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劇場版ポルノグラファー-プレイバック-初見感想

こちらはXからの転載となります。
ずっと見たかった劇場版ポルノグラファー-プレイバック-をFODで視聴して感動のままに書き殴った感想文です。(2024.07.19 Xに投稿)


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とうとう見ました。劇場版ポルノグラファー-プレイバック-。
今は感動と余韻で窒息しそうな程に苦しいです。
最高だった。
最高だったのだが。
しかし。

しかしだ。

 え?
待って!待って!
マジで待って!
りおちゃんが…
りおちゃんが……

 

 

クソめんどくさい!!!!

 

 

 

そうなんです。
いやいや、もちろんあの一筋縄ではいかない木島理生だからそんな甘々ラブラブの新婚生活、みたいなのはさすがに期待してなかったけど、インディゴのラストのあの甘い雰囲気からの待ちに待った劇場版、少しは付き合いたての2人の甘いイチャイチャが見れるのかなと思うじゃないですか。

 いや、ありましたよ。冒頭から目が飛び出る程濃厚な濡れ場がありまして、そりゃもう目ガン開きで鼻血吹きながら拝ませてもらいましたけど、まさかその後からずっーーとケンカばっかりしてるなんて思わないじゃないですか。

 しかも痴話喧嘩なんてぬるいもんじゃない。いい大人がすると思えない犬も食わないほどのガチ喧嘩。
しかもそのほとんどがりおが悪い。

 いや、悪いっていうか、あまりにもメンヘラ。
というか、マジで面倒臭すぎん?君そんな面倒臭い彼女やったん?っていう・・・笑

いや、面倒臭いというか、マジで人とちゃんと付き合ったことがないというか、決定的に他人の気持ちが分からないというか、空気も読めないし社会性もゼロ、ネガティブ思考に縛られて勝手に暴走していっぱいいっぱいになってキレ散らかして自滅するという、前代未聞のメンヘラ。

だって最初のセクキャバのとこからもうおかしいもん。
いやいや・・・え?そんなキレる??

いや分かるよ、そりゃいい気はしないよね、恋人が他の女の胸触ってるとか、膝の上に女乗せてるとか、そりゃ面白くないのはもちろん分かるけど、さすがにキレすぎじゃない?
つか、だいたい実演させたのりおやんっていう、で真面目に実演する久住くんも久住くんだしなにこのバカップルって思わないでもないけど、いやほんと春彦くんにも社会人としての付き合いもあり事情もあるとか、そんな社会常識りおちゃんには通用しないんですよね。

だからっていくらなんでもあんなに春彦くんを怒鳴りながら投げ飛ばすほどキレる?
つか、速攻でスマホで調べてるのもおもろすぎるやろ。
携帯はギリガラケーを机の引き出しにしまってる程度にしか興味なかった人があんなに早打ちでスマホ検索するまでになってるのは驚き通り越しておもろすぎる。
そこは爆速で成長してるのに、メンタルが子供のまますぎてもうなんなのこの子。

なのに、あくまで自分は冷静で聡明な年上でいたい気持ちがあるんだろう、「僕は気にしない」とかバレバレの嘘言ったり、「僕の若い頃はもっと遊んだ」とか張り合ったり、もうほんとただの子供。
ヤキモチとか可愛いもんではなく、行動と言ってることバラバラでキレ散らかすのほんと手に負えない。

「もっと気楽に考えろ」とか言って誰よりも気楽じゃないのはりお。
「真面目なお付き合いって大変だね」って、大変にしてるのはりお。

妹の車乗り回して、自分の部屋用意してもらって、上げ膳据え膳でまともに姪っ子の面倒もみず、作品の創作もできてるのかどうなのか・・・
その上いい歳して家出って・・・

いやほんと、アラフォーの成人男性が家出って、なんかもうよく分からなくって、「家出ってなんだっけ?」ってなりましたよ。いや一周回ってそれもありか・・・うんうんみんなやってるよね家出、なんてもうわけわからない境地にいきそうでした。

ただ家出先が春彦と逢瀬を重ねたホテルっては、やっぱり春彦との時間は幸せだし素直な自分でいられる時間だったんじゃないかなと思うとそういうところは可愛い。

ほんとそういうところは可愛いんだが、でもなんかまた他人のトラブルに巻き込まれて、挙句また手の怪我してるし、
(ほんと木島こればっかりですよね笑 ギブスして登場した時はまた?ってさすがに笑ってしまったけど、ま片手吊ってこその木島先生って感じでちょっと嬉しかったりもしました)
で、遺産がどうとかまた凝りもせずしょうもない嘘ついて、場末のスナックに流れ着いてヒモ生活とか、典型的なダメ大人のフルコースでほんとどうなんりおちゃん、と・・・

ほんとね、途中から春彦が可哀そうで可哀そうでたまらなかったです。

必死に休みもぎ取って、必死に探してスナックまで会いに来たのに、まさか若い男とまた口述筆記してるとか・・・

ほんと、口述筆記ね。びっくりしました。春彦じゃない私ですらおいおいまじか・・・ってなります。
いや分かる。今度は本当に利き手負傷してるし、今はスランプじゃなくてちゃんと仕事してるし、本当に執筆手伝って貰わないといと困るから、久住くんのときみたいな変なスケベ心ではないのは分かるけど、でもやっぱりあれはさすがに可哀そうですよね。ふたりが出会い恋が芽生えた大切な思い出なのに。
まるで浮気現場に遭遇したような春彦の絶望と怒りの顔が気の毒すぎて泣けます。

つか、ポルノ作品を未成年に口述筆記させていいのか笑(え?しずお未成年ですよね?違う?)
しかし春彦はどうやって探しあてたんだろう。スマホにGPSでも仕込んであったのかしら。

そしてどんどん訳も分からずに見知らぬ親子と、りおの気まぐれに巻き込まれていく春彦。
ごたごたの合間を縫って必死にお出かけに誘ったらなんと「鬼」呼ばわりって、あまりにも理不尽すぎる。
なにか?りおさんは、2年半かけて愛を育ててきた自分より、昨日今日会ったこの馬骨の親子の方が大事なんか?って思いますよね。もうそりゃ絶望ですよ。

ほんとね、来てくれてありがとう。会えて嬉しかった。くらい言ってあげるんだよばかりお。
社会人の有給なめるな。広告代理店の忙しさなめるな。(知らんけど)

挙句の果てに「狭量」呼ばわりとかマジでもう・・・
好きな人に会うためにどれだけ必死になってるか全然分からないんですよね。
いや、むしろ、分かるからこそ必死で遠ざけようとするのか?

もう辺りはさすがに春彦がかわいそうすぎて泣きそうでした。

でも春彦に本気で掴み掛かって怒鳴られたら素直に謝るんだから、悪気はないんですよね。でも悪気がないからこそ逆に厄介。
「君本当につらそうだ」ってマジで相手の感情がわからないところは少し薄ら怖くさえありましたね。ちょっとしたサイコパスみ。

いやぁこれはマジで大変ですよ。
このタイプの人には、押したり引いたりとか、感情の駆け引きはほんと無駄なんだよな。
これは確かに先が思いやられる。

正直ポルノグラファーとインディゴを見てなかったら、まじで木島のキャラについていけなかったかもしれない。
でも木島理生っていう人を散々前2作で学習させられたので、しょうがないなぁとなんとか笑ってみることができました。

しかしそんな私の気持ちがちょっと揺らぎ始めたのが、実家の平凡で幸せな日常に馴染めなかったあの時。
視界が歪んで吐き気を催すほどに幸せで平凡な日常に馴染めない木島を見た時です。

そうなんです。そうなんですよね。こんなに厄介で面倒くさいけど、理生は生粋の作家なんですよね。物を生み出す芸術家。
だから、

満ち足りるのが怖い。
幸せになるのが怖い。
平凡な幸せに安穏と流されて創作できなくなる自分が怖い。
大切なものを持つのが怖い。失うのが怖い。
そしてそんな自分の人生に久住を巻き込むのが怖い。

そう。木島理生は天才なんです。天才が凡人の凡庸な日常に埋もれていいわけないんです。
キレ散らかすのも、家出も、日常への抵抗も、木島の最後の足掻き。
安穏からの逃亡は生きるための最後の生命線なのです。

やっぱり木島理生の根底には、ずっと不安と恐怖があるんですよね。

 実は、木島の実家ってとても健全で愛に溢れたごく普通の幸せな家庭なんですよね。
正直お父さんとのことがあったからどんだけ荒んだ家庭環境かと思ったけど、全然。本当に田舎で賑やかだけど慎ましやかで穏やかな愛に溢れた家庭だった。

でもそこにいれなかったのは、やはりおそらくそんな平凡な幸せに埋没して生きることができなかったからだろうと思います。

だから東京に出て、作家になって、自分の世界を文章で表現する道を選んだ。
自分を追い詰めて命を削ってひとつひとつ文字を生み出す。作品を生み出す。
そうしなければ他者と関わることができない。そうしなければ外界と接することができない。そうしなければ生きていくことができなかったから。
そんな理生が東京の生活に挫折し、現実的に経済的な理由もあり実家に戻ったものの、やはり馴染めない自分にどんどん苦しさが増すばっかり。

どれだけ快適な部屋が用意され、食べるものに困らず不自由なく生活が満たされても、いや逆に満たされれば満たされるほど、それこそ潮の満ち引きのように反比例的にどんどん精神が追い詰められる理生。

このしんどさはポルディゴで木島理生という人を散々学んできた我々はやはり共感せずにはいられない。
私も我知らず木島の心情にだんだん共感させれられていきました。

そして、春子の言葉。
「プラスはマイナスの可能性」
「だからって手に入れるのをやめるなんてそんな人生真っ白な預金通帳のようなもの」
「タフじゃない。タフになるのよ。大切な人がいるなら」

この辺の言葉はさすがですよね。名言のオンパレードで胸の奥までグサグサ刺さります。
丸木戸作品は、本当に台詞のひとつひとつが深くてすごい。

春子のこの言葉で春彦に会いにいく決心をした理生。

この時、重く暗い曇天だった土砂降りの空から、ぱぁぁぁっと太陽の光が差し、画面の彩度がぐっとあがったのが印象的でした。
この演出すごかった。
まるでもやもやと行き場のなかった理生の心が、未来に向けてすっと視界が開けたような。

そしてここでの音楽です。
ポルノグラファーシリーズを影に日向にずっと支えてきたあの象徴なメインテーマ、暗く悲しく陰鬱だった旋律が、明るい長調にアレンジされて流れるんですよね。
こんなにすれ違ってばっかりのどうしようもない2人だけど、少しずつ少しずつ明るい未来が示唆されているようでぐっと胸がつまりました。

 そして車を降り駅に向かって走り出すりお。・・・といってもほんの数mだが笑
でもそれは大きな数m。今まで電話ひとつメールひとつアクションを起こせなかった理生が初めて自分から春彦に動き出した大きな、大きな一歩なんですよね。

走り出した理生はかっこいい主人公の走り方なんかじゃありません。
好きな人に向かって我を忘れて全力疾走する姿はたくさん見てきた気がするけど、ノタノタと、いかにも普段運動なんかしてませんという引きこもりのオタクの走り方。
ポルノグラファーのラストで先生に向かって全力疾走したあの春彦となんと大きな違い。

でも。でもそれがたまらなかった。
あの先生が、あの木島理生が初めて自分から春彦に向けて自分の意思で踏み出した大きなる一歩。
決してかっこいいとは言い難いその不恰好な走りを見ながら私は胸が締め付けられました。この一歩がどれだけ大きな一歩なのか、どれだけ大きな一歩なのか私たちは散々思い知らされてきたんだから。

途中電車の扉の前で乗るのを躊躇したように見えた時は、また逃げるのか?とヒヤヒヤさせられました。
また辞めるの?また逃げるの?
でも違った。強い決意で電車に乗り込んだ理生はもう今までのの理生じゃない。

行け!頑張れ!

別に何にもしてない。ただボーと電車に乗ってるだけの冴えない中年のおじさんをこんなに手に汗握って応援したのなんて初めてで意味分からなすぎて笑えてきます。

そして決定的に私の情緒をおかしくさせたのは、素足にボロボロのサンダルを見せられた時です。
あのカットを一瞬差し込む三木監督天才すぎませんか。
このワンカットでまんまと私の感情は決壊しました。

身なりのちゃんと整えた、いわゆる普通の人達がたくさん運ばれていく電車でひとり、いい歳した大人がなにも持たずこんなみすぼらしいサンダルで乗り慣れない電車に乗っているその姿。

そう。木島は、木島なりに、必死なんです。

空気読めないし、他人の気持ちが全く理解できないし、ひとこともふたことも多いし、不器用なくせに繊細で、プライドばっかり高くて、ひねくれてて、しょーもない嘘ばっかつくわ、自分のこと棚に上げて他人を非難したかと思うと、ネガティブ思考で落ち込んだり、他人の言う事なんて全然きかない、ほんと面倒臭くて生きる力がどこまでもゼロに近い、そんな人だけど、そんな人が必死になりふり構わず好きな人の所へ向かう。

あのワンカットを差し込むの三木監督本当に天才すぎます。
もうあれ見ただけで胸が一瞬で締め付けられて苦しくなりました。
苦しくなってどうしようもなく情緒が乱されて、木島理生がどうしようもなく愛おしくなりました。

そして、何も持たずにただ身ひとつで会いにきた木島。
どうですか、この姿。春彦のアパートを見上げる木島の小ささに私はまた胸が苦しくなるのです。

やっと電話してきたかと思ったらそれも友達伝い、友達っていうか城戸、過去の関係を疑ってるあの城戸、そして腕を負傷し、全然社会性のかけらもないダラダラのシャツに素足にサンダル、気の利いた挨拶ひとつできない、家賃とかほんとどうでもいい話しかできない、ほんとどうしようもない木島、そんな木島がたった身ひとつで会いにきてくれた。

そんな理生を見た時の春彦は、もう謝罪の言葉なんて必要ないくらい、そんなものなくてももう理屈じゃないところで、今ここに会いにきてくれた理生が本当に、本当に嬉しかったんじゃないだろうかと思います。

そしてここからの理生がもう本当にいじらしいんですよね。
コーヒーを淹れる後ろ姿を不安げに窺う目。居心地悪そうにもぞもぞする様子、背筋を伸ばしてご機嫌を伺う緊張感、「置いてかれる方の気持ち分かりましたか?」って問い詰められて上半身ごと頷く姿なんてもう今時幼稚園児でもしないんじゃないかと思う素直さ。
そして深々と愚直に下げられた頭。その頭をなかなか上げない頑固さ。

ここから木島理生の一世一代の告白が始まります。

「君と向き合うのが怖かったんだ」
「こんな僕を君は必要としてくれるんだよね。それを僕は信じたいと思った」

ずっと届かなかった言葉が届き始める瞬間。
歴史的異星人交流の瞬間です。

そしてとうとう、とうとう一番大切な言葉が木島の口から、自らの意志で発せられます。

「僕が一番愛してる人だから」

この時の春彦の湧き上がる感情が抑えきれない顔がたまらないです。そりゃそうだ。あの木島がしっかり目を見て自分の口で「愛してる」なんて・・・見てる私なんかもうとっくに号泣だ。

そして理生を抱きしめる春彦。
この時の春彦の涙、想いが溢れて止まらない涙が、本当に綺麗です。

スナックでは「春彦!!」ってあんなに絶叫してたくせに、「ハ・・・ハ・ル・ヒ・コ」って初めて言葉を喋る悲しきモンスターみたいなのなにそれ。ただ名前を呼ぶだけでこんなに年月かかる人いる?不器用すぎるにも程がある。
そして「僕と付き合ってくれ」なんて、今時中学生でもしないような初心すぎる告白。
この時の「返事は?」って不貞腐れたように言う理生の精一杯の照れ隠しが、あまりに可愛すぎて泣くしかない。
こんな人確かにほっとけるわけない。こんなわけ分からない人、こんな人好きになるしかないです。

こんなピュアピュアな純愛見せられて私はどうしたらいいんですか。
涙を流しながらのふたりのキスは本当に美しかった。

なんかもうここまでの流れが完璧で、正直もうこれで完結してもいいのではないかと思うくらい素晴らしい流れでした。

しかし、ここからまだお話は続くのです。

ここでする?とかわいくおねだりする理生を「実家に行こう」と満面の笑みで制する春彦。
いい年して家出とかしてるどうしようもない理生の、家族との問題を解決するための春彦の機転と優しさなんですよね。
そう。優しさなのですそれは。例えそれがどんな焦らしプレイでも。
いやいや、こんなに盛り上がっておきながら、東京から3時間はかかるであろう理生の実家までお預けとは、さすがにどエスすぎん?
うきうきと旅の準備をする恋人を尻目に、ひとりソファにぽつんと放心したような理生が可哀そうで可愛かった。

そしてやっと帰ってきたかと思ったら謎に腕を怪我してる困った兄も、なんとか無事家に迎え入れられ、微妙な空気をまき散らしながらも、なんとか仲直りをした理生とその家族。
また空気の読めない発言をして場を凍らせても、そんな理生を見る春彦の目はどこまでも優しいのです。
もう理生丸ごと家族までしっかり愛していこうという決意が現れていて、春彦がひとつもふたつも大人に見えます。

そして最後の濡れ場ですが・・・
もうちょっとここは多くは語りません。つか、語れません。
ただただ名前を呼び合って求め合う姿があまりにも美しく感動的で・・・

声出さない自信ある?って、声出しまくるのは君だよ、りおちゃん、とか
案の定喘ぎまくってるやん、りおちゃん、とか。
あ、眼鏡は自分で外す派なんですね。いいですねエロいですね、とか。
りおの腹斜筋を舐める春彦の攻めっぷりに沸き散らかしたり。とか。
いや、指咥えて声我慢するのさすがにエロ過ぎん?とか。
爆速で動く春彦の右手のパワープレイに感動したり。とか。
つか、これもう余裕で家族に聞こえてますよね。とか。

そんなんもうどうでもいい。どうでもいいのです。

♪呼び合う聲は幻想~と歌われたポルノグラファーから、今まさに幻想ではなく現実にお互い名前を呼び合って求め合う姿が本当に美しくて幸せで尊くて・・・
あんなにすれ違っていたふたりが、とうとうここまできたかともう涙なしでは見られないです。

眠る春彦を見つめる理生の目の優しいこと。ポルノグラファー3話のあの朝の目と全然違います。
視線に気付いて振り返る春彦の第一声が、「手痛くなかったですか」って、まず一番に理生の怪我を気遣うのも愛が溢れてて泣けます。
ここで春彦の頬にそっと手を添える木島が、ポル3話のあの名キスシーンを彷彿とさせれてまた私の胸は苦しくなるのです。

「君が好きだ。どうしていいか分からないくらい好きなんだ」
「知ってます」「大丈夫ですよ」

ここですよね。「俺も好きです」。ではなく。「大丈夫です。」
なんですか、このキラーフレーズ。
木島理生のいい所も悪いところも面倒くさいところも繊細なところも全部全部理解し、全てを引き受ける春彦の愛と覚悟が伝わってきてたまらない。もう尊い以外の言葉が出てこないです。

そして最後の妹さんの笑顔ですよね。

襖開けられた時は、身内バレやば!裸で抱き合ってる所見られるなんて無理!死ぬ!と、とても耐えられなくて一度動画を停止してしまったけど、妹さん激しく動揺しつつもちゃんと受け入れてくれてよかった。
あのお兄ちゃんに人生のパートナーができていたんだと知って、安心とも喜びともつかない笑顔を浮かべるその表情には、確実に兄に対する愛がありました。

そうなんです。
ガチガチに卑屈の殻に閉じこもって自己防衛していた頃には気づくことはできなかったけど、木島理生を取り巻く世界は実はこんなにも優しいんです。
妹だけではない。いい歳して家出なんかする放蕩息子にも優しく温かい愛情を注いでくれる母親。
妹と母親の間にたって義兄の突拍子もない行動をそっと見守ってくれる妹婿。
そして城戸。
ただ恋人に電話をかけてくれ、というためだけに呼び出されても、ぶつぶつと文句を言いつつも2人の仲を心配し自分への燻る気持ちを持ち続けてくれる、腐れ縁であり戦友でもあり、絶対に自分を見捨てない男。

そして父親。そう。おそらく父親もです。
強い確執のもと言葉を交わすこともなく旅立ってしまったあの父親も、見方を少し変えれば、ちゃんと理生のことを愛していたんじゃないかと思います。
この父親ともう少し言葉を交わせていられたならば・・・
きっと言葉足らずの父親は理生と似たもの同士だったのかもしれない。似た者同士だからこそ分かり合えなかった。

「幸せなんて月の満ち欠けみたいなもんじゃねぇのか。本質的に幸せな人間なんているのかねぇ」

蒲生田先生のこの言葉、ポルノグラファーシリーズ通しても、深く深く心に刺さる一番の名言だと思いますが、この言葉を理生は春彦の腕の中で思い出すんですよね。
未来を恐れ、他人と関わることを恐れて、身を守ることに必死たった理生にとって、自分だけが満たされなくて不幸で、他人はみんな幸せに満ちていてるように感じていたんだと思います。
だから自分なんかが他人と関わってはいけない、関わったら幸せな他人を不幸に巻き込んでしまう。
そう信じて疑わなかった理生にとって、きっと蒲生田先生の言葉は忘れていたんではなく、心が受け入れることを知らずと拒否していたんじゃないかと思います。
記憶には残ってたが、心が拒否をしていた。
自分の面倒だけでいっぱいいっぱいだった理生にとって、他人の寂しさを受け入れる許容はなかったんだと思います。

それが春彦と会ったことで、春彦のまっすぐな愛を受け入れたことによって、他人の寂しさに初めて気づけた。
他人も満たされない心を抱えて寂しさと折り合いをつけ、まるで月の満ち欠けのように心のバランスを保ちながらなんとか日々を生きている。
それに気づかせてくれたのは紛れもなく春彦であり、その時初めて、自分が他の人をただ不幸にするだけの存在ではないと気づけたんではないでしょうか。
それに気づいて初めて、蒲生田先生の言葉が初めて理解でき、胸にストンと落ちた。
そんな気がします。

この蒲生田先生の言葉を物語の核に持ってくる手腕はあまりにも素晴らしくてもうお見事というしかないです。
今の木島の全てを作ったといっても過言ではない、文学の師匠にして、第二の父。
この蒲生田先生がやっぱり最後の最後、理生を救ってくれたのです。
こんな見事な伏線回収あるでしょうか。

この辺りから、今までずっと無彩色でどこか仄暗かった映像に、光がさし明るく彩度の高い色彩豊かな映像になっていくのが印象的でした。
見ている私の心まで苦しいくらいに晴れ晴れして、幸せなのに笑いながらなぜか涙が止まらない。

そしてラスト。
笑顔。理生の笑顔です。満開の桜を見上げる理生の笑顔。

もうほんとね、あんなに生きながら死んでるような幽霊のような顔で歩いていたポルノグラファーの木島理生が、最後美しく舞う桜を眺めながらあんなに満ち足りた穏やかで希望に溢れた笑顔を見せる。ずっと無彩色だった木島が鮮やかに色づきほころぶ。
こんな最高のフィナーレあるでしょうか。
ポルノグラファーからの長い長い恋の旅の終わりが、あまりにも素晴らしすぎて私は息ができない。

「君と生きていきたいから」
この台詞を、春彦と会って直接言おうと笑う木島の笑顔があまりに、あまりにも素晴らしくて、長い長いシリーズの終わりがこの笑顔だったことにもう大拍手を送るしかないです。

「代筆」という「文字」を介して始まった2人の心、「文通」という手段でしか伝えられなかった未熟な恋、それが最後「文字」を飛び越え、直接会って、直接言葉で伝えようとまで成長した木島理生。
春彦と出会って恋に落ちて、付き合うとは決めたものの、あまりにも未熟すぎた2人。
そんな二人がもう一度恋をやり直すかのように不器用に懸命に生き直す再生物語。
そう。まさにこれは2人の「再生」、プレイバックなのです。

最後のワンシーン。
あれだけ汚れたていた灰皿が、まるで理生の心を現してるかのように吸い殻ひとつく綺麗になっているのも、刊行された新刊のタイトルも、装丁も、なにもかも本当に素晴らしい。
もう大号泣しながら全力のスタオベです。

思うに、久住くんは強い太陽の光で、理生はそれによって薄く輝く月のようなものなのではないかと想像します。
春彦という明るくあたたかい太陽に照らされながら、時に満ち時に欠けながらもずっと木島は夜空に輝いていられるのかもしれない。

きっとね、城戸は似たもの同士すぎたんだと思います。きっと近すぎて、似すぎていて、お互いがお互いの光を消してしまう。きっと皆既月食のようにお互いの姿を隠してしまうのかもしれない。
それこそダイヤモンドリングのように、時々は刹那的に輝くこともあるかもしれないけど、きっとその輝きは永遠じゃない。

「明日なんかこなくても二人なら傷を舐め合っていられる」これが城戸との関係。
「溢れる夜が明けて光とともに明日へ向かうことができる」これが春彦との関係。
そんなことを思ったりしました。

♪星で編んだドレスも群青色の髪飾りも ひとつひとつ貴方の為に用意したんだよ 
と歌われるように、全てのシリーズの全てのシーンが、この木島の笑顔に繋がっていた。
シリーズ全編を通してその完成度にも、その熱量にも、感動が止まらないです。

劇場版ということで、冒頭からポルノグラファーのあらすじを振り返ってくれる作りもよかったです。
あぁそうだった、こんなこともあったと振り返りながらスムーズにプレイバックの世界観に入っていけて感動したな。

あと、あと俳優さん容姿も。
ポルノグラファー放送からリアルに2年半が経過してるのもあってか、久住はしっかり大人の精悍な顔に、木島は実家の田舎で刺激がないものの健康的で穏やかな生活を送ってるんだろうなという雰囲気が出てて、作品がリアルに時の流れとともに作り上げられてきたんだなと感じれてとても感動しました。

あと冒頭で、春彦が理生さん呼びに変わってたのも2人の時の流れを感じてエモかった。
ちゃんと不器用ながらにもしっかり恋を育ててきたんだなと感じさせられました。

それから、いくつかポルディゴをオマージュしたエモいシーンがありましたね。
ソファで眠る春彦に唇を寄せるシーン。時刻もまさにあの時と同じ深夜25時。
あのポルノグラファーを象徴する名シーン、ベッドでのキスの再現だけど、今度は木島からっていう激エモのシーンでしたね。
でも、ここでキスができないんですよね。
あの時は木島が目を開けて濃厚なキスに流れ込んだけど、今後は春彦が目覚めてそしてひとり背を震わせて泣くという・・・
あぁ、もうなんでこんなすれ違うの。えっちの時はあんなに積極的に舌入れまくるのになんでこんなささやかなキスができないんだ。泣

あと、最後の濡れ場で、理生から春彦を攻めた時、「それって僕とセックスしたいってこと?」の一作目のあのシーンを彷彿とさせられましたが、今回はやられっぱなしではなく形勢逆転して理生を攻めたところに、2人の関係がちゃんと成熟したものになったんだなと感じて、勝手に感慨深くなったりしました。

こうやってドラマのシーンを踏襲してファンのツボをちゃんと抑えてくれるの劇場版ならではのありがみですよね。

そしてあとやはり強く印象に残ったのは、城戸との再会シーンです。
「お前とそんな関係になる可能性ってあったのかな」と問う城戸に対して、迷いなく「ないよ」と答える木島はたぶん、未だ燻り続けている城戸よりもずっとずっと深く長く2人の関係に悩み苦しんできたんだろうと思わされました。
悩み苦しんできたからこそ、春彦に出会い春彦に向き合うと決断した今、やっと迷いなく答えることができたんだろうな、と。

去り際の木島の背中。
インディゴのラストと違って、今度は「またね」とは言わないんです。
「じゃあね」と片手をあげながら振り返らず去っていく後ろ姿は、決別というより城戸はなにがあっても自分を捨てないという絶対的な信頼のように見えました。
そんな木島の背中を見送る城戸の表情、最高だった。燻った気持ちを持ちつつも、木島の幸せを心から祈ってる・・・
このふたりはきっとこうやってつかず離れずの関係を続けていくんだろう。
インディゴの気分のあのラストに対してのひとつの答えを、しっかり見せてもらえた感じがして、私の心にもストンと小さな決着がつきました。

あと加えて、どうしても語りたいのは、やはり主題歌です。
シリーズ通して作品を、理生を春彦を城戸を、時に優しく時に悲しく、ものすごい存在感で支え続けてきてくれた鬼束ちひろさんの素晴らしすぎる曲ですよね。
ポルノグラファーの「Twilight Dreams」、インディゴの「End of the world」の暗く悲しい雰囲気の曲調に比べて、「スロウダンス」の、明るい未来を想像させる、愛と希望に満ちた曲調に、何度感情を決壊させれらたか分かりません。
こんな最高な曲を作ってくれた鬼束ちひろさんにも心からの感謝です。

本当に、原作、脚本、映像、音楽、監督、俳優・・・どれひとつが欠けてもあり得なかった全てが奇跡とも呼びたい素晴らしい名作だと思います。

今でこそ、ドラマがヒットしたら続編からの映画化ってのは、ある程度成功ルートとして定番化されてると思うけど、その筋道を作ったのはおそらくポルノグラファーなんですよね。ずっとリアルタイムで応援されてきたファンの方の熱量と、歴史を作った先駆者のエネルギーに遅ればせながらでも出会えて、興奮と喜びが収まらないです。
実写BLの先駆者たちのエネルギーはとてつもなかった。これを越えられる作品なんて今後出てくるんだろうか。

私はひとつでも多くのBLドラマを見る!というのが今人生の目標だったりするので、今後もたくさんのBLドラマを見ると思います。そして色々滾り散らかすと思います。
でもこれだけは言い切れる。
ポルノグラファーを超えるBLはこれから先、たぶんない。

とにかく。
ポルノグラファーは春彦目線、インディゴは城戸目線、それぞれの木島理生の捉え方があり描き方があり、木島の掴みどころのない性格を色んな角度で描かれていました。
しかし今度はいよい木島理生の目線。
より深く人物を掘り下げ解像度を上げていく作業が必要だったんではないかと思いますが、今まで描いてきた木島理生と全く矛盾することなく、より説得力を持たせ人物に幅と深みを与えていました。
劇場版を見てからまたポルノグラファーやインディゴを見返しても全く違和感がない。
それどころか、より人物を見る視点が増え、人物に深みが増していました。
これだけ掘り下げても一切ブレないキャラ作りにも緻密なストーリにも本当に、本当に大拍手です。

あと最後に語りたいのは、やっぱり濡れ場。
これも本当に素晴らしかった。
前から思っていたんですが、三木監督って、キスシーンの見せ方がすごくお上手ですよね。
たっぷり時間をとって、見つめ合って唇を寄せるまでをたっぷりじっくり見せる。唇が触れ合ってからもとにかく唇の動き、舌の動きまで、二人の表情をアップでしっかり見せる。
とにかくキスシーンを綺麗に見せるんだ、という強い信念があって、どちらかというと「性愛」よりも「SHOW」の要素が強い見せ方だと思うんです。
それが今回のプレイバックでは、そういう「SHOW」的な見せ方というよりも、愛する者同士の自然な行為として描かれていたように感じました。純粋に愛の行為として、行為そのものを真っすぐに描かれていたというか。

だって、春彦の彼氏感やばかったですよね。
インディゴの城戸との絡みもめちゃくちゃエロかったけど、城戸は木島に愛があるかっていうと微妙なんですよね。
いや執着はしてるんです。でもそれが愛かっていわれるとなにかが違う。
でも春彦のセックスにはちゃんと愛がありました。
愛があってちゃんと彼氏感があって、理生さんを気持ちよくさせたい、大切にしたい、可愛がりたいの気持ちがちゃんと伝わってくる、好きの気持ちが溢れてる行為でした。
あぁ・・・ちゃんと彼氏のセックスだなぁと、見ていてめっちゃときめきました。
だって、イった理生に優しく口づけるとか、自分を見つめる視線の気配だけで目を覚まして微笑むとか、手の痛みを心配してくれるとか、「好きだ」と言って泣く理生を優しく抱きしめるとか、そんなこと城戸には絶対できないもん。
いや、城戸もめちゃくちゃエロかったですよ。エロかったけど、やっぱり本命彼氏の威力はすごい。

春彦の理生への愛をこれでもかってくらい見せつけられて、なんだか勝手に白旗上げて大喜びで降参したい気分でした。
さすが本命彼氏。
前回、「城戸のドSを若さでカバー」と書きましたが、違いましたね。
「若さ」ではなく「愛」でカバーでした。(拍手)

ポルノグラファーシリーズで代名詞と言っても過言ではない濃厚な濡れ場ですが、その濡れ場一つ取ってもちゃんと意味があり、ちゃんと2人の気持ちや関係性が表されている。
ただ濃厚なだけじゃない。エロいでしょ。こういうのが見たいんでしょ。では決して終わらない深い描写にも心から大拍手です。

本当に長い旅でした。
ポルノグラファーから続編のインディゴ、そしてとうとう劇場版まで作成されるまでリアルタイムで応援されていたファンの方達の熱量も伝わってくるようで、全て含めてひとつの大きなドキュメンタリーを見ているような気分にもなりました。
この2年半をまるでリアルタイムで一緒に走り切ったような爽快感と感動の嵐で鳥肌が止まりません。

作品に関わった全ての方、丸木戸マキ先生、三木監督、竹財さん、猪塚健太さん、吉田さん、そしてリアルタイムで熱い気持ちを持って応援しここまでシリーズを導いて下さったファンの皆様に、感謝の気持ちでいっぱいです。

ポルノグラファーシリーズに出会えて本当によかった。

とうとう劇場版まで見終えてしまって、寂しい気持ちもありますが、ただ!
私にはまだ春的生活と、続・春的生活がある。
いえ、それだけではない。なんと!特典映像もまだ待っているのだ!
円盤買ってよかった・・・じゃないとロスで死んでしまうところだった。笑

私のポルノグラファーの旅はまだ終わらないぞ。

ということで、
本当にとりとめなく読みにくい文章、お付き合い頂いてありがとうございました。
まだ言い足りないこといっぱいあるので、また雑感とか書くかも。(書かないかも)
その時はまたお付き合いいただけると幸いです。
最後にひとつ。

いや、冒頭の濡れ場すごすぎない?!!
皆さんどんな顔して劇場で見てたんですかぁぁぁぁ・・・!!!

 

ご精読ありがとうございました。

おわり

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