ティーンの蹄は青々と
何か書かなければいけないと思った。19になった。去年が昨日みたいだと思った。18と19、そこには365日の溝があって、8760時間の距離があって、525600分の連続的な僕がいる。アナログな僕が。人生の一分を映画の一コマと考えたら525600コマの僕が早送りで作品になっている。変わり映えないコマをいくつ消費したんだろう、僕は。立ち止まっていたら胸が淡く揺れ動くだけ。18から19はそんな単調にコマ送りされるティーンネイジャーだった。
何も嬉しくない。俺はテレキャスが欲しい。喉も手も上手く動かないが欲しい。比喩はいらない。直接的な愛情が欲しい。欲しいものだらけで無欲な自分まで欲しい。早く突き刺してくれと願っても月明かりに翳る俺が居るだけ。詩が欲しい。メロディを繊細になぞるベース、その周辺に群がる発泡酒的夜。君の頭ん中のリズムを刻みたい。184ぐらいのBPMで、詩もそのぐらいのスピードで。指を折って、君の顎から滴り落ちる涙を数える。指が足りなくなって彼女の指まで折っていたらThere is a Light That Never Goes Outがうっすら聴こえてきて彼女と一緒に泣いた。熱帯夜だった。扇風機のモーターが回る。駆動音が感傷的になった。冷蔵庫よりずっと。観覧車よりふっと。
前に踏み出すことを許されない蹄は端の方から植物になってゆく、青々と。僕は下からゆっくり植物になっていく。みたいな美しさが欲しかった。防腐剤入りの人生ならもっと美しくいられたんだ。ティーンの蹄は青々と。僕はこれで最後だから、電車に乗ってどこか海の見える街まで。ティーンネイジャーの青春18きっぷは帰りの便には無効らしい。どうかそっちで美しくなってくれ。
いつかこの声が連続的な僕の延長線で響くように。