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「FOOL DAYS」


「たとえどれだけ恥ずかしくても、
好きな人には好きって伝えた方がいいよ」


友人はよくそう言っていた。

家族と絶縁し、一人で暮らしている為、
大学に通いながら売春や風俗で生計を
立てている。

月々に得た金を、いつも恋するホストに
貢いでいた。

騙されているのではないか、と以前やんわり伝えた所、

「私、あの人の本カノだもん」

と言っていたが、恋人に本物も偽物も
あるのかと思った。

「一方通行で構わないの。私が生きてられるのは、彼のお陰だから。騙されたとしても、
それでいいの」

彼女はいつもそう言って、周りからの反対を押し切って、「本当の彼氏」のいるホステスへと向かった。

そんな友人に、いつか前、見知らぬ男に身体を委ねる事に対して、抵抗は無いのか聞いた事がある。

「汚い大人と何回ヤっても、心までは穢されてないから、別に気にしてない」

それなら何故、心が汚れるのは駄目で、
身体を汚されるのは良いんだろう。
心と身体に、どんな差を彼女が見出しているのか、自分にはわからなかった。

何をされたら心が汚されたと感じるのか聞いた所、少しの逡巡の後、

「アフター出来たのに、彼氏から仕事の愚痴聞かされるとき」

「彼氏なんて居たのか」

「前言ったじゃん。ホストしてるって」

「『ホンカノ』の人か」

「それは私な。〇〇の本カノが私」

自信満々に答える彼女の顔を見る。
誰彼構わず『あなたが本当の彼女だ』と嘯き、
金銭や指名を得る事に嫌悪感を抱いてるは、
ただ自分の偏見から来ているのかもしれない。
ふとそう考えた。

「あ、ホテルに呼ばれたから行くね。また来週」

彼女はそういって、颯爽と喫茶店から
去っていってしまった。

『コーヒー×2 小計 1860円』

今度会ったら、何か奢ってもらおうと思った。

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