京都 徘徊つれづれ 2日目 その2

■つまんなかった天竜寺

天竜寺の木戸銭は庭園が500円で方丈は300円だったかな。しかし、この京都の寺の料金体系はなんなんだろね。基本料金いくら、オプションいくら、特別オプションいくら、で、あれこれ追加してくと結構な料金になっちまったりする。坊主丸もうけだろ。そういえば京都の茶屋遊びって、常連客は医者に坊主と聞いたけど、さもありなん。脱税の話も、いつも医者に坊主だよね。
それはさておき、靴を脱いであがって方丈の縁先から見る庭はまさに京都観光の典型。とはいえ正直いって他の庭園との区別はつかないし、よさもよく分からない。名所として必ず挙げられる天竜寺だけれど、どこがどういいのか誰か教えてくれ…なくてもいいよ。
なので、ここは少し座って休憩タイム。なんといっても睡眠不足で背中の荷物も重い。これから線路の北側までえっちら行き、大覚寺や念仏寺まで足を伸ばすのって、ムリじゃね? な気分が漂ってくる。
でもせっかくなので庭にでて、ぐるりしたら北門というのがあるのが分かって、案内図を見るとなんと竹林の小径に直結しているではないか。なんだ、こっちから入れば近道だったのか。くそ。こういうこと、大切だと思うんだけど、地図やガイドブックには書いてないんだよね。困ったもんだ。でその北門から出て、またまた着物姿のカップルだの修学旅行の少年少女かきわけ竹林をでて、いざ嵯峨野方面へ。
竹藪抜けたらがぐっと人口密度が下がった。そうか。みんな竹藪しか見に行かないんだな。これも軽佻浮薄なガイドブックのせいに違いない。
さてと。あらためて地図を見ると、やっぱりめあての念仏寺も大覚寺も広沢池もはるかに遠い彼方。飯も食ってないし、たとえたどり着いても戻ってこれるか自信がない。近場で済まそう。なわけで、道端に立ってる看板の、なんとか寺へ約10分とかいう案内を見ながらヨタヨタ行くと、通りかかったのが常寂光寺で。予定にはなかったけど、このあたりで勘弁してもらおう。ところが500円払って中に入ると坂道階段を延々と上がる上がる。拷問かよ。てっぺん近くまで到達したらへとへとでござんす。境内は静かで、池のなかから聞こえてくるカエルのケロケロは一服の清涼剤、とはいえちょっと座ったぐらいじゃ疲労は回復せんぞ。気温も高く陽射しもあって、かいた汗も気持ち悪い。ええい、と重ね着していたシャツの一枚を、ここで脱いでリュックに入れた。そしたらこんどは荷物が重くなった。さらなる苦行か…。
近くで行けそうなところに落柿舎があって、名前だけは知っているからついでにとヨタヨタめざすが案内表示がアバウトすぎ。行きすぎて、戻って、うんざりしながら300円払ってふらふらと入るもとくに見るべきところもない。ところで庭の棚はなんだろうと草木の手入れをしていた女性にため息交じりに問うと藤棚で、もう終わってしまいました、と軽くいなされる。甲斐なく歩かされてるだけだな。
そもそも嵯峨野・嵐山を1日でクリアしようというのが無謀すぎ、といまさらながらの思い知る。のんびり散策なら2、3日かけてもいいくらいだ。
嵯峨野はもういい。でも、せっかくだから冥途の土産に渡月橋だけは見ておこう。あきらめの悪い徘徊者ではある。

■やっぱりただの橋じゃないか渡月橋

渡月橋へのいちばん近い道のりは、地図を見るとさっきの竹藪抜けて、のようだ。何度目だ、な竹林を抜け、さっき入った天竜寺の門前をとおり、お土産屋に群がるガキどもをかき分けながら、やってきました渡月橋。でも、銘板を見ると昔の木造ではなくコンクリート造りってかいてあるし、やっぱりどこが見どころなのかよく分からない。景観? まあ、下を流れる川はまあまあ悪くはないけど、とくに素晴らしいというほどのものでもない。風雅な趣味がこちらになさ過ぎなのか。悪かったな。あ、そういやあ何年か前にこのあたり氾濫したんだっけか。うーむ。
土手のベンチに座っていると、留学旅行の坊主たちがキャッキャいってタクシー運転手に記念写真を撮ってもらっている。あっちでもこっちでも同じ光景が見られる。この、4〜5人でタクシー借り切って移動という修学旅行スタイルって、いつからなんだろう。みんなで移動して集合写真撮ってっていうのは、もう昭和の記憶なのだね。
しかし、写される子供は落ち着かない。運転手がスマホかざして「撮るよ」といってるのにふざけてじゃれ合っていてなかなか正面を向かない糞ガキがいる。なので「大の大人の言うことをちゃんと聞け! さっさと並んで撮ってもらえ!」と怒鳴りつけてやりたくなるけど、そんなことをしたら通報されるのがオチだからしないよ。
道路を挟んだ向かい側にはオシャレな土産物屋がずらりと並んでいて、なにが名物なんだか知らんけど、こういうところにくるとみな何か買いたくなるのか。ペナントとかキーホルダーとか木刀とか、そんなものがまだあるのかどうなのか、知らんけど。

■というわけで嵯峨嵐山にお別れを告げて

もう帰ろう。なわけで川に沿ってしばらく歩き、左に曲がって駅の方角を目指す。ちょっと離れただけで人気は失せて静かなもんだ。嵐電の線路を越え、少し行くと萱葺きの家があった。なんでこんなところに。と思ったら畳屋で、でもやっぱり、なんでまただよね。はたまた、無農薬野菜や薪の無人販売があったり。こういう光景のほうが寺より面白いなあ。なんてたらたら徘徊。

3時半ぐらいの電車に乗ってJR嵯峨嵐山にお別れ。降りたところは二条駅。その名の通り二条城に近いところである。なぜここで降りたかというと、本日の宿が京都御所の左下あたりで、最寄りの駅は地下鉄丸太町だからだ。二条から地下鉄がでていて、乗り継いで行けばすぐに着く。とはいえ貧乏徘徊者はそう簡単には電車に乗らない。だって地下鉄丸太町駅まで、ここ二条駅から歩いても2キロ弱なのだから。まだ歩くんだよ。

とはいえすぐさまの徘徊は疲労困憊の身には辛い。腹も減って戦もできん。なので駅ビルにあった志津屋ベーカリーでひと休みすることにした。なんたって朝飯もいい加減だったし昼飯食ってないんだから。頼んだのはクロワッサンベーコンエッグサンド、コーンスープ、コーヒーがついて730円のセットで、客の少ない店内でぼけっと窓の外をながめて時を過ごす。西口には映画館の入ったビルもあって、駅前広場では同じ色のTシャツ姿の人たちが通行人に何か勧誘でもしてるのかな。それを無視して、急ぎ足で、自転車で通り過ぎていく人たち。そういう京都の日常が面白い。

■というわけで

しばらく休憩ののちリスタートして一路東へ。駅を離れるとやはり地方都市の趣で、なんとなく閑散として見える。テキトーに道を折れたり止まったり。軒先に燕の巣のある家もあった。おや、酒屋があるぞ。そうだ、友だちに京都の酒を送ろう。でてきた婆さんに、関東にあまり出まわってないような酒はあるか、と聞いたらしばらく考えて、「うーん。ああ、あの俳優のなんていったか、そうそう、佐々木蔵之介の家でつくってるお酒がある」と京都弁で応えてくれた。はたしてこの婆さん、日本酒情報に疎そう。地方発送を頼んでもいまいち心もとないな。なので、分かりましたごめんなさい、と店を出た。

ショーウィンドのこれは何なんだろう?

でまた歩いていたら記憶が蘇ってきた。そうだ。このあたりで深瀬昌久の個展やってたはず。で調べたら、やはり近くで。それではと地図を見ながら向かったのがPURPLE。

そのPURPLE近くまで来たけれど看板が見当たらない。近くの店に人がいたので尋ねると、隣の上だという。もしかして、と思いつつ薄暗い階段を上がっていくと、あることはあった。でもまっ暗ではなく人の気配があるのでおそるおそるドアを開け、中の男性に声をかけると、やはり実は本日は休廊。残念。でも「いいですよ」と展示室の電気を点けてくれて、これはありがたや。
深瀬昌久はかなりの変人で。デザイン会社に勤めていたころボーナス支給日に飲んで、帰りのタクシーの窓からボーナス袋からだした万札をひらひらと撒いたという話も聞いている。代表作は「鴉」という写真集で、初版はいま30万以上するとかいわれてる。家族写真も有名で、自分の嫁は上半身裸で入り込んで写っている。とにかく変な人。

ギャラリーを出て、たまたまみつけたスーパーでチョコレートを購入。お菓子買うのは久しぶりだけど、これも旅先のことだから許せ。の後は、ホテル目指してテキトーに道をあっちこっちに曲がったりくねったり。そしたら金ぴかの鳥居に遭遇した。御金神社というらしい。なんだこのキンキラキンは。でもお参りはしなかったので、これからもお金には円がないかもね。

■6時前にホテルにチェックイン、そして夕食は…

なんとか宿にたどりいた。明日の朝食は弁当で、時間内に取りに行って室内で食べるのだという。なるほど。一泊およそ6700円は高いんだか安いんだか。部屋に向かう途中、廊下の少し奥まったところに洗濯機と乾燥機がドンと置いてあって、使用希望者はフロントまで、と書いてある。予約サイトの一休で見たときは、とくに設備として書かれてなかったけど、いまはこの手のサービスはフツーなのだろうか。と思いつつ部屋に入って驚いた。なんとキッチンシンクが部屋の中にあって、電磁調理器まで乗っている。長期滞在で料理をする客もいるということか。むかしのビジネスホテルはただ眠るだけ、なつくりだったけど、設備もそんな貧乏くさくないし、ホテル業界も変容しているのだな。
えーと、歯ブラシセットはあったと思う。使わなかったけど。かつてみたいなヘアブラシとか櫛、ひげ剃りはなかった、ように思う。
ちょいと休んで7時半ぐらいに飯屋探しに外へ。カードキー忘れて閉め出し食らわないようにね。で、南に少し下って丸太町の交差点を西に折れ、丸太町通りをたらたら。けれど、コロナの影響でまだ閉めてる店が多いのか、通りはおおむね暗い。実をいうとこの通りに評判のよさそう洋食屋があるのをWebで見ていて、そこに行こうとしていたんだけど、見当たらず。のまま薄暗い中をとぼとぼ歩いていたらハマムラという中華屋があった。うろうろしても疲れるだけだし、入っちまえ。

顔がハマムラの文字になっている!

カウンターに着いてメニューを開くも定食の類はなく、料理が書いてあるだけ。なので飯は付いているのかと聞いたら別だという。夜だからかね。なので青椒肉絲に白ご飯を頼んだ。それでもスープとザーサイぐらいぐらいサービスしてくれるのかと思ったら、なし。味はまあまあ。1200円と予算はちとオーバーだけど、Webを見るとハズレの店ではないみたい。さてと。で、引き返す途中、目当てだった洋食屋が開いていたのを発見した。そういうもんだよな。もう遅いけど、ちょっとくやしい。

丸太町の交差点まで戻ると、なか卯とかマックの看板があるのが目に入る。腹がふくらんで落ち着いて見ると、いろいろ見えてくるね。でも、夜の京都はとくに見どころもないし、居酒屋に行くつもりもない。疲れてもいることだし、さっさと部屋に帰ろう。そして風呂だ。昨日の銭湯も久しぶりで悪くはなかったけど、やっぱり一人で手足を伸ばしてのびのびできるのは安まるですよ。ははは。
サッパリして。テレビを点けてみたけどとくに大事件も発生しておらず。バラエティ番組は相変わらずくだらなくて興味なし。映画が見られるようなチャンネルもなさそうで、ほんと役に立たない機械だ。というわけで、本日はおよそ21600歩だったよ。


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