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F1-8Xを組みました
少し前にGeonworksのF1-8Xというキーボードを組んだのですが、これが個人的No.1の完成度だったので記事にすることにしました。
⚠前半部分はオタクの自分語りが大半を占めています
GeonworksとF1-8Xについて
まず詳しくない方向けに説明すると、F1-8Xとは韓国の有名自作キーボードブランドであるGeonworksが販売しているTKL・80%キーボードのことです。
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F1-8Xは、2020年にGeonworksのデビュー作として韓国内限定で販売され、Viton O-ringを使った独自のマウント方式による打鍵感・音が現在でも高く評価されています。
正式名称はFrequency1-8X。これはGeonworksの創設者であるGeon氏がF1を設計する際、プレートの振動の周波数に関わるシミュレーションに一番時間をかけたことに由来するらしい
Geon氏はもともと航空宇宙産業向けの部品製造・加工を生業としていました。本業で余った材料を活用するため、友人のGlare氏の協力を得てF1-8Xを設計したところ、初日から想定していた数十台を上回る約900台もの注文が入ったそう。すごい
どうでもいい情報
現在はGeonworksのスタッフとして働くGlare氏ですが、もともとはGeon氏にワンオフキーボードの制作を依頼した顧客の一人でした(Glare TKL v3など)。
後にGeon氏がキーボードの設計を学び始める際、デザインや設計に必要な知識についてサポートし、F1-8Xの誕生に貢献。
↓ Glare TKL v3
F1-8Xを知ってから手に入れるまで
GeonworksとF1-8Xの存在を知る
僕がこの趣味を始めた時には、すでにF1-8Xの販売は終了していました。
そもそも当時の自分はKBD67 Liteを組んで満足していたレベルだったのでF1-8Xの存在すら知らず...
ただ、その後キーボードについて情報収集をしていく中で「Geonworksという、良心的価格で高品質なキーボードを売るブランドがある」「F1-8XというTKLが良いらしい」という話は各方面から聞いていました。
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Geonworks Discordサーバーより
F1の購入を決めた決定打としては、大学の先輩が持っていたF1-8X 722(F1-8Xの後継機)を触ったことです。
722はF1シリーズの中では比較的不人気なモデルで、しかも触ったのはあまり自分好みではないタクタイルスイッチの構成だったんですが、それでも当時試したことのあるキーボードの中で1番打鍵感が良かった。
この経験から、僕はF1を手に入れることを決意しました。
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個人間取引でF1-8X R2を入手
…というわけでF1の入手を決心したんですが、そもそも欲しいモデルが売っていないという問題に直面します。
F1にはモデルチェンジを加えた後継機(8K, 722, V2…)が色々あるんですが、特に自分が欲しかったのは初期モデルのOG F1-8X R2で、色は黒と決めていました。
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やっぱこの趣味やってると「OG」とか「初期モデル」みたいな言葉に惹かれるんですよね。Geonworksは新興ブランドなのでOTDとかKMACみたいな「本物のOG」とはちょっと話が違ってくるんですが…
あと「初期F1とそれ以外のモデルでは打鍵音などが多少異なる」というレビューが結構あったこともデカかったです。
色に関しては自分の中で「EndgameのTKLは黒」みたいなマイルールがあって…
しかし、欲しい黒のF1-8X R2は中古市場に殆ど出回っていませんでした。
他の色を買ってどこかの工場に再加工を頼むことも考えたんですが、日本からだとコストがかかり品質も微妙な可能性が高い。
方々を探したものの見つからず、入手は半ば諦めかけていました。(実際、後継モデルのF1-8X V2を買って終わらせようとした)
そんな中、今年(2024年)の4月ごろとある韓国の方から、F1-8Xと僕の所有しているキーボードをトレードしないか、という申し出がありました。
彼のF1はシルバーだったのですが、「黒を探してて…」と駄目元で相談したところ、なんと韓国の有名なアルマイト加工サービスであるPrime Anodizingに頼んで黒色に再加工までしてくれました。親切すぎる。
現在日本からPrimeを利用しようとすると、手続きすべてを韓国語で行わなければならなかったり、転送サービスを使う必要があったりと、一般日本人にとっては非常に高いハードルなんです。
大感謝
再アルマイト費用は85,000ウォン(10,000円くらい)でした。安い
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※近日中にPrime Anodizingが日本から直接使えるようになるみたいな話があるそうですが詳細不明
構成・組み立て
まず構成ですが、デザイナーのGeon氏自身が気に入っているというV4 アルミプレートと1.6mm FR4 PCBでいくことにしました。
スイッチはCherry MX Black (Geon Spring 18mm 55g, TX Film 0.125mm, GPL 205g0 / 105 mix) を使用します。
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最近は設計があんまりなキーボードでも音がデカいロングポールスイッチを使えばキャリーできてしまうことが多いので、MX Blackのようなベーシックなものがベンチマークとしていいのかなと思っています。
あと単純にMX Blackみたいリーフが分厚くてtick音がなく、適度にハイピッチな音を出すノーマルボトムアウトスイッチってあんまなくないですか?
あまりスイッチに詳しくないのであったら教えて欲しいです。
組み立ては超絶簡単で、ドーターボードがいらないのでネジはケースの分解の時にしか使いません。
O-Ringを切って上下ケースにはめ込み、間にスイッチを取り付けたPCB(とプレート)を挟んだら完成です。
ただF2を組んだ時も思ったんですが、キーボードを何度も組み直す身からすると裏のネジ穴は露出してくれていた方がありがたいんですよね。
分解のたびにゴム足全部外すの面倒なので…
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キーキャップはKKB WoBとDark RGBアクセントを使いました。
(本当はGMK Black Snailを載せたかったんですが買い逃した)
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感想
10000000000点
今まで打鍵したキーボードの中で断トツで良い。
この趣味を始めてからそこそこキーボードを組んだり触ったりしてきたつもりですが、打ってみて「うおおお」となったキーボードはこのF1が初めてかもしれません。
音は全体的にハイピッチで大きめ、いわゆる「Korean Custom」という感じで最高(使うスイッチにもよる)。
alphaもmodifierキーも全部いい音が鳴ります。
あとForcebreak modとかをしなくてもping音や嫌な空洞音のようなものが一切ない。
ハイエンドキーボードでもForcebreak modが必要なものって結構あって、なかなか素組みで良いキーボードは少ない気がします。
打鍵感に関してはめっちゃ振動する。
ちょっと前PCBとかにフレックスカットが入りまくってて押すと沈み込むFlexyなキーボードが流行ったと思うんですが、それとは違って打鍵するとプレートが跳ね返ってくる/弾む/振動する?ような感じ。
FlexyというよりBouncyという表現が近いかも。
ただこれは通常より薄いV4プレートを使ったことの影響も大きいと思います。
個人的に底打ちが柔らかいキーボードはあまり好みではないんですが、F1の弾むような打鍵感は気にならないというかむしろ好きですね。
ただ長期的に使うならもう少し振動が抑えめな方がいいので、次はより分厚いV3アルミプレートかCFプレートで組む予定。
F2-84との比較
姉妹キーボードであるF2-84と比較してみました。
F2-84はもともと韓国外(主に欧米)向けのF1-8Xとしてデザインされたのでマウント方式はF1-8Xと同じです。
ただ外部デザインや内部スペース・ウェイトの大きさなどが変わっているので打鍵感・音は結構違いました。
比較用
F1-8X:v4 アルミプレート+MX Black
F2-84:v1.1 アルミプレート+MX Black
打鍵音はF1の方が全体的にボリューム大きめでピッチが高く、打鍵感はF2の方が大分硬めでしっかりしています。
打鍵感に関してはF1が薄めのV4プレートを使っていることの影響も大きいとは思いますが、プレート有りのビルドなら一般的にF2はF1より硬めな傾向があると思います。
自分は長期的に使うなら硬めの打鍵感の方が好きなので、「日常使いはF2」という声をちらほら聞くのもわかる気がしました。
終わりに
というわけで紆余曲折ありましたが本当に満足できるキーボードが組めたと思います。
正直TKLに関しては特別枠のJaneが手に入ればあとはもういいかな~くらいの気持ちなので、今後はF1で新しいプレートやスイッチをいろいろ試してベストな構成を模索していきたいですね。
最新モデルのF1-8X V2は$320~と超良心的(?)な価格なので本当にお勧めです。気になった方はGeonworksのディスコードに加入しましょう。
最後に、日ごろから良くしてくださるキーボードコミュニティの方々と今回トレードに応じてくれた方に感謝申し上げます。
おしまい