「イワシがつちからはえてくるんだ」とそのリスペクト曲のコード表示における配色の分析
はじめに
この記事は、相当にマニアックな内容となります。この記事を読むにあたって、以下の知識が必要となるかもしれません。
・RGBカラーコード(code)について
・音楽のコード(chord)理論について
また、この記事でコード(chord)のディグリー表記を扱うときは、メジャーキーに基づいた表記に統一します(マイナーキーの曲だった場合、平行調のディグリー表記を使う)。
分析の手法
1.分析したい曲のコード表示をスクリーンショットして保存する
2.何らかのツールを使って、それぞれのコードで使われている色を調べる
3.上の二つの工程で得られた情報をもとに、規則性を見つける
私は、2.を行う際のツールとして、これを使用している。
「イワシがつちからはえてくるんだ」- xx の分析
こちらの曲は、原作として非常に有名だ(投稿者≠作者)。
また、この記事で扱う概念を説明するのにも適しているので、最初に扱うこととする。
まず、コード(chord)表示と色の対応を示した表を貼っておく。
この表を見て、いくつか分かることがある。
・m7,△7,7などの違い(以下クオリティという。)で区別されている。以下、これをクオリティ区別という。
・この曲はFmajor/Dminorキーであるが、ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードによる区別が一部にある。以下、これを、ダイア/ノン区別という。
・Dm7が、Am7やGm7に対して特別に区別されている。これは、Dm7がこの曲のキーでのⅥm7、つまりトニックとなっているからだろうか。このように、Ⅰ,Ⅱ,…,などのディグリーによる区別を、以下ディグリー区別という。
・一方、ここでDm7というコードが区別されたのは、作者がDというルート音に対して特別な思いを持っていたからかもしれない。このように、コードのルート音による区別を、以下ルート区別という(転回系や分数コードはあまり出てこないので、考えすぎなくてよい)。
※ただし、この曲のように転調しない場合、ディグリー区別とルート区別は見分けがつかなくなる。
これら4種類の区別について、その「強さ」を考える。
・上の表から分かる通り、この曲では、違うクオリティのコードが同じ色で塗られていることは決してない。この意味で、クオリティ区別が強い。
・ダイアトニックコードとノンダイアトニックコードは必ずしも区別されていない(例えば、A7,C7,F7は、すべて同じ色となっている。)。この意味で、ダイア/ノン区別が弱い。
・C,A,Fなど、関係のないルート音を持つコードが同じ色で塗られている。この意味で、ルート区別が弱い。ディグリー区別も同様。
以上をまとめると、以下のようになる。
クオリティ区別:強
ダイア/ノン区別:弱
ディグリー区別:弱
ルート区別:弱
この曲は、クオリティ区別を中心としながらも、他の区別方法も少し取り入れているとわかる。
「ブドウがかげからのぞいてるんだ」- あられみこみ の分析
先ほどと同様に、分析結果の表をのせる。今回は、クオリティについて規則性を見つけることができた。
なお、「mケイ」には根音に対してm3の音を持つコード、「Mケイ」には根音に対してM3の音を持つコードをまとめた。また、「m7,Ⅵ」とは、ディグリーネームでⅥm7となるコード、「m7,ホカ」とは、Ⅵm7以外のマイナーセブンスを指す。
4種類の区別の強さを考える。
・上の表からも分かる通り、違うクオリティのコードは必ず違う色で塗られている。この意味で、クオリティ区別が強い。
・ダイアトニックとノンダイアトニックの区別は一切行っていない。
・Ⅵm7だけしか特別に区別をしていない。この意味で、ディグリー区別が弱い。
・ルートによる区別は一切行っていない。
以上をまとめる。
クオリティ区別:強
ダイア/ノン区別:0
ディグリー区別:弱
ルート区別:0
この曲は、厳格にクオリティ区別を行っていることがわかる。
なお、ディグリー区別とルート区別の見分けがついたのは、途中に転調があったおかげである。
「ことりがそらへとおちてゆく」- すずぬい の分析
色の見やすさを考慮して、白背景と黒背景の表を両方のせておく。
上の表ではルート音で区別している。また、「代」とは代理色の略だ。代理色は、A音もしくはB音がルートとして連続した場合、隣り合うコードが同じ色で塗られるのを防ぐために、後方のコードに代理として使われる。
4種類の区別の強さを考える。
・クオリティの区別は一切行っていない。
・ダイアトニックとノンダイアトニックの区別は一切行っていない。
・違うルート音のコードは必ず違う色で塗られている。その意味で、ルート区別が強い。また、この曲は転調しないため、ルート区別とディグリー区別の判別がつかない。
以上をまとめる。
クオリティ区別:0
ダイア/ノン区別:0
ディグリー区別:強
ルート区別:強
この曲は、「ブドウがかげからのぞいてるんだ」とは対照的に、ディグリー(ルート)区別を重視していることがわかる。
なお、「イワシがつちからはえてくるんだ」では、隣り合ったコードが同じ色で塗られていることもあった。代理色の発想は、すずぬい氏が新しく考え出したものだと思われる。
※一部上記の表に沿わない配色があるが、それは他の小節からの色の借用で説明がつく。
「あさやけもゆうやけもないんだ」- 夏毛 の分析
ここでは、異なるコード全てについて、色をまとめた。
4種類の区別の強さを考える。
・違うクオリティのコードは、ほとんどの場合違う色で塗られている(G7,G9は例外)。その意味で、クオリティ区別が強い。
・ダイアトニックとノンダイアトニックの区別はそれほど強くないように見える。そのため、ダイア/ノン区別は弱いとしておく。
・ルート音による区別は、行われている部分も行われていない部分も同じくらい存在する。そのため、ルート区別は中くらいの強さとしておく。
・この曲が、転調してるかどうかについては議論の余地がある。ここでは、転調していないものとして扱う。したがって、ルート区別とディグリー区別は判別できない。
以上をまとめる。
クオリティ区別:強
ダイア/ノン区別:弱
ディグリー区別:中
ルート区別:中
この曲では、多彩な区別が用いられていることがわかる。また、私には近い色で塗られたコードは「近い」特徴を持っているように思われる(この曲がE♭major/Cminorキーであることも注意)。
4つの曲の分析によって気付いたこと
「イワシがつちからはえてくるんだ」、「ブドウがかげからのぞいてるんだ」の2曲とも、Ⅵm7を明確に区別している。一方、「あさやけもゆうやけもないんだ」では、ルート音がG(ディグリーでいうとiii)のコードが明確に区別されている。これらの区別は、短調を中心とする考え方と繋がっているのではないかと私は考えた。短調では、[iii系のコード]→Ⅵm7の進行がよく使われるからだ。
また、4曲とも、配色が曲のテーマに合っているように私には感じられた。やはり、どの作者も、曲のテーマに合った配色を第一に意識するのだろうか。
まとめ
ここでは、有名かつ分析が比較的簡単な曲について紹介した。これらの他に、規則性が見つからずここに紹介するのを断念した曲がある。それらの曲については、是非皆さんに分析してもらいたい。
注意
単色に見えても、場所によってRGBカラーコードが違うということはしょっちゅう起こる。
なので、この記事の表で表示されている色は、若干色ムラがある中での平均と考えられる色にしている。
同様の理由で皆さんにも注意していただきたいことがある。
色を用いた暗号を解読するとき、カラーコードの解釈はわずかにズレるかもしれないということだ。したがって、暗号に色を用いるとき、色の細かい区別を要求すると難易度は大きく上がる。
最後に、私の作った暗号を貼っておく。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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