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劇場版ポルノグラファー~プレイバック~に登場するあの親子の元ネタ「アケミちゃん」を読んだので感想を書きました
劇場版ポルノグラファー~プレイバック~に登場するあの親子の元ネタと教えて頂いた「アケミちゃん」を読みました。
ここからは、ネタバレありでただ感想だけ書いていきます・・・
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とてもよかった。
読み終わった今、インクの染みが広がるような余韻にじわじわと殺されてます・・・
つか、いやいや、蒼介ですよ。蒼介。いくらなんでもクズすぎませんか?www
ノリと付き合いでレイプって、そりゃないですよさすがに・・・
だって被害者がいますからね?やられた女の子の気持ちや人生考えたことある?って言いたい。
このままで終わってたまるかっ…!てまるで被害者面してるけど、自業自得だからね?本当にしんどいのは強姦された女の子よ?被害者の女性のほうが恐らくもっと苦しくて凄惨な人生歩んでると思うよ?
自分の過去の行いに後悔はしているようだけど、被害者の女の子に全く反省の念が感じられないのがクズすぎてむしろ恐怖だった。
お金の無心もね、いや分かるんですよ、恐らく本当にお金が欲しかったんじゃなくて親からの関心とか愛情とかが欲しかったんですよね?
だって蒼介の家庭環境も分かりやすく歪んでますもんね。
恐らく資産目的で大病院の娘に取り入ってちゃっかり婿入りしたくせに、春子との関係も切らない狡く不誠実な父親。
お嬢様育ちでどこか社会常識に乏しく、旦那に支配的な扱いを受け息子に依存しGPSつけるほどに過干渉な母親。
そしてそんな歪んだ親の期待通りに完璧な息子を演じ続ける兄。
そんな環境の中で十分な愛情を受けたとは思えない蒼介の生育環境には、十分同情の余地はあります。
しかし!だからと言って性犯罪が許されるわけではない。若かりし日の過ちでは済まされない。
個人的には性犯罪者は全員問答無用で死刑にすべきとの思想を持ってるので蒼介を好意的に見ることはなかなかできなかったんですが、しかし、そんな私がこの作品を嫌いになれないのはやはりそのリアリティなのです。
というのも、静雄ってつまり現代のシンデレラですよね?めっちゃダークなシンデレラ。
だって不憫すぎません?
春子さんは他人から見れば奔放で自由で強烈で含蓄のある言葉をくれるめっちゃ魅力的な人だけど、これが親となるとなかなか大変ですよ。
狭い町でクソビッチ呼ばわりされる親を持つなんてまぁまぁな地獄。
色眼鏡で見られ、教師に強姦され、おそらく性癖も歪まされ、いじめられて、高校も退学、それでもこの親から、この町から、この生活から逃げられないなんて、想像するだけで頭が痛くなるような閉塞感。
そんな静雄が不憫でならない。
その不憫なシンデレラ静雄の出口のない人生を救うのが、どクズの蒼介っていうところにめちゃくちゃリアリティを感じてしまうのです。
キラキラの王子様じゃない。完璧完全なスパダリとかじゃない。大財閥の跡取り息子とかじゃない。アラブかどっかのイケメンの石油王でもない。
構成成分の大半をダメで占める蒼介の、ほんのちょっとした、でも根底に確かに流れる優しさ、きっとそれは誰にも気付かれないでいた優しさ、それを敏感に見つけ出し惹かれていく静雄に、悲しいほどのリアリティを感じてしまうのです。
静雄はこれからも苦労しますよきっと。あの蒼介じゃ大変でしょう。何も持たず身一つで駆け落ちしちゃってどうするの。
男運が悪いって言った春子さんの予言めいた言葉はきっと当たる。
でも。それでも。
社会から溢れ落ちそうな2人が、少しずつ心を通わせて惹かれ合う過程がとても丁寧に描かれていて、そこにわずかでも希望の光が見えるところに、とても感動してしまったわけです。
性加害者と性被害者。
この2人をただの善悪で描くのではなく、傷や感情を抱えるいち人間として描く手腕はやはりさすがと言わざるを得ません。
家族のトラウマは根深いです。過去の傷は簡単には自分を解放してくれません。
そしてどれも愛や美談や理想論では片付かないことが殆どです。
だからこそ、安易に物語を盛り上げる為の道具には使わない。当事者の気持ちを理解した上で一番苦しんだ者が救われる道をそっと提示してくれる。それも押し付けがましくなく。
そういう作風の丸木戸作品はだから信用できるし、そこが私が丸木戸作品の好きなところなんだと改めて思いました。
閉塞感の中に確かに息づく生命力とか、諦念の先に見える光とか、傷を持った者同士が持ち寄って分け合う小さな愛とか、丸木戸作品は深く優しく、あやすように私の心を侵食してくる。
だから困る。
それにしても静雄の気怠げな色気がすごいですね。
改めて、この静雄を奥野くんが演じてくれてよかったと思いました。
ただの不憫な色気のある子ではなく、しっかり意志があり自分の足で立って生活している。寡黙に気丈に母親を支え、クールで硬派だけどどこか寂しそうで不安定。
そんな凄く魅力的なキャラを映像で生み出してくれていたと思います。
春子さんは、原作の方がもっとサバサバしていてもっとどぎつくて生命力の塊って感じですね。
プレイバックの方が色気むんむんで女っぷりが際立っていてどこか隙と愛嬌があった。
原作の春子さん、最後に静雄を蒼介の元に行けるよう解き放ってあげるのはは男前で素敵だったけど、今まで静雄にかけてきた苦労を思うとなんとも言えない…つかいやむしろマイナス。という気持ちになったりもしましたが、基本的にどっちの春子さんも大好きです。
しかし本当は宝くじが当たったんじゃなくて手切れ金だったんですね春子さん。
この話をプレイバックにクロスオーバーさせた意味とか考えてみたりするけど、そんな事考えなくていいという声が聞こえてきそうだし考えたところでバカだから分かりません。
しかし、世界観はどこか似てるものがあると確かに感じました。
そして似ているとするならば、どちらかというとインディゴの方な気がします。
静雄のどこか人生を諦めてるような諦念感が、インディゴの最初の頃の木島と被るし、その扉を開けて静雄を外の世界へ連れ出す蒼介が、木島の生活を救った城戸とオーバーラップします。
たからだろうか。
2人が結ばれたことになぜか私の心が救われて少し泣いてしまった。
(疲れてるのかな?)
作品全体に漂う色気、退廃的な空気感も好きで、これを映像化したらどんな絵になるんだろう、なんて読みながらつい考えてしまいます。
もし撮るならぜひ三木監督に撮って欲しいな、なんて思う私はすっかり三木ワールドに毒されてるんされてるんだろうな。
なんて思うととても光栄 笑
最後2人の甘い後日談も見せてもらえて幸福度の高いラストもよかった。
しかしタイトルから想像してたのと違ってちゃんと普通にBLで驚いたな。
あと同録の「青い影」の続きが気になり過ぎる。
っていう雑な感想でした。
おわり。