を持って自室に向かう。
テーブルに手紙とマグカップを置くと、熱っぽい身体を休める事をするか手紙を詠む事にするか少し悩んだ…
熱は大抵、夜に上がる…
何より…
几帳面と人柄のよく出ている…
少し小さな見覚えのある字がやっぱり気になって…
封を解く事した…
祖母の丁寧な文字は確かに僕宛ての様な書き出しであった…
言葉の言い回しが独特な人なので一度聴くとなかなか忘れないタイプの人なのだけど…
季節が動く事を喜び。
世の中の変化に怒りを感じて
過ぎてゆく時間に何か物悲しさを感じている様な。
季節が一周すると、また暖かくなります。
そんなモノ言いをする人だ。
追伸で、まるで含み笑いを浮かべている様な言葉を…一枚の栞と一緒に残してくれていた。
それは、まるで一枚の羽根の様に思えた…
肝心な箱の事に少しだけしか書かれていない。
やはり、曾祖父の持ち物である事が記されている。
あと、銀の金属は時計なのだと、書いてある…ボタンを押すと文字盤が出てくるのだとか。コレはもっと古いお爺さんの持ち物らしく…必要だと思えば、使えば良いと書いてあった。
あと、手帳は日記なのだと、それから、手紙は誰があけても良いと書いてあった…
余り答えとは言えない、答えを貰って、少し戸惑っていると。
母が様子を見に訪れる。
母の凄い所一つである…
体調を【Voice】無しでも、いい当てる。
今、まさにそれが出るのだろう…
女性の瞳は男性のモノより認識できる色覚数が多いからと云うのもあるが、女性の勘と云うモノは、なかなか的確な所を突いてくる。
氷の入った水枕をタオルで包んで、高さを考えて入れてくれた。
水仕事をしたばかりの手はとても冷たいくておでこと首元の熱を少しだけ和らげてくれた。
机の上に置かれた【TOY BOX】をとても懐かしいモノを観る眼で、母は箱の中から封筒と銀時計を取り出した…
「なんて書いてあった?」
まるで回答を知ってるかの様なぁ口振りで、僕の瞳の中に入ってくる。
僕は少し迷ったけど…きっと祖母は母がこの便りを読む事を前提として、細かい内容は含み笑いの様に書いだのだと思った…
母は銀時計の蓋?
意識で【Voice】に問いかける
銀時計?標準を時計に合わせる…
【Voice】がScanを開始する…
名称∞社「懐中時計」1900年ぐらい製造…
serial number:
reference numberを検索中
Downloading
Downloading
Download completed
?ファイル名【all of the time】…
パスワードを入力してください…
管理者権限でロックされている様だ…
思いつく方法でヒントにたどり着く様に…
【Voice】に問いかける。
回答は「不明404」とはぐらかされる。
瞬きを5回ぐらいする時間の中で…
母が「何かみえた?」と優しく問いかけてきた…
僕は何も言わずに首を横に振る…
母の【Voice】は、父モノで、家族全員の全てに、同期出来る用にプログラムされている…だからその質問自体が母の優しさなのだ、それから母は用事がある時、以外は【voice】をほとんどつけていない事を姉が教えてくれた。
情報過多と依存性の問題はいつもバージョンが変わる都度で問題視されているが、多くの人はそちら方が楽なのでそちらに偏る…
「コレは逃げて、行かないから今日は休みなさい。」と
薬箱と引き替えに箱ごと持って、僕の部屋を後にする。
机の上にには手帳?日記とあったが、と祖母からの手紙と栞だけが残されていた。
風邪薬がとてもよく効いているのだろうか?
とても眠くなってきてその日は眠ってしまった…
翌朝…
早めの風邪薬と養生が良かったのか熱は下がっていた。
ふと、なんの気無しにテーブルに眼が行く…
母が持ち出した箱がそこに戻されていた…
朝の忙しい時間の中、僕は朝がとても苦手でなかなか上手に覚醒出来ない…
ベッドの中でしばらく起きれないでいると…
聴き慣れない規則正しい音が聴こえてくる。
いつもと何も変わりはないはず…
母がきっと、キッチンで朝食を作っている音も聞こえる。
カーテンが丁度少し空いていて光が差し込んで眼が眩む…
音の元がどこからなのかわからないそんな事を考えていると…
ガチャ…
姉がノックも無しに入ってきた…
「あ、さ、だ、ょ。」
この人のこの悪気のない無差別な元気が時々困る事もあるがとても頼もしい人でもある。
父に似たのか、僕よりも背が高くて、スポーツが好きで得意なのもあってきっと体力も僕よりずっとある。
こんな事を云うと僕が貧弱な子の様になってしまうけど。
貧弱ではないが、気は姉より遥かに弱い…
「お母さんがご飯だょて食べれそうならおいでて」
姉はそれだけ云うとすぐに部屋を後にした…
僕はさっきから気になる規則正しい音のする方に耳がゆく…
あの箱だ…
確かこのボッチを押すと、あ!開いた。
【Voice】越しに見ると、時間は正常に動いていた。
僕は例え様の無い親しみが湧き、制服のポケットにしまった…
やっぱり…朝食のお決まりのパターン
父はいない…まぁ年に決まった日にしかいない…そんな人だ。
詳しい事は家族にも話さない人で、母だけは知っている様だか母も何も教えてはくれない…
なんでも血液検査機関に所属しているのだと云う事を入校手続きの時に【Voice】越しに母とやりとりしているのを聴くて初めて知った…
子供の頃に母がきっと冗談だったのだろうけど…
余りに家に寄り付かない父の事を…
「パパは泥棒なのよ」と僕達を驚かせて笑って見せた…
その話をいつかのクリスマスに帰宅した父に姉が話した時のバツの悪そうな父の表情はなかなか真似できるモノでも無いが…
余り、何かの記録に残る様な事がきっと苦手なのだろう…
映像やフォトの類は殆どない…
そんな事を考えていると、母が話しかけてくる。
「あなた達のフォトがその分たくさんあるのはきっとそう云う事なんじゃあない」
僕には少し意味がわからなかったが、きっと母にとって、父の記録もフォトも無い事が嫌な事でないのだろうと思った…
もしかしたら母の【Voice】の中には僕達には入れないファイルがあるのかもしれないと思ったけど、何も言い返さないでいた。
【Voice】を僕の様に24時間使用している者は残留思念がshareする者のダイレクトに伝わることをメーカーのサプライヤーのメンテナンスサービスの人に教えてもらった…だから大小はあるが気持ちが揺れている時は、家に居る時は極力、僕も外している。
朝食を済ませて…皆各々やる事に向かって動き出す。
母は食事だけは自分で必ず作る人だ…
後片付けだけは機械がやってくれるが、それでも必ず、自分でもう一度洗う…
本人は台所での所作が好きなのだと云う…
潔癖なのとも少し違って台所が好きなのだといつかゆっていた。だから自分で一通りやるのだと。
「忘れ物はない?」
「無いよ」
「運動靴忘れた…」
姉はいつも靴を忘れる…玄関のモノなので、まぁここで云う忘れ物は靴を入れるジューズバッグの事なのだが。
僕は持ち物といっても、お弁当と水筒ぐらいなので忘れようにも忘れるはずもない…母がSwitchを入れ忘れなければ…時々、母もやり忘れる事がある…そんな時は学校の食堂があるはあるので…食べる事にも飲む事にも不十分はないのだけど。
問題も無い訳では無い…
通い慣れた道を歩いて行く、姉は部活で帰りが遅くなるから自転車を使う…もっと、楽な乗り物もあるのだが、コレがイイのだと云う…島には一つしか学校は無いのだけど。
幼稚園から大学院までまでまるで長い線路の様な学校だ!
といっても島の子供は皆ここを必ず通る…
どこまでやるかは本人次第だが。
島の全ての建物と比べて学校と病院だけは、何故か近代的なのがこの島の七不思議の二つなのだが。残りの五つはそのうち出てくる。
あと街灯がユニークな作りをしている人が通ると明るくなる仕組みでこれだと迷子には僕以外の人はたぶんならない。
僕の記憶障害はかなりめんどくさい…
姉は行きだけ付き合ってくれる。
きっと友達と一緒がいい時もあったと思う。
それでも、いつも一緒に玄関を出た…
「今日は雨は降らない…」
【Voice】の特に優れている所は、天気予測はズレることがない…なんでも、ピンポン玉サイズの衛星の打ち上げに成功したとかで、雲の動きは秒単位で捉えているのだとかいっていた。
ただそれらのデータを観測して貯蔵することを人は置く場所を地下にするしたのだが、大きな地震の影響で半分を失う事になる。
【Voice】の計算は人の計算を超えていた。
自身でピンポン玉サイズに自分を造り、それを外に飛ばしたのだ。
人が創造したモノではあるのだろうけど、夜空を肉眼で観て、紅く光るモノは【Voice】なのだと父が教えてくれた。
実は僕が欲しいモノは…そう、天体観測セット。
新しいタイプのものだと【Voice】と接続して、相当遠い星を観る事が出来るらしい。"(⌯︎¤̴̶̷̀ω¤̴̶̷́)✧︎
しかし、かなりお高い、だから母にはナイショのバイトなのだ…
以前…【Voice】越しにメーカーのポータルを開けようとした時に母にたまたま見つかってしまった。
たぶん、あの時、母も【Voice】を使用していたのだろう。
別に特に何も触れられないのが母のいい所でもあるが。
なの時の困った者を見る表情がやっぱり少し苦手だ。
【金100万コイン】やっぱりハードルが高すぎるのだろうか?
いろいろ集めてみて【金1000コイン】まだまだ先は遠い…
姉が折りたたみの傘をカバンに仕舞う、この人は【Voice】を使用する習慣がまだ薄かったのだろう、何度か下校の際に雨に遭遇したのだと云う…
悪い事にこの人は自分カッパを友達に貸したのだと言って、ずぶ濡れで帰って来た。
でも、笑って「貸したら、濡れちった!」と云って翌日、熱を出して、学校を休んでいた…昨夜の僕の様に。
一部始終を休んだ日に僕に話してくれた…
通学路をどんなに急いでも、それなりの距離があるのに。この人は同じ悪い条件でも友人に良いモノを渡せる人なのだと、まだ僕は小さいかったけど、凄い人だと思っていた。そんな事を何度か見た僕は毎朝、必ず呪文の様に天気予測をする事になる。
「いってきます。」
「いってきます。」
「ちょっと、hinata、コレ、時間のある時、読んでみたら?」
あの箱の中の手紙だった…
咄嗟に姉と眼が合う…
なぜ姉ではなくて僕なのだろうと思った…
理由がわからなかった…
でも、母の表情からはなにも読み取れるモノはなく、黙ってそのまま受け取る事にした。
別に決めている訳では無いのだろうけど、母の日課もあって三人で表に出る…
季節の花が玄関から咲いているのが、母の唯一の趣味なのだと母の日記に書いてあった。
一度だけそのページを読んででしまった…
何かとてもいけない事をした気になって…翌日、母に謝った事が一瞬よぎったが、母の方が先に声をかけてきた。
「いってらっしゃい。」
母の言葉で我に帰る…
風の中で薄紫の花びらが綺麗に咲いていた…
【白と黒の楽譜】【挑戦】
約束の日でも無いのに、毎日、雨が降る…
自室にて…
テーブルに置かれて透明な箱、古びた分厚い手帳、パワーリザーブと云うらしいがネジを巻かないと止まるやたら古い銀時計、一枚の手紙、そして祖母から送られた手紙の中の羽の様な栞…
まるで、パズルゲームをテーブルに並べている様だった。
学校が終わったら、僕はこの頃は週の半分は真っ直ぐ帰って来ていた…理由はカンタンで進学と部活と委員会でだいたい半分は放課後を持っていかれる。
だから帰れる時は帰る。そう決めていた…
宿題はだいたい学校で済ませてくる。
何故か?わからない所を【Voice】無しで1人で考える事が物凄く時間の無駄な気がして、誰かを付き合わせる。
相手が誰でもいいのだけど、だいたい宿題を真面目にやるヤツは限られてくる。
食堂の前のパン売り場…
この日は季節柄か母が学校の食堂を使う事を勧めてきたので、僕は2種類のパンを選んだ、特別、手が込んでいる訳でも無いのだが、中がチョコかクリームかの問題で。
一見して混ぜると、どちらかわからない…
食堂のお姉さんは、紙袋の耳を片方折ってくれる。
その時の気分なのだろうけどやり方は変わらない。
今日は左にチョコ右にクリームまた別の日は反対…
ある時はそれも気分なのだろうけど、上下と云う時もあった…でも、必ず、この人はどちら何が入っていると教えてくれる…そんな人だ。
僕はミルクとパンと宿題を持って屋上へ…
しかし、雨が降っている…
仕方なしに屋上の入り口の周りに使っていない机達に腰をカケル。
トントントン…
「hinataさん今日は何ですか?」
この男の少し怖い所は足音がしない…少し怖い。
同級生なのに、何故かいつもさんつげで、人のモノを欲しがる…
決して嫌なヤツでも無いからいつも半分取られる。
パンの時は、だから二つ買うわけでもないのだけど、いつからかそんな関係になっていた。
男子なのだが、僕が思うに声の綺麗な人と云うと少し気持ち悪く聴こえるが、まぁ、綺麗な声の同級生だ。
あと、手も、とても綺麗な手をしている。
動物が好きで、ウサギを飼っているらしい…
この頃にやりたい事がハッキリ決まっている。3年生はだいたいこの二つ下のフロアの姉達がいるフロアに進学する。
余り、難しい話はしないが、時々、将来の事や好みのタイプとかを口元緩めて話す。仕草はとても素直なヤツなのだろうと思いながら、あいづちを入れる。
まだ、口をつけていなかったから、パンを半分にして渡したら、とても嬉しそうに食べるので…
もう一つもそうする事にした。
でも…
さすがにミルクは半分にできない…
少し、考えていると…
「あ!」👉
僕は咄嗟に振り向くと…
「いただき!」
「あのなぁ」
僕には生理的にできない事を、この男は出来る。
少し理解が出来ない所があるが。
「まぁ、いいゃやるよ。」
「ちょっと待ってて買ってくるよ。」
こいつとのこのやりとりは毎回と言ってパターンが変わる事も無いのだが、騙される…俺も悪い。
こいつは国語と英語が馬鹿なんじゃあないかと思えるぐらい得意でとにかくいろんな事を【Voice】を使わなくてもスイスイでてくる。
もう大学にいってから専攻していくモノもある程度、決まっているらしい、なんでもお父さんの影響もあって将来は学校の先生になるのだと、あまりに嬉しそうに話すので、きっとそうなるのだろうと、勝手に考え少し先の未来をイメージしていた。
僕が先生から何かを説明する。
内容レポートを宿題された時にあれこれ内容を作ってくれたのだが、先生は僕達のやりとりをよく知っている…
だから放課後二人して呼び出され…
「個別出しているテーマについては各々の答えを提出する様に仲が良い事は良い事だけどねぇ」と笑いながら怒られた。
実はこの先生、母の同級生なのだだからと云う理由でも、無いのだけど、ズルをすると、すぐにバレる。
口癖でいつも、僕は「あなたが悪いと」何故か怒られる。
よくよく考えると何故、いつも僕が悪い事になるのかは、おいておいてこの先生のお説教が1日の中で1番長く感じる。良くも悪くも…笑
まったく、進んでいない宿題は得意な所を交換して、話す時間の6分の1ノ時間でだいたい終わる…
だから…大半はお喋りで時間は過ぎてゆく…
こいつは国語と英語が馬鹿なんじゃあないかと思えるぐらい得意でとにかくいろんな事を【Voice】を使わなくてもスイスイでてくる。
もう大学にいってから専攻していくモノもある程度、決まっているらしい、なんでもお父さんの影響もあって将来は学校の先生になるのだと、あまりに嬉しそうに話すので、きっとそうなるのだろうと、勝手に考え少し先の未来をイメージしていた。
僕が先生から何かを説明する。
内容レポートを宿題された時にあれこれ内容を作ってくれたのだが、先生は僕達のやりとりをよく知っている…
だから放課後二人して呼び出され…
「個別出しているテーマについては各々の答えを提出する様に仲が良い事は良い事だけどねぇ」と笑いながら怒られた。
実はこの先生、母の同級生なのだだからと云う理由でも、無いのだけど、ズルをすると、すぐにバレる。
口癖でいつも、僕は「あなたが悪いと」何故か怒られる。
よくよく考えると何故、いつも僕が悪い事になるのかは、おいておいてこの先生のお説教が1日の中で1番長く感じる。良くも悪くも…笑
「あれから、アレはどうですか?」
「まったくわかんねぇ…」
アレとはそうアレだ、曽祖父の手帳…
mokuzuの云うにはコレは日記なのではないかと云う…
ただ一見、白紙なのだ。
mokuzuの【Voice】でtraceすると。
白紙に点が浮かび上がる…
どれが、あ!でどれがい!なのか。
僕には見当もつかない…
「たぶんこれは日記ですね。
ここからここまでが数字と文字20230401とあります。
コレ興味深いですね…どこで手に入れたんですか?」
「読めそうか?」
「そこまで、古い言葉ではなので、読めると思いますけど、
僕の父に聴いてみてもいいですか?」
「嗚呼、頼むよ。」
以外と枚数があるが228、229、230、231。
いろいろ物事は変わるが、この暦と云うモノは変わっていないそうだ。
だからこの日記は一年分の様だか、365日では無いのだ
231日…?
自室にて…
まるで、パズルゲームのピースを繋ぐのにはきっと順番がある気がしていた。
あの日、母が僕に手紙を受け取った時に思った。
ただ、こちらの手紙はまたまた、なぞなぞな感じの不思議なモノだった…
言い諭す様な文言、楽しそうな言い回し、周りに人気を感じる事の出来ない寂しそうな言葉…
たぶん1人でいる時に書いていたのだろうと想像する。
今の僕の様に。
誰へと云う名前すら無い、宛先のない手紙…
ただ最初から最後まで、宛てた人の事を心配しているのだと云う事だけは読み取れた。
せめて名前だけでも入っていると、もう少し飲み込めるのだけど…この人はたぶんあえてそうしなかったんだろうと思って…また、封筒にしまった。
通知、送信元mokuzu→受信元hinata
用件…内容がおおよそ見当がついたので明日…放課後、時間を作って下さいと云う…少し考えて。
「今、じゃあダメか?」と聞くと。
「いいですよ。」
こいつは大概、嫌とは言わない、でも時刻はもう…
今日を終わろうとしていた。
「だいたいどのくらいの話になる?。」と聞くと
「そうですね。おおよそ、2時間もあればいいかと思いますよ。」
そうか、僕は出来るだけ静かにキッチンに行って、飲み物を取りに行く…
mokuzuはおそらく勉強と併用して調べてくれていたのだろう…
僕は自分の部屋のドアを静かに閉めると大きく息を吐き出した。
家族の睡眠を邪魔するのも少し気が引けるし何より母が時々、夜中様子を見にきている事も知っているから尚更だ。
別に何もやましい事は無いのだけど、【Voice】の副作用が夢と何か影響が生まれて見なくても良いモノが母に届いても困るので、極力、睡眠時は取り外しで眠る。
一応、ステルス機能がついているから見えなくなる事も出来るがそれは何か隠していると云うている様なモノなので、僕はほとんど使わない。
そもそもその機能事態も、もしかしたら、保護者の権限的なモノでクリアされていて実は丸見え的なモノなのかも、知れないと思うとやはり変な隠し事をしない事が1番良いと云う結論に大概たどり着く。
「あの〜はじめますけど大丈夫ですか?」
「嗚呼、はじめよう…」
「今の所わかってきたのはこれが日記の様に作られている
メモ書きと言えばいいんですかねぇ。」
「メモ書き?」
「はい、日付はハッキリと記入されてれているのでそれはよく分かるのですけど…」
「…」
「あとの事は正直よくわかりませんでした。」
「どう云う事だ?」
「このメモを作った方はたぶん何か秘密をいろいろお持ちの様で、座標やら絵やら音符やらとにかく言い回し一つ一つが、全て比喩でさっぱりです。」
「僕達の目にわかる文字化?解るものにする事は出来るか?」
「もともと点字というモノは日本語のひらがなを中心にだいたい40文字以内でやりとりするのがベーシックな所なのでひらがなベース、数字ベース…20Dプリンターで再現する事は可能ですけど。それをするのにはやはり僕の【Voice】ハードでは無理ですね。【Voice】事態の互換性もありますけど。おそらくあの箱に入っているもの全てに誰かの権限付きのパスワードの様なモノが存在するのだと考えられます。おそらく、御自分でも一度ぐらいはtraceしたのではありませんか?」
「やっぱり、そうか…」
mokuzuの表情がとても優しかったのでつい本音が出てしまう。
「ただ表面的な文字やら数字などは読み取れているので…ファイル転送しておきました…」
「ありがとう」
本当に母ではないが、実は先祖は「泥棒」なのかもしれないと思うと。
感情がshareしているせいもあるが。
mokuzuの表情は裏腹に明るい…
わかる範囲のおさらいを頭から始めるのであった…
明け方の空もなかなか好きなのだけど2時間で収まるワケもなく取り止めのないやりとりはお互いの眠気がやる気に勝るまで続いた…
気がつくと僕は通信が途絶えた意識の中で夢を見ている。
行った事の無い場所なのだけど、何故か懐かしく感じた…
僕の住んでいる地域では起きない雪という現象だ…
雨の様に空から降るそれはとても軽く刻にはとても重たいモノなのだと母が話ていたのを思い出した…
この日記を見つけてから眠るといろんな夢を見るようになった。
今日は雪だか、時には雨の中だったり、いろいろだ一つ決まってる事は決まって人が出てこない…
気がつくと、朝がすぐそこまで来ている。
少し不思議な夢だ…決して怖い夢では無いのだけど。
目覚めるといつも僕は涙が出る。
時間の流れは普遍的なモノなのだけど、僕が生まれた国は大きく分けて4つのサイクルがあると云う、春、夏、秋、冬と、しかし僕はその一つとして、過ごした記憶が無い…記憶障害とはまた別で、そこにいた時間が幼すぎて覚えていないのだ。
何を記憶するのにしても幼すぎだのだ。
もう少しで夜があける。
昨夜から降り続く雨はやはり今日も止まらない…
でも、僕の涙はいつの間にか止まっていた。
やっぱり、母を起こしてしまったのかブランケットが掛けられていた事に気がつき、その温もりで浅くまた眠ってしまった…
【いつもの楽譜】「答え合わせ」
amana 家の倉庫にあった不思議な箱の中にあった、日記に書かれていたモノ…
現物…
コレを開けてると云う事は、幾らか俺の血の詰まったモノ?
くんか?ちゃんか?はわかられねぇなぁ。
たぶん開けれてると云う事は前者が許したか、偶然見つけて内緒で開けたか?まぁ…どんなシチュエーションでも、それ以上、先には進めない鍵をかけてある。勝手には開けられない細工をしてあるから、それ以上は入れねぇ。
きっと興味を持って、あれこれ考えているのか、分からないから元の場所に戻すのか、それはお前の自由だ。
読んだから、呪われると云う様な類いのモノではねぇから安心していい。
俺の事を少しだけ書いておいてやる。
オレはお前から観て、何代か前のお前だ…
20230914木曜日
20240102火曜日更新
それがこの手紙を書き始めた日付だ特別、深い意味はねぇ…
何かを測る時の物差しにすればいい。
お前が男か女かわからねぇから、話かけにくいし呼びにくいから、今、オレが書いている.物語の中に出て来るやつの名前で話を続ける。今、書いている?何を?と思うのか、訳が分からなくて閉じてしまうのか…
まぁ、たぶん最後まで読んで見るんだろうなぁ、きっと…
まだ、人と人とがコミニケーションのとるのに、紙や鉛筆、を使っているか?
それとも何か凄い機械が産まれて、文字も使わずに、相手に伝える事も受け取れる事も出来る様になっているか?
オレが産まれて、今、それなり時間が経って、オレを作った人達はもう側にはいなくなって、かなり経つけど…
お前の持ってる時計の年号まで、遡れば、たくさんの自然災害があって、多くの人が亡くなった…
世の中のルールみたいなモノが何年か止まってしまう様なウイルスと戦って…
余り、楽しくはないが、忙しい毎日を生きている。
オレが生きている間でこれだけいろんなモノが変わっていくのだから、きっとお前が居る世界は、オレは想像が出来ないなぁ。
分からない…
でも、きっと、こんな便りを読んでいられると云う事は、まぁ、危険に富んだ毎日ではないのだろうと思って、もう少し先に進む事にする。
先に言っておくけれども、全てが読めても、お宝や何か素敵な事が起こる魔法の様な事は、きっと起こらない…
それでも興味があれば読んで見ればいいと思う。
まず、何でこんなモノを作って残したのかと云う事が1番最初にくるだろうなぁ。
透明なケース…
銀の時計…
全て点字の日記…
誰宛が分からない手紙…
きっと、栞もそこあるのかもしれないし、ないのかもしれない…
一つ一つには何も意味はねぇ…
ただの無機物だ「生命を持っていない…」
一つヒントをやる。特別だからなぁ…
オレの作っているモノの中には…
全てにおいて【プルチックの感情の輪】と云う、考え方が必ず出て来る。【感情リテラシー】と云うモノだ。
俺の行動の1番ベーシックで大切にしているモノの一つだ。
正しいとか、間違ってるとういうモノではなく、人それぞれ持っている。「こころ」の輪の集合体の様なモノだ。
【こころ】て云うモノは…
眼には見えないし…
触ることも出来ないし…
匂いもしないし…
音も出さないし…
食べ物じゃないから、味もしない…
でも、人が人として生きていく上で、一番近くにあって、一番良く分からないモノだと私は思う。
偉そうな事を書いているが私自身がまだ分かっていない…
お前が何年先のオレなのかも分からない…
ただ幾つかわかった事だけ教えてやる事にしたんだ。
それがこのおもちゃ箱の本当の意味だと思う…
人に笑われる様な大きな夢を持って、毎日、馳せ走れ…
安易に未来を想像して、不安になる必要はない。
過去に囚われて…じっとしていても何も変わらない…
人に何を言われても、「今」を集中して、生きている事が…一番大切だと思う…
物事は人の都合で細かく書き換えられる。法律も倫理もそれ以外も…
集中、出来るモノはきっと必ず、見つかると思う…
見つからなくて、不安でしかなくて、夜も眠れない時もきっとあると思う。
事柄もタイミングも相手も異なるが、私も分からなくなって。
何で、オレだけ…て思った事もある。
俺は子供の頃に…夜中…眠れない子供で。
俺の爺さんが親父にくれた時計の音だけが、信用出来て。
いつも寝る時にそばに置いていた。
そうすると眠れる様になると教えてくれたの母だった…
だからと云うわけでもないが、今、書いている物語にはそんな人が出て来る。
コレもそこまで深く意味は無い…
眠りは何をするのにも必要なモノだ。
別に昼夜関係無くバランス良く眠る事はとても重要だと思う…睡眠は脳の中で整理整頓をする為に必要なモノだから必ず取るといい。
あと
休息日コレも必要だ…
1周が7日間と云うサイクルなのが俺の時代で辺り前なのだが、お前の世界はどうなのだろう?
わからない…
でも、きっと休みの日と云う考えは残っていると思う…
そんな日は「耕す」「蒔く」「壊す」「書く」「火を使う」なんて云う類いのモノから出来るだけ離れて、静かに過ごせばいいと思う。
書いている。自分はなかなか出来ていないが、コレは出来るとイイと思う…
それとコレが最後になるが…
出来るだけ、1人でいる時間を少なくしたほうがいい…
何をするのも効率が良くない。
仕事をする。
生活をする。
勉強をする。
食事をする。
効率と云う言葉は少し偏っているけれども。
まぁ、そんな所だ…
必要な事は日記に入っている…
読むも燃やすも好きにすればいい。
どのくらい離れた、俺なのか知らないが…
少しは為になる事があると思う。
じゃあな!
話を戻すが
あと…もし万が一、自分に眼を疑いたくなる様な事が起こったら、危なくない所まで、全力で逃げろ。
臨機応変と云う言葉は、具体的ではないから、俺は余り好きではないが、いざと云う時には思い出せよ。
お前の前の俺がきっと火の使い方は教えてくれているはずだから、大切に扱いなさい。
以上だ…
3代目 天音 海
話はさらに前があるとでも言いたげな書き収めになっていた。
【動く楽譜】「動く力」
5月ノ風が強い日…
この雨季の前ノ良く晴れた日の事だ…
いつもと何も変わらない朝に、それは起こる…
大きな足音…コレは姉だ。
三人しかいないからと云うのもあるけど、なんとなく近くの人は足音で誰か分かる刻がある。
mokuzuも独特な足音がする…気配を消して近くに来る刻以外はあいつも音がちゃんとする。
母にも決まった音がある。家ノ刻も外な刻も。
父のは久しく姿を観ていないが決まっている音がある。
姉はだいたいパターンがある。
今日はたぶん寝坊したのだろう。笑
洗面所から部屋への足音がかなり早くて大きい…
慌てているのだろう…きっと忘れ物する。
僕は自分の身支度して…
少し嵩張るが、日記もカバンに入れた。
変わった事は時計と日記をいつも持ち歩く様になっていた。
別に【Voice】の中にデータ化してしまっておけば済むと言えば済むのだけど…それはあくまでも表面的なモノなのだろうと手紙を読んでから思った。
わからない事は別に気にはならなかったけど。
家の机の上に置いておく事がなんだか、可哀想に感じて…
いつも連れて歩く様になった。
時計はたしかに音を聴いていると確かにそのリズムはとても心地よい事は僕の耳でもそう聞こえた…
機械だけどとても人に近いモノを感じる事ができるイイモノだと思って自分ノモノでも無いのに持ち歩く様になっていた。
そんな先入観と少しの所有欲を母に話したら…
無くさない様に時計に紐をつけてくれた…首からぶら下げるも良し、パンツのタグに結びつけるも良し…
日記はさすがに駄目と云われると思ったが…
「貸してあげる…」と云ってあとは何も言わなかった。
母が日記にカバーをかけてくれた。
母が使っていたのだろうがそこまで新しい様にも見えない。オマケにサイズまでピッタリ…
母が自分で作ったのかもしれない…
あの綺麗な手でいろんなことをする…手先が器用なのだ。
土を混ぜてコップを作るとか、少しイメージに合わない事をする。土いじりが好きで、学生の頃はそう云う勉強をしていたのだと父が教えてくれた。
自然の中のモノが好きなのは母の専売特許の様なモノで
ほとんどがハンドメイドのモノばかりだ…
いつもと違うと言えばお弁当がない事ぐらいか…
いつもと違う朝は玄関先でもうはじめていた。
姉が自転車を押さなきゃいけないないほどの強い風。
「今日は自転車はやめる。」
それは部活をお休みにすると云う意味になる…
僕は頭の中で帰り道の事を少し考えていた。
「今日、帰り、一緒に帰ろうか?」
頭に浮かんだ事を口にする。
姉は少し眼を丸くして…
「別にイイけど、時間が合うかなぁ」
「どっちが早くても食堂で待ち合わせでいい?」
この人はいつも困った者を観る眼で人を見る。
「いいよ…その代わりあんまり待つのはイヤよ…」
「メッセージを送るよ。」
待つのも、待たせるのも嫌いな人
姉はずっと人を待っていた。
直接会った事は無いけど…
姉よりも年上で、姉がずっと好きでいた人だ。
性格は竹を割った様な所があるけれど、恋愛事情は少し違う様で別人の様な表情でいる所を何度か見かけた…
僕にはまだよくわからないけど、ああ云うのを物思いに耽ると云うのだろう…
母はなんとなく気がついているのだろうけど、特別その話には触れない…
いつもそっとしておいてくれる。
取り分け、何かする事を促すタイプとそうでないタイプいろんな親のタイプがあると思うけど。
我が家は比較的にそんな傾向がある。
だから各々でなんとなく、距離感があり、一緒に居る時間は特に気にならないが何かあるとその距離感は近くも遠くも変化する。
しかし、この風はいったい何処からきたのだろうか。
放課後…
今日はグランドで行うスポーツ系の部活動は全て止められていた。
出来るだけ早く下校する様にと云う校内アナウンス📢が入っていたが姉との約束を果たすべく、僕は食堂に向かった。
放送の効果かいつもは賑やかな場所もほとんど人がいない。
強化ガラスの窓の外は眼で見える様な風で少し帰る事を躊躇ってしまう…
姉からのメッセージが入ってきた。
提出しないといけないモノがあるらしく1時間ぐらいかかるときた…
たぶん姉も同じ景色を観ているのだろう…
「待っててくれる?」と来たので。
「食堂に居ます。」と答えると。
「お腹すいた…」と答えてくる(´・ω・`)
この人は安心すると本音が出る。
「慌てないでと」付け加えたら。
「👍」と帰ってきた。
もはや文字ですらない。笑
僕はイスに腰をかけ…ポケットの中の銀時計を取り出す。
時間と日の光はいつも正確だ…
コレだけは何があっても変わらない…
取り外してテーブルに置くとやっぱり日記が気になる…
眺めている時間がどんどん長くなっている。
mokuzuが僕が解る様に解読してくれたモノを少しずつ読んでゆくと、日々の日記な事はだんだんわかって来た。
何処から来て、何処に居て、何処に向かったのか。
派手な事をしたとか感情的なモノはどうだろうかまだ先は長いが今のところは無い…
ただ、仕事と生活と食事、自分の時間の使い方、好みなど諸々の事なのだが、やはり比喩がかなり強めで時々わからない…でも、ある共通点とこの人はこの頁の刻は
喜んでいて、信頼されて?してなのかなぁ?、恐れを感じたりして、驚きを隠しきれなくて、悲しみが言葉越し伝わり、嫌悪「不愉快な思い」をしたとか、怒りが隠せず居るだとか、期待して?させてなのかなぁと云うモノは書いてある端々に読み取れる…でもそれは特定の誰をと云うよりもむしろ自分に向けての自問自答にも読み取れた。
背後に人影を感じる…
先生かなぁ?早く下校する様に声がけして回ってらのか。
少しドキドキしながらも振り返りかえると…
少し以外な人だった…
感じた人影よりももっと小さな…
食堂の購買のお姉さん…だった。
手にはいつもの紙袋を持っていた。
「よ!」
「え!」
余りのラフな口調に思わず、目が点になっていると思う。
「君、きなこパン食べる?」
余りの唐突な問いに、答えを出すまで、きっとどのくらいの時間があっただろうか…
普段からある事は知ってはいたけど手を出して買った事は一度もない。
「いつもよりも多く出来てさぁ、余ったんだけど、食べてみる?」
僕は回答に少し困ってしまった…人見知りと云うわけでも無いのだけど、余り人と話す事は得意ではない…
でも、立ち位置の関係もあって、滑舌の良い言葉に押されて…
「いただきます。」
満面の笑みを浮かべる。
なんでも、出し切れないと最後は棄てるしか無いのだと…
「明日は出せない…」
聴き取りにくかったけど、そう呟く様に云うと、コレはおまけと言って、ミルクも出してくれた。
さすがにお金を…と告げると。
「イイよ出世払いで!」と云う
気さくな口調は普段とは少し違って、親しみを感じた。
「ココいいかなぁ。」
「えぇ」
返事はしたもののあまり家族とか同級生以外の人と近い距離で話をする機会があるわけではないから、少し緊張していた。
椅子一つ離れた距離…
彼女は【Voice】を開けて、たぶん仕事をしているのだろう…
でも、今日…はじめて知ったこの人の名前…
「すいません、いただきます…」
「あ!どうぞ…」
「ごめんなさいね、勉強に集中出来ないかなぁ。」
「いえ、そんな事は無いです。」
僕は日記をカバンに仕舞おうとすると。
「珍しいねぇ、それ本でしょ」
「いや」
まさか身内の日記とは言いにくい、確かに本なんて、持ち歩く事はかなり珍しいと言われても、仕方がない今の時代紙ベースの本なんて、持ってるのはそう云うモノを調べる仕事をする人ぐらいしかいない。
だから仕方がない。
昔は学校には図書室と云うモノがあったそうだ…
なんでも決められた枠の中にびっしりと本が並んでいてその中から自分の好きなモノを探すと云う仕組みなのだと。聴いた事がある。
「どんな内容なんですか?」
彼女の眼はとても興味があると云う眼になっていた…
「3ーA出席番号2 Amane Hinata 君かぁ…普段、お昼のバタバタの時しか会わないもんね…」
きっと【Voice】越しに僕を観るとある程度の事までは解るのだろう。
「あの、hanokaさんは…」
彼女は不思議ナモノを観る様な眼でこちらを観ている。
「よく知ってるね。」
僕は胸元のネームプレートを指さす…
「あゝ」
普段はつけていないそうだ、あまり自分の名前が気にいっていないのだと云う…
僕は【Voice】で学校の組織案内に入る…効き目に検索コマンドをいつも入れているから…いつも右眼だけ凄く乾く…
職員名簿。
検索の輪はある程度のレベルで必ずロックが入る。
A.B CS
だいたいA .Bぐらいまで観ると事足りるので、その先まで余程のことが無いと観る事は無い…
何よ【Voice】上の全ての足跡は…母がきっとどっかで見ている…そんな羞恥心は不快ではないけど、いつも何かを制限している自分がいた。
外注業者
食品衛生管理者
kacinoki hanoka
hinataの頭の中の声
「え!卒業生なんだ…しかも、母とそんなに変わらない。」
1番驚いたのは、ワンオペでパン屋さんをしている事だった。
「amana?どっかで?」
「島の南の丘の上に教会があるでしょ…
そこの下に、僕は住んでます。」
「もしかして、あまねさんの息子さん?」
「はい、あまねひなたは僕の母です。」
妙に納得している所を観ると僕は母に似ているのだろうか?それとも他に何かあるのだろうか?
「へぇ、そうなんだ…」
「はい」
ただでさえ、女性と話す事も無いから、ぎこちないのに、母を知っている人となればなお、緊張する。
「お母さん元気?」
「はい」
「相変わらず。土いじりしてるのかしら.笑」
「ご存知なんですか?」
「うちの学校にある。七不思議の一つだからだから知らない人はいないと思うよ。」
僕はその話を知らない…でも、学校の七不思議と云うぐらいだから、きっと女子の間で広まっているモノなのだろうと思った。
「あなたぐらいの頃、あまねさんに遊んでもらったなぁ。
君達が食べてるパンの素になる釜の火を起こす刻に使う、フェザースティック…君のお母さんから教えてもらったのよ。」
「へぇ、そうなんですね。」
手先が器用で、お母さんに教えてもらったて言ってたなぁ。
学校の行事で冬に小中高合同のキャンプがあって、1番早くに火がついて、あんまり手際がいいから、先生驚いてたなぁ…
僕の知らない母を嬉しそうに話す。この人はたぶん自分では気にしていないと思うが、パンを作る刻に使う何かなのだろうけど、とても自然ないい匂いのする人だ…
どうかで嗅いだことがある様な?
取り止めのない会話は姉を待つのには充分な時間であった。
少しだけ緊張が解けた頃、姉が大きな紙袋にたくさんの書類を入れて、現れる。
「ごめんね待たせて…」
僕は以外と一緒に居て過ごしやすい人だったので時間を忘れていたから。
「大丈夫だょ」と云う言葉がスムーズに出てくる…
正直な事を云うともう少し話していても全然問題なかった。
特別、話が面白いとか、相槌が上手だとかではないのだけど…こちらが話す事をきちんと聴いてくれているのがわかる仕草がとても可愛らしく思えた…
話の中に日記にまつわる事もあったけど。
そこまで深く聞かれる事もなく中身の事にも触れず、でもきっと興味があるのだろうと思ったけど…
僕はあえて、カバンにしまってしまった。
姉が「hanokaさんと一緒だったのかぁ」と云うと
僕の正面に座り重そうな紙袋の中を確認していた。
「宿題?」
「課題!」
「しかしなんで紙なのかしらねぇ。」
姉の面白い所はなんでも好きな人の真似をする所だ。
なんでも古い遺跡とか本とかを研究する仕事をしているらしい。島の学校は大学までしかなく院になると島を出なくてはならなかった。
リュック一つでどこにでも行ってしまう人の様でほとんど研究室にもいないのだとか…
でも、姉はそんなところがいいのだと言いながら彼のいる所へ手紙を書いて…課題に埋もれながら毎日遅い時間まで勉強している…
だから朝は嫌いなのだろう。
本人云うとたぶん凄い嫌な顔をするので、言わないが朝は少しだけ怖い…
hanokaさんが
「2人共徒歩で通学?」
「はい」「はい」
「なら、送ってあげる。」
僕達は眼を合わせて
「ラッキー」
hinataさんの車の車内はまるで移動するパン屋さんだった…焼く事は出来ないらしいが、売る事と焼く事、以外の事はだいたい出来るのだと云うと車は音も立てずに動き出す。
普段居ない場所だから、少し落ち着かないが、やっぱりいい匂いはここでもした。
歩けばそれなりに時間がかかるが、車はやっぱり早くて便利だ。
【all of the time】「音の魔法」「雪の中に咲く華」
【軌跡の楽譜】「Comfortable carousel」
島に当たり前の様に夕闇が訪れる…
こうも、毎日開けては暮れて、暮れては明ける…
星が廻るとは言葉では云うけれども。
廻っている所を観ているわけでもないから、時々朝なのか夜なのかわからなくなる刻がある。
【Voice】の音声ガイドは当たり前の様に地球の回転の説明をしてくれるが全然理解できていない。
先入観が想像を産む…のだけどイマイチ釈然としない。
あとどのくらいの時間を過ごしたら自分がこの島を出て見た事もない世界に飛び出すのかまったく、イメージが湧かない…
自分の部屋の窓に西日がさして、薄手のカーテンを閉めた時に…
【Voice】の外部からのアクセス…
発信元が不明になっているが、姉宛ての様だ、他のモノが見れないシールドが張られていて、僕は開けれない…
母が気がついた様だそのまま母の【Voice】のstorage unitに保存されてゆく…
本人が眠っている刻はこの様な事が時々起こる。
全員が眠ってる刻は母の【Voice】は自動で保存するらしいが、基本的には本人の意思とは無縁にランダムに外部からのアクセスはあるので…相互フォローが必須となる。
僕の【Voice】で検知出来ない者からのアクセス…少し気になったが、母がそれを読み取り預かった、だから余り詮索しないのが我が家のキマリだ。
キッチンに居る母にそれとなく尋ねてみる…
母は手紙だと云う…
僕は誰からとは聞かないでいた。
その日の夕食…
formeはいつもと何も変わらないのだけど…
いつもと少しだけ味の違う、母の料理をきっと何かが違ったのだろう。
森で会った不思議な生き物を観るかの様な眼で覗きこむ…
母の視線
「甘かった?」
僕は眼のやり場に困っていると…
隣りから、箸が忍び込んで来る。
「あ!」
「…」
満面の笑みで、僕のおかずを口
いっぱいに頬張る。姉の透き通る瞳の中に、僕は僕を見つけて、怒る気も失せた…
その日の夜
僕は屋根裏を抜けて、屋根の上で【Voice】越しに父の望遠鏡で空を眺める事にした…
ここまでのルートは父が唯一僕との距離感を持つ為だけに母と少しだけ意見がぶつかった様だったけど…
人、一人がやっと通れる…ONE.WAY
最後は母も興味を持って家の改造を後押ししていた。
以外と意見がまとまると物事は動き出す。
もちろん母が許さないと父は家の事には全く口が出せない様だったけど。
完成した刻の満足そうな表情は、数少ない父の笑顔だった。
そんな父が、今年は雪が降るかもしれないねと母に問いかけていた事を思い出す…
何故かわからないけど…
あの人は天候を言い当てる。
母はそんな父に。
「薪🪵を用意しておいてくださいね」,
肌寒くなった窓の外に眼を向けて呟いていた。
架台が計算が終わり、自動追尾が始まって…一つの映画の様な時間が始まる…
意識を集中すると周りが全く気にならなくなるのは、僕の悪い癖なのだけど、知ってて、この人は僕の後ろに立つ…
姉だった…
バスケット持参🧺の登場は自分も見るつもりなのだろうか?
僕は少し話したい事もあったから。
「今日は面白いモノが見えるんだょ」と声をかけてみる…
「へぇ」
少し気のない返事が帰ってきて…
僕はもしかしたら、何か考え事をしたくて、登ってきたのかなぁと思い…ソレ以上は何も言わなかった。
姉のおもむろな仕草が少しだけ気になりながらお目当ての星を覗きこむ…
「あれ?」
なにも映らない?
スコープから眼を離すとなんの事はない…
姉に遮られている…
この人のこう云う所は正直…少し、わからない部分で時々、困ってしまう。
でも、手にブランケットを持っているので…
「使っていいの?」と尋ねると
何も言わずに頷いて、バスケットの中から水筒を取り出してカップにそそぎ始めた…
恐る恐る、バスケットの中を覗くと、カップは2つ入っていたので、映画は少し先のみらいになった…
この家には二つの好みがある。
単純に珈琲なのか紅茶なのかと云う事なのだけど。
面白いモノでどちらも必ず、牛乳が入っている…
父も僕も自分でお茶を淹れる事はしない…
それでも父はまだ、結婚する前は自分でしていたのだけどねぇ…と呟くと
母はいつもの遠いモノを観る眼でその先は何も言わなかった…
「ねぇ、知ってる?」
姉が口を開いた刻に僕はカップの紅茶を丁度、飲んでいた所で、返事が少し遅れてしまったけど。
姉の目線に眼を合わせてみた…
「絶対に獲物を逃がさない猟犬と絶対に捕まらないキツネの話」
【レラプス】
「やっぱり知ってたか」
「うん」
父は眠る前に必ず自分で考えた物語を少しだけ話してくれる…そんな人だ。
その刻、時々で同じ話なのに、少しだけ内容が違う刻がある。
僕より少しだけ歳が離れている姉はどんな【レラプス】を聴いたのだろうと少し興味があったけど…
姉の話を聴く事を優先してみた。
🤔多分、何か迷ってるんだと思っていたのもあったけど、なんとなく姉の声が心地良い、刻がある。
特別、歌が上手とかそう云うモノじゃないけど、聴いていて落ち着く?うーん?落ち着くでいいのだろう?
本人に云うと、間に受けて自分の好きな歌手の歌🎤をアカペラで歌い出しかねないから。こんな時間に怒られるといけないから、そっとしておこうと決めた。
少し気のない返事を送り返すと…
「学校、慣れた?」
姉はずっと心配してくれていた、僕が記憶が飛んでしまう事もそうだけど、どちらかと云うと人見知りで、知らない人と接する事が苦手で、自分が興味のある事以外は全く興味を持たない僕の性格を…
母もきっと同じ事を口にはしないけど考えているのだろう…
だから、この二人には隠し事をしないでいた。
「うーんどうかな友達は出来たよ」
「そう…」
姉がカップに口をつける…
つい、癖で、人の細かい仕草をずっと観てしまう事がある…悪気がある訳じゃあないのだけど、ついそうしてしまう。
姉はそんな僕の癖をしているから時々…
「そんなに観られると困るなぁ」と僕の少し飛んでしまった記憶を元に戻してくれる…
余り、複雑な事はよくわからないけど、何か一つの所に集中するとソレ以外の所の記憶が飛んでしまう。
カンタンに云うと起きているのに眠っている…
夢を見ている状態になるらしい。
何がそうさせるのかは、わからない、いつもどのAIに聞いてもわからないと答えてくる。
一つだけいつも変わらないのは大きく飛んでしまった刻、僕は自分のベッドの上で、母か姉がきっと眠れなかったのだろう…
ベッドに持たれている光景に僕はとても申し訳無い気持ちになっていた。
口にすると二人共、なんともいい様ない表情で受け答えてくれるから、僕はいつからか口にしない様にしていた…
【all of the time】「音の魔法」「記憶の中に咲く華」
【全ての時間のすべて…】より…前編
【音の巻き貝】【朝】
ある日の出来事だった…
家族で島の市場に買い物に出掛けた日の事だ…
休日の昼下がり…
島の時間はこの市場でかなり賄われている。
活気も空気も独特だけど…
モノを売る人の売り口上を聴いてるだけでもなかなか楽しい…
人だかりは少し苦手な僕は正反対の姉の強く握る手に引っ張られて、姉のお目当てに真っしぐら、もの凄い速さでたどり着く、母は元々マイペースな人なので、家で必要なモノを一件、一件回る。
このパターンは小さい頃から変わらない…
骨董品取り合ってます。
少し変わった、黒板が店先に立て掛けられている。
文字の雰囲気的に女性のモノだろうか?
僕は体力的に姉にはとても敵わない…
切れる息を整える間も無く、姉はお店の扉を開く…
僕は、初めて来る所だったけど…
姉の部屋と同じ香りがしたので、少しだけ、何故か安心した…
お店の中はとてもこじんまりとしていて…
何屋さんなのか、正直わからない。
表の光が入る為の窓際の壁に季節外れなポスターがたくさん貼られていて、窓側に置かれた一輪挿しの花瓶に浮かぶ光が、とても綺麗好きな人のお店なのだろうと…僕は思った…
「あぐ」?
読めない…
小瓶に貼られたラベルのスペルが読めない僕に…
ガラスケース越しからまるで熱帯魚を観るかの様な眼てるこちらを覗き込む人から声をかけられた…
「Adolfo Domínguez」
日本語だと
「アドルフォ ドミンゲス」
香水なんて君ぐらいの子だと興味ないか!
「香水ですか?」
正式名称は英語で「agua fresca lima tonka」
不思議なモノね…
あなたが今、着ているシャツの色を少しだけ濃くした色の液体が入っていたモノよ。
姉の姿が見えない事に少し不安を感じていた。
それと一緒に少しだけこの部屋と姉の部屋の香りが似ているけれど、少しだけ違う事も不安を積もらせてゆく。
でも、この部屋の雰囲気はなんとなく、うち書庫に似ている気がした。
きっと一つ一つの品物を丁寧に整えて並べてこの人は毎日過ごしているのだろうと思うと…
少しだけ気持ちが和んだ…
多分、腰をかけてもいいのだろうベンチの様な椅子といつからあるのだろうと思う、テーブルにはとても綺麗なガラスなのだろうか?ビー玉?透明な入れ物の中に入っているモノに興味が惹かれて、覗き込んでいると。
「珈琲と紅茶ならどっちの人?」
僕はこの2択にいつも家で悩む…事はこの人はきっと知らないから。
ミルクが入っていれば、どちらでも飲めますと答えた…
もちろん入っていなくても飲めるのだけど。
人に何かリクエストをする事が、多分苦手なんだと、自分で思う。
だから、その人の美味しいと思うモノを自分なり受け止める方法を、つい癖で探してしまう。
母と姉はこの事を知っているから、自分の好きなモノしかススメテこない。
いつか自分の物差しで人と話せればいいのかもしれないけど、どうしても先に相手のことが気にかかって、素直な事は伝わるまで時間がかかる…
そんな事を考えていると、美味しそうなケーキも珈琲や紅茶も…よくわからない味になっている事は時々ある…
僕はモンブランが食べたい刻は絶対に姉の居ない刻に食べる事に決めている。
あの眼で欲しいと言われたら…きっと半分、あげてしまうことは云うまでも無いのだけど。
明日の朝に星が直列に見えることか楽しみな、僕は…
目の前に出された、プチケーキを思わず並べて、遊んで、姉が降りてくるのを待つ事にしていた…
小一時間後…
姉のが2階から降りて来るまで…
僕のケーキのパズルは飽きる事なく続く…
金星、火星、水星…
最後一つをおこうとした刻、眼に星を入れて、姉が帰ってくる…
よっぽど好きなのだろう…
ここのお店の事は話では聴いていたけど、実際に来るのは今日が初めてだった…
姉のお目当ては…
実のところよくわからない…
一所懸命、口で説明してくれるのだけど、イマイチ…
イメージが出来ない。
【音の巻き貝】【朝】と云う名前のモノらしい。
コレの話になると…姉の口は朝まで、ずっと動き続ける。
実物はここにあり、一つだけ問題あるとすれば…
売り物では無いそうだ。
だから、このようにして、ただ眺めるだけの為にここに訪れるそうだ…
最初から、今の今までずっと…
眺めている時間だけが増えていく…
でも、それで良いのだと、口にする姉の瞳には
いつも、涙の跡が残っている事は気が付かないでいる事にしていた。
テーブルに並んでいる…ケーキに眼がゆく姉…
その所作を眺めている御店主…
どんな事にもはじまりが必ず、存在する。
僕は【Voice】の中のお財布機能を開いて、ポイントとキャッシュを確認していた…
このお店…本当にいろんなモノがある。
【夢が描ける。万年筆インクセット】
50%off金23コイン?
【何処にでも行ける。ノート】
70%off金7コイン?
物欲はそこまである方なのだけど…
商品の横に必ず、手書きで書かれている…
少し癖のある丸い文字が読んでいると、可愛いらしくて、あちこちキョロキョロしてしまう…
この人、一つ、一つに名前をつけるのが好きなんだ…
どこまでも貼ってある。
ネームトップは途中まで数えていたけど…
かぶりそうので途中で諦めた、でも、きっとこの人の手元にこの子達が来た時に、この人はきっと…
独特なセンスを光らせる事が、楽しみな人なのだろうと思った…
一つだけ、蓋のあるモノで、コレはあの小瓶の様にはラベルが貼られてはいない。
名前がついていない。
ついている事が、珍しいのに、この部屋に来ると、ついてない事が珍しく感じる…
少し気になり、開けても良いモノか考えてみた。
「…」
答えが出ない。
【象のヒズメ】
御店主の静かな声が聞こえた…
観たいなら開けてもいいわよ。
でも、売り物ではないのだけどね。
とても優しい声で言ってくれた。
蓋を開けると、真っ黒なペン?✒️?
ケーキを頬張る、姉と眼が合い、姉は首を横に振る…
おそらく🤔この箱の事は何も知らないのだろう。
箱からペンを取り出そうとすると…
箱が…動く、真っ黒なペンと透明なペンが二層目から顔を見せる…
透明な方がペン先が見えて初めてコレが万年筆だとわかった…
「コレは書けるモノ何ですか?」
「インクを入れたら書けるわょ。」
僕は何故なのかわからないけど凄い興味が湧いてきた。
古いものだからとかいろんな理由はあるのだけど。
本とかではみた事があるけど、このタイプのモノを初めて観る。しかも使えると、この人は云う。
僕は唐突に浮かんだ事を口にした。
なんで【象のヒズメ】て云う名前なんですか?
このお店のすべてのモノには名前がある…
たぶんちゃんと名前自体があるモノもあるのだろうけど、この人はたぶん自分で考えて一つ一つに名前をつけてあげた…?
勝手な僕の思い込みかもしれないけど、そんな気がして思わず聴いてしまった。
「理由は使ってみるとわかるかもね…」
引き出しの中から小さいなビンを取り出して、中のインクを吸わせる。
「君は手紙を書いた事がある?」
「祖父母には時々」
「そう」
彼女からペン✒️を受け取った時、急に視界が…
詩が聞こえていたような…
「I hear the sound of clouds flowing in the sky」
「Someday... time and light will pass...」
薄れてゆく…視界はゆらゆらとヒカリをなくしてゆく…
僕の名前を呼びかける姉が視界に入る。
僕が次に眼を覚ましたのは首筋に自分の体温とは別の温度を感じて、それが人の指先だと気がつくまで、どれくらいの時間があったのだろう。
独特な香りが鼻先をくすぐる。
【all of the time】「音の魔法」「記憶の中に咲く華」
【全ての時間のすべて…】より…中編
【象のヒズメ】
眼が覚めた時には外からの光は無く、どのくらいの時間がすぎているのだろう…
ガラスケース越しだったから、そんなに気にならなかったが、思っていたより小柄な体型とは落ち着いた声の先に、僕の視界は移動する…
彼女のその透き通る様な瞳には、テーブルに置かれた一つの筆
「話でしか聴いた事がなかったから、少しビックリしたけど、達観な人には夢を魅せる筆🖌️なんですって…これは私がお店を開く前に旅先で見つけたモノなんだけどねぇ。そこの国にはまだ、魔法と云うモノがあって、科学的なモノとはまた違うのだけど、人を護ったり、癒やしたり、時には傷つけてしまったりする事の出来る…チカラて云えばいいのかなぁ。そう云うモノを道具として産み出す事に長けた人達の作ったものらしいのだけど。」
少しわからない何処があるけど、この人の語り言葉は何となく聴いていて落ち着く…
たぶんこのお店の一つ一つにきちんと物語があるのだろうと改めて思った…
「理由を聞かれたのはあなたで二人目、と云っても一人目は私なんだけどね。笑」
横に座る。姉の表情が落ち着きを取り戻すのにはもう少し時間がかかるのかもなどと思っていると。
紙袋の中に小さな小箱を幾つか入れている。
【春風】【月夜】【深海】【雪】
「夢の続きを観て見たくない?」
この人のこの表情は素直に可愛いと思った…
「人はモノを選べるけど、モノは持ち主を選べないから。」
彼女はそう云って、姉に紙袋を待たせていた。
帰り際に…
「hinataさんによろしくね。」
僕はきっと眼を丸くしていた事だろう…
一言も母の事を知っているなんて言わずいたから…
結局、僕は彼女の名前を最後まで聴きそびれたまま帰宅するのであった。
【all of the time】「音の魔法」「記憶の中に咲く華」
【全ての時間のすべて…】より…後編
【以心伝心】
僕はぼんやりと空を眺めている事が好きでいつもの癖で自分の部屋の椅子から見える窓の空を眺めていると、部屋の暖かさでいつの間にか眠ってしまう…
【Voice】自体の個性と言えば分かりやすいかも知れないけど、一つとして同じモノが無いのだと云う…
僕の為にプログラムが組まれていると云う事もあるのだけど…それぞれが特化したモノがあるのだと聴いた。僕の場合は性格的なモノもあるのだけど、音と光に影響を受けやすい。
リマインド機能が睡眠と同時進行で動く様に設定されているのだけど、夢に干渉されると、少しだけ…
影響を受けてしまう…
昼でも夜でも…
同じ夢を続けて観る刻がある。
残念な事に夢の中でも、?自分を観る事は出来ない。
でも、決まって、視界の高さは、いつもとても低い処からモノを観ている。
幾つか、パターンがある中でも印象的なモノは二つ…
一つは内容が朧気なのに…
何故か眼が覚めると…涙が出てくる。
途中までは、ほとんど一緒の内容なのだけど…
とても近くにいるのに、相手には僕が見えない様で、
僕の眼の高さとこの子の眼の高さが一緒なのに気がついて、夢の中の僕はこの子ぐらいの身長なのだろうと起きてからいつも思う、その子が黄色カッパを着ていて表面が濡れているから、恐らく雨が降っているのだろう…
しばらく、彼について歩くと…
道が二つに分かれている。
歩き疲れたのだろうか…
男の子はその場にしゃがみ込んでしまう。
僕には雨が降っている感覚が無いから…冷たくも無いのだけど…
どれくらいの時間が経ったのだろうか?
僕は自分の背中に人の気配を感じて振り向くと、僕達が歩いて来た方から傘をさして歩いてくる人がこちらに歩いてくる…
僕の横を通り過ぎる刻に薄い桃色の光が見えた…
女性なのか、男性なのかわからないけど、僕には眼もくれず…彼の横に歩み寄る。
しばらく話し込んでいる様に見えるのだけど、言葉は聞こえない。
どうやらどちらに進むかを話している様にも見えるけれど…
音も光もあやふやで、はっきりした事は何も分からない…
決まって、この少し先で僕は眼が覚めてしまう。
2人は分かれている道を別々の道に進み出す。
でも、はっきり覚えているのは、首を横に振る、男の子の仕草と進み出す男の子に手を振る黒い傘を持った人の白い手…
別れ際の男の子の笑顔からやりとりが彼にとって怖いモノとかそう云うモノではなかったのだろうと思える笑顔だった…
それだけなのだけど…
僕は眼が覚めた刻に眼にはたくさんの涙が溢れて出て来てしまう…
そんな夢を時々観る…
【all of the time】「音の魔法」「華」
【全ての時間のすべて…】より…
【Voice】
僕が一番好きな空と海はとてもよく似ているけど、やっぱりどこか違う…
当たり前の事だけど…
とってもよく似ているから…やっぱり両方好き…
いつだったか、友達に二者択一の問題を出された事を思い出していた。
あの刻は確か、みんなが助かる方法を考えると僕は答えたけど、実際そんな場面で多分そんな余裕は無いのだろうけど…
やっぱり、僕はみんなが助かる方法を最後まで考えると思う。
ゲームなら、リセットて云うセリフが出てきてやり直せるけど、やり直せ無いモノもやっぱりある。
机の引き出しの中の日記帳とこの間、頂いた、万年筆は時々、開ける様にしていた。
きっと、とても、強い気持ちがこもったモノには魔法みたいなチカラが宿るのもなんとなくだけど理解出来た…
別に祖父のマネをするわけでは無いのだけど、僕は僕なりの日記をつける事を始めていた。
色で分けたり、絵を描いてみたり、とにかく自分で残しておきたいもの全てを、出来るだけ丁寧に…誰の為でもなく、自分の為に…
母と姉に見られると恥ずかしいから机の引き出しには鍵をかけた。
鍵を隠してあるのは…
隠しているのは母の大切にしている。
花壇の鉢の中…
いつか母は気がつくかもしれないけど、その刻は…
きっと母だから気が付かないフリをしてくれるのだろう…
姉は花より甘いモノの人だから見つかる心配は無い。
秘密がまた一つ増えてしまった…藁
おしまい
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