見出し画像

復讐狂時代

  フカザワカズキ


「ウワーッ」
酒場の客が頭をビール瓶で殴られた。
「テメエが悪いんだよ。俺たちの客の女に
ちょつかい出すから」
復讐屋の政がサングラスをヒョイと上げた。
「たっ、たすけてくれーっ」
客が哀願して、血だらけの頭を押さえながら
政の脚に縋り付いた。
「何でもする、助けてくれ、なっなっ」
「そうかい。何でもするのかい」
政がサバイバルナイフを取り出した。
「右目を取り敢えずいただこうか」
「ごっ、ご冗談を」
客が後退りした。
「生憎、冗談は嫌いな性質でな」
政がナイフを客の右目に突き刺すと、
グリグリと回し始めた。
「グワーッ」
客はそのまま意識を失った。
「あっ、すまん、すまん。脳味噌にまで
届いちまったみたいだな」
政が大声で嘲り笑った。

復讐屋は復讐を代行する新手の商売で
ピンは一万円からキリは一億円まで
その復讐の内容によってランクが分けられていた。
子供がいじめにあったから仕返ししてくれなどというのは
Fランクで数万円程度の費用で済んだ。
CEOは金城という男で闇の世界とも
深く関わっていた。
「政」
金城が政を事務所に呼び出した。
「ヘイ。今度は誰に復讐するんですか」
「違う。人助けだ」
「へっ」
政は拍子抜けした。
「世紀の極悪大統領と呼ばれている
フラスカーナパトリシアンを護衛
しろ」
政はしばらく口をあんぐりと開けていた。





いいなと思ったら応援しよう!