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オンライン授業で身についた考え方&学生たちが見ているモノ

昨日書いた記事、コール&レスポンスで授業がやりたいんだ! の一言で済むような気がする。

オンライン授業なんてもう嫌だ、みたいな記事になってしまったことに反省している。そういうわけじゃなくて、好ましい変化もいろいろとあった。

強制的な移行だったにせよ、対面授業が戻ってきたときに役立てたい技術や考え方も身についてきたし、学生のコミュニケーションに変化も見られた。

ということで、今日はそれを書いておくことにする。


1コマ内のメリハリが大切!

一方的にしゃべり続ける相手の話をどのくらい集中して聞けるものだろうか。
私は、せいぜい5分から10分くらいじゃないかと思っている。正直、資料を読み上げていくタイプの会議には全然集中できない。1時間も続くようなら、私は完全に「お客さん化」する。

そういう疲れやすさが誰にでもあると思うので、画面越しに授業をするにあたって、次のことを意識的に行うようになった。

①話を聞く時間と作業する時間をあらかじめ配分しておく
あえて、授業内に無音の時間を作ってお互いに目と耳を休める。頭を働かせて、テストをこなしたり、質問の答えを考えてもらう。
導入(説明)→作業→確認とFB をテンポよく繰り返せるのが理想かな。


②教師の発言は短く、指示は的確に
「〇〇さん、どうぞ」と指名した後、教師は黙る。学生はミュートを解除したり日本語を組み立てたり発言の準備をしていると想定して、対面授業の時より余裕を持って待つ。
助け船のつもりで「大丈夫? できますか? 3番ですよ!」と出した声がちょうど学生の話し始めに被ってしまうことを避けるためだ。
「大丈夫?」は無言でアピールする。目を丸くしたり、首を傾げたり。あなたの声が聞こえていますよ! の合図で、大きくうなずいたりもする。

それから「今何をする時間なのか」は常に分かるようにしておいたほうがいい。手元のノートで作業してもらうなら、PPTや板書には指示を表示しておき、学生がいつでも確認できるようにする。
目の前に先生がいないと(いるときでさえ時々はそうだったのだから)学生は、ふと、意識を飛ばしてしまう。何をしていいか分からないと、授業に戻ってこられなくなる。


③資料の枚数を減らす
対面ではPowerPointでフラッシュカード的な練習ができた。
画面が速く切り替わっていくので、学生も目を離しにくくなる。

ところがオンラインではタイムラグが生じるため、アニメーションなども作り手が意図したように届かないおそれがある。
学生もよく理解しないうちに先へ先へといってしまうと、もう見なくていいや、になってしまいかねない。
そのため、1枚の資料をじっくりと読めるように構成を変え、情報を絞り込んだ。アニメーションはあまり使わないことにした。

また、接続が悪いせいでよく見られなかったから授業資料が欲しいと言われることもある。PDFでの配布を前提に、やはり枚数は少なくした。

オンライン化で嬉しい! と思ったのは、カラー資料を共有できることだ。
プリントアウトして配布する場合は、重要な点を赤字にするだけではいけなかった。枠を使って白黒でも要点が分かる資料を心掛ける必要があった。

カラーのまま見てもらえるなら、いらすとやさんの画像探しも喜んでやるし、スライドのタイトルに写真を載せることだってできる。


最近食べておいしかった海鮮丼の写真なんかを貼っておくと、学生から「お礼です」と言わんばかりの揚げ物メインなフルコース写真がメールで届いたりする。それも全然関係のない用件にくっつけて。
みんな自分たちで料理して、えらいな~。


④アクティビティ
どうにも集中できてなさそうなときや、少し時間ができたときにやるネタを予習してあると役に立つ。


最近ZOOMでやったのは、画面共有機能を使って、自分たちのパソコンやスマートフォンからホワイトボードに自分の名前や好きな日本語を自由に書いてもらう参加型の活動だ。
どのクラスでやっても絶対にだれかがハートのスタンプを発見し、連打する。
好きな日本語だと「金」「愛」「米津玄師」「嵐」あたりが頻出単語。

Youtuberのリモート活動で、これはクラスでやれそうだ! と温めている動画がいくつかあるので、別の記事で紹介するつもりでいる。


クラスメイトの変化を見逃さない学生たち

教師がひとりひとりの学生と目が合わないという嘆きとは対照的に、学生同士はお互いの様子をじっくりと観察し合っている。
教室にいれば後頭部ばかり見ているものが、ZOOMならほとんどのクラスメイトを正面から見ることができる。それも、ひっそり気づかれることなく。

「◇◇さん、いつもと違う部屋ですね。恋人の部屋ですか!?」
「〇〇さんは髪の色が変わりました!」
「△△さんのうちは電気がありませんか?」(たまたま暗かった)
「さっき何を食べましたか?」(質問のていを取った告げ口)
「(アイコンの)写真は犬ですか? 飼っていますか?」

なんておしゃべりが、出席を取った後や休み時間、授業終わりにポンポン飛び出す。
話題にされた側も「!」とびっくりしたあとで、そうです、とかなんとか、ちゃんと答えるのだ。

そういえば、お互いの名前を頻繁に呼び合うのもオンラインならではかもしれない。だれに話しかけたのか分からないと困るから。

雑談のしにくい授業形態ながら、学生たちが話題の種を探していくスタイルには、ほのぼのと癒されている。


オンライン授業にはオンライン授業のおもしろさがある。

こんなのやってられるかー!!! ってわけじゃないんですよ。

あーあ、こんなに意欲的に雑談できるクラスなら、毎日教室にいたら会話力がぐんぐん伸びただろうになあ……って悔しい気持ちになってるだけです。
だけどその発見だって、ZOOMを介さなければ得られなかったかもしれません。

クラスごとに雰囲気の差は大きいですけれどね。「プライベートには干渉しません」なクールクラスももちろんあります。

さあ、今年度中にみんなが直接顔を合わせられる日はくるかなあ。



写真:大極殿本舗のレース羹(夏季限定)/京都


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asahi662《好き!が止まらない日本語教師》
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