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エッセイ|変な人だと言われましても。
私はどうやら「変な人」らしい。
どこがどう変なのか教えてほしいのだけれど
明確な答えがもらえたことはない。
ただ、家族、友人、知り合い、面接官にいたるまで
私を「変わっている」と形容するということは
きっと私と世間とのあいだにはズレがあるのだと思う。
初めての就職活動。
筆記試験を突破した後も面接に次ぐ面接。
個人面接とグループ面接、そしてディベートと
とにかく話すことを要求された。
数ある問答の中で唯一覚えているものがある
「あなたはストレスにどう対処しますか」
この質問に対して一般的にはどう答えるものなのか
私にはいまだにわからない。
テンプレ的な回答があるのだろうか。
私は特に深く考えることもなく
「とりのからあげを3キロほど揚げます!」
と笑顔で答えた。
……
…………
面接会場の空気が一瞬止まったのち
「3キロは揚げすぎじゃない……?」というご指摘を受け
「そこが肝要です。大量のからあげを黙々と揚げ続けることで一種の瞑想のような効果が得られるのか、目の前のからあげのことしか考えられなくなり、ストレス因子をくりかえし反芻することがなくなるんです」
「しかし、ストレスをただ先送りしただけにならないようストレスの原因と向き合う時間も意識的に確保するようにしています」
とスラスラと返した。
今思うと確かにちょっとおかしいのかもしれない。
やけに饒舌なのが怖いし。
でもこれらは事実なのだ。
ストレスにさらされている真っただ中に
正面から向き合うと碌なことがないから
ストレスを一度ごまかしつつ
自分も周囲もおうちで揚げたてアチアチの
からあげにありつけるという
非常にハッピーな私なりのストレス対処法なのだ。
後日、ありがたいことに採用通知をいただいた私は
新規採用者を集めた懇親会の席にいた。
「おぉ!からあげ!」と、はずむ声が聞こえた。
……?
テーブルの上にからあげは見当たらない。
「からあげの子やろ!?」
そこには私を真っ直ぐに見つめる男性がいた。
面接を担当してくださった人事部の方だった。
からあげになった覚えはないし
このあとやはり変わり者だと言われるのだが
面接で人の印象にのこることができたのなら
あれで良かったのだと思っている。
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